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第2章 無限イチャイチャ計画

第35話 難しすぎる男女交際1・ペアルック

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 風華が学生時代に書いたという彼氏が出来たらやりたい事リスト、通称“無限イチャイチャ計画”を実践することになった。

「それではまずあだ名を決めましょう」

「今のままでいいだろ」

「ダメです。二人だけの呼び方を決めて絆を深めるんですよ」

 お前と絆なんて深めたくねぇよ。

「なんて呼び合うんだよ?」

「そらきゅん、ふーたん」

「うげぇ、バカップルかよ。鳥肌立つわ」

「それでは、巨乳と貧乳」

「秒で解散しそうな女漫才師コンビ名やめろ!」

「ファラオとファラオ」

「なんで同じなんだよ! 芸人のコントでありそうな組み合わせやめろ!」

「仕方ないですねぇ。じゃあ今まで通りスカイドラゴンとウインドフラワーで行きますか」

 一度たりとて呼んだことないだろ!

「ドラゴン要素どこだよ」

「ヒョロヒョロなところです」

 東洋の龍のイメージかよ!

「私的にはふーたんが良いので、たまには呼んでくださいね」

「分かったよ、ふーたん」

「うわ、気持ち悪っ」

 コイツ……!

「それじゃあ次はペアルックにしましょう。お揃いの物を身に付けるの夢だったんです」

「何着るんだ?」

「これです」

 カバンから取り出したのは、カバの顔の絵がど真ん中にデカデカとプリントされたTシャツだった。

「うわ、だっせぇな」

「いつもシマウマみたいな服を着てる人に言われたくないですねぇ」

「いいだろ。横断歩道にもなる優れものだぞ」

「うわぁ、みんなに踏まれるのが趣味なドM人間ですぅ!」

 言うんじゃなかった!

 で。

「それじゃあ着替えるので後ろ向いててください」

「いや、洗面所使えよ」

「ダメです。付き合っているんですから遠慮は無用です」

 じゃあ後ろ向かなくていいだろ。とは言えないのが俺である。セクハラ認定されたら嫌だしな。

 渋々、後ろを向く。数秒後、衣擦れの音が聞こえ始めた。

「んしょ」

 ちょっとなまめかしい声出してんじゃねぇぞ。

「あひゃひゃ!」

 いや何の声だよ!

「服が脇をなぞって、くすぐったかったんです。あ、まだ振り向いてはダメですよ?」

 ふん、誰が向くか。そんなハニートラップには引っかからねぇんだよ。俺はエリート弱男だからな。もし振り向いて警察にお世話になることになったらマスコミやクソまとめサイトに面白おかしく記事を書かれて後続の弱男に迷惑が掛かるからな。後続の弱男ってなんだよ。続くなよ。

 とまぁ気を紛らわせている内に風華の着替えが終わった。

「それじゃあ空雄さんも着てください」

 ああそうか、俺も着ないといけないのか。クソッ、さっきどさくさに紛れて着とけばよかったな。動揺して忘れてたわ。俺の無能!

 嫌々ながら上着の裾に手を掛ける。そこでふと、風華がこちらをじっと見ていることに気付いた。

「いや、後ろ向けよ」

「何を恥ずかしがってるんですか。乳の一つや二つ見られたっていいでしょう。減るもんじゃあるまいし」

 見せなかった奴が言うセリフか!

「さぁ早く脱ぎなさい」

 お前はエロ教祖かよ!

 まぁ上半身だけだし我慢するか。俺はため息をつきながらシマウマみたいな服を脱いだ。

「ぐへへ、いい乳してんじゃねぇか」

 エロオヤジやめろ! コイツ生まれる性別間違えたな!

 そして、どうにかこうにか着終わった。風華は俺の服を見て納得したような顔で何度も頷いている。

「やっぱりカバさんはカワイイですねぇ。冴えない空雄さんでも1.2倍くらいかわいく見えます」

 せめて二倍くらいにしろよ!

「あ、あともう一組ありますから次はそれを着ましょう」

「いや、もういいって……」

 俺の制止も聞かず、風華が次にカバンから出したのは“お天気お姉さん”と縦に書かれたTシャツだった。俺が誕生日にあげたやつだ。

「これは私ので、空雄さんのはこっちです」

 もう一枚には“一般人”と縦に書かれていた。

「うげぇ」

「えへ、お揃いのカワイイ部屋着ですぅ」

「どう見ても売れない漫才コンビにしか見えねぇよ!」

「あ、それいいですね! 夫婦めおと漫才しましょう!」

「はぁぁ!?」

 その後、小一時間つまんねぇ漫才をやらされた。

 なにこれ。男女交際って難しすぎんだろ。
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