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第1章 弱男だけどなぜかお天気お姉さんと付き合うことになった件

第22話 弱男の服

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 社員寮の壁破壊騒動が終わって数日後。俺が家でお天気お姉さんとキャッキャッウフフとたわむれる妄想をしていると、怪獣のような足音が聞こえてきてドアが乱暴に開かれた。

「やぁやぁ、かわいいお天気キャスターの風華ちゃんが遊びに来ましたよ」

 コイツはなぜクビにならない。人の家の壁を破壊して隠蔽しようとする奴だぞ。偉い人達よ、早く切らないと手遅れになるぞ。

 俺の憂いを感じ取ることもなく、乃和木は番組の構成表を渡してきた。また俺に丸投げかよ。

 仕方なく目を通してみる。次は、梅雨をテーマにした私服紹介、スポンサー提供の衣装紹介、梅雨対策の雨具紹介、コスプレ七変化だそうだ。

 相変わらずの特番要員で、天気予報はやらせてもらえないらしい。ただ、梅雨特集なので関係ないこともないのがまだマシか。

 ナメクジのようにとろくさいが少しはステップアップ出来ているのかもしれない。しらねぇけど。

「今度は服装特集っすか」

「服ってなに着たらいいんですか?」

 お前は俺かよ。俺が知りてぇよ。

「さぁ……アンタのその服はどこで買ったんすか?」

「分かりません。母が買ってきました」

 お前は俺かよ。俺もババアが買ってきたの着るだけだよ。大体縞模様の囚人服もどきしか買ってこねぇけどな。

「空雄さんの服はどこで盗んできたんですか?」

 買ってるわ!

「俺も大体母親が買ってきたやつ着てるっすよ」

「おそろいですね」

 使い方おかしいだろ。

「とにかく私服はそのままでいいと思うっすよ。母親が買ってきているって言っとけば、かわいいし視聴者も満足するっすよ」

 チョロい奴らだしな。俺も含めて。

「ダメですよ。爪跡を残さないと」

 お前は上京したてのお笑い芸人かよ。

「じゃあどうするんすか?」

「服を買いに行きましょう!」

 うげ、めんどくせぇな。女の服なんてわかんねぇぞ。俺が知ってるのはワンピースとか……ワンピースとか……ワンピースしかしらねぇよ! あ、ビキニアーマーも知ってる! 知識偏り過ぎだろ俺。

「俺、女の服とか分かんないすよ」

「ええ、女の子ばかり出る漫画読んでるのに?」

 地味に痛いとこ突いてきやがるな。

「ほぼ会話しか見てないんで」

「これだからニワカはダメなんですよ」

 おめぇにだけは言われたくねぇよ!

「じゃあ今度買いに行くということでお願いしますね。それで私服の件はひとまず置いといて、スポンサーさんの衣装はどうしたらいいですか?」

「別にどうもしなくていいっすよ。適当に褒めとけば」

爪痕そうこん残さないと」

 中二病かよ。ちょっとカッコつけてんじゃねぇぞ。

「なにか策があるんすか?」

「服を派手に破り捨てる演出を入れます」

 お前はプロレスラーかよ。

「スポンサーが激怒するのでダメっす」

「じゃあ服の隙間から下着をチラ見せとか」

 素人め。エロは与えられるものじゃなく、見つけるものなんだよ。

「お天気お姉さんのやるべきことではないっす」

「えーじゃあどうするんですかぁ?」

「無難に褒める。これだけっすよ」

 お前が一番できないことだからな!

 乃和木は納得していない様子だったが、その辺に転がっていた飴玉を与えたら機嫌がよくなっていた。バカだろ。

「ところで私、六月一日が誕生日なんですよ」

 知ってるよ。一問一答の時に言ってたもんな。

「へぇー、おめでとうっす」

「誕生日、期待してますね」

「その日は宇宙旅行に行くからちょっと」

「そんなお金ないでしょう? それよりお天気お姉さんにみつぐチャンスですよ」

 コイツに貢ぐならチヤホヤしてくれるキャバ嬢に貢ぐわ。……でもまぁ俺の誕生日プレゼントにパソコン買ってもらってるし、ドーナツケーキも食べさせてもらったしなぁ。お返ししない訳にもいかねぇか。

「考えとくっす」

「楽しみにしてますね」

 白い歯を見せて優しく笑う。笑顔だけは一人前のお天気お姉さんだなぁ。
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