上 下
82 / 99
第3章 王都防衛編

第82話 急襲2・ウェアラット戦

しおりを挟む
 二人の彼女の協力もあって何とか巨獣の群れの“第一波”をしのぐことに成功した。

 汗をまともにぬぐう暇もないまま、群れの第二波であるビーバー型巨獣ウェアラットが押し寄せてきた。

 第一波の死体を乗り越えて進んでくる。もうこの周辺の罠は全て破壊されてしまった。ゆえに鎧兵のみでどうにかするしかない。

「シロ、奥のウェアラットの動きがおかしいわ」

 見ると、死体の山に乗ったウェアラットの一匹が頬を膨らませて口から毒霧を吐いた。

「チッ、煙幕みたいなものか」

 臭そうな息吐きやがって。口臭ケアしてから出直して来い。

 俺が敵に悪態をついていたその時。神樹の側面が突如爆発した。

「なんだ!?」

 神樹にわずかに穴が開いていた。原因を探るため周囲を見回すと一匹のウェアラットの背中に大砲みたいなものが二門ついており、そこから煙が出ていた。ビーバーの癖にオシャレしてんじゃねぇぞ。にしても遠距離攻撃はやっかいだな。早めに処理しないと。

「トマティナ、大砲のヤツやれそうか?」

「やってみる。神樹の根元が手薄になるからカバーお願い」

「わたくしが補助しますわ」

 オイチが言った。

 とどこおりなく話が進む。物分かりのいい仲間がいるのは本当にありがたいな。

 そんな感謝の余韻にひたる暇もなく敵の攻撃が来る。別のウェアラットが木にぶつかり幹をかじり始めた。くっそ余裕がねぇ。タワーディフェンスゲームはもうやりたくないんだがやるしかねぇよな。

 オイチが敵の集団を引きつけている間にトマティナの部隊が大砲の敵へ接近。

「キィキィィ!」

 ネズミっぽい甲高い声を上げて両肩から大砲を出して撃ってきた。

「面白い武器だけれど、射線が丸わかりね」

 トマティナは部隊を二つに割り、まるでダンスでも踊るようにかわした。

 操作うまいなぁ。もしかして俺より上手いのでは? ……まずい、俺がたまたま魔法を得ただけのボンクラだとバレてしまう……!

 そんなことを考えている間にも、せっせとトマティナがスライムボム改を撃って敵の頭を爆破して殺していた。

 さらに攻撃していると、気になる行動をしている個体が目に入った。死にかけの仲間に向けて触手のようなものを伸ばしてぶっ刺していた。なんだ? 吸収でもしてパワーアップか?

 しかし俺の予想とは違い、刺された方のウェアラットの傷がみるみる内に再生、回復していく。

 なるほど、注射を刺して回復かぁー。お医者さんごっこしてんじゃねぇぞクソが!

 回復タイプもいるとか本格的にヤバくなってきた。

 焦っていると、木にぶつかる音。

「今度はなんだ!?」

 見ると、誰もいない。ただ足跡だけがあり、現在進行形で木が削られているのが見えた。

「透明の巨獣だと!?」

 足跡や木の削り方から見てコイツもウェアラットだろう。毒霧、大砲、回復、透明と、コイツら最近のゾンビ作品並みに能力多彩過ぎるだろ。ゾンビは歩くだけにしろ、クソが!

 悪態をつきながら毒霧タイプと回復タイプに兵を差し向けた。

「キィィ!」

 そこに透明タイプが助けに走ってくる。鳴きながら来たら姿を消してる意味ないぞ。足跡や足音、舞い上がる砂煙などでも位置がバレバレだ。所詮はクソネズミだな。

 敵の位置を見切り、スライムボム改を打ち込んで殺害。

 さらに毒霧と回復タイプを討伐。所詮は支援型であり雑魚だった。

 これでめんどくさそうなヤツは殺したが、まだウェアラットの進撃は続いている。

「……うん?」

 ふと、目の端にいびつなものが映る。ウェアラットの背後に一頭の知らない巨獣がいた。人型だが全身が藍色あいいろのヘドロっぽい液体におおわれていて、沼の底からい出たような見た目をしている。両腕だけが異常に太く、足の三倍はある。

 明らかに異質。俺は嫌な予感がして、ソイツから目が離せなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった

さくらはい
ファンタジー
 主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ―― 【不定期更新】 1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。 性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。 良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~

雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!

町島航太
ファンタジー
 ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。  ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

処理中です...