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第3章 王都防衛編
第76話 ゴブリン戦
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俺は聖地巡礼中に鳴り響いた突然の警報アラームに緊張しながら魔法のキーボードを叩いた。
モニターを見ると、二足歩行の人型巨獣が神樹に向かってものすごい勢いで走ってきていた。
おいおいなんだぁ? 駆け込み乗車はご遠慮なんだが?
誰かが追いかけられている様子はない。逆に巨獣自身が追われているわけでもない。となると神樹が目的か。だが神樹には巨獣の嫌う毒があり、余程のことがなければ近付いて来ないはず。
原因を考えていると、鎧コウモリの主観カメラにようやく巨獣の全体像が映し出された。
「ゴブリン、か」
人型巨獣ゴブリン。鷲鼻に尖った耳、筋肉質な体をしている。森で割と見かけるやつで特別珍しくはない。
「……少し様子がおかしいな」
顔を見ると、白目をむき、ヨダレを撒き散らしていた。どう見ても正気ではない。体も傷だらけで肉が裂けて骨が見えている箇所もある。
頭をふと過ぎったのは“ゾンビ”だ。ゾンビ映画では大体こんな感じで人間に向かって突っ込んできて噛み付いたり体液を吐きかけたりして謎の病原菌に感染させて仲間を増やす。普通はこんな巨大ではないが。
そうこうしていると、みるみる内に神樹との距離が縮まっていた。しかし特段焦る必要はない。なぜなら周辺には対巨獣用の罠がたくさん仕掛けられているからだ。
罠の前に鎧兵をけしかけてみる。ほーら、目から“ビーム”撃ってこーい。
ゴブリンの特徴として、目から光線を出すのだ。
しかし、見向きもされず蹴り飛ばされた、というより進行方向にたまたま鎧兵が居て、当たっただけという感じだ。
人間に興味なしか。ならなんらかの理由で正気を失い、進行方向にたまたま神樹があったと考えるべきか? つまりは偶然。
ちなみにやられた鎧兵は俺の周りに再召喚“されなかった”。
現在、俺は鎧兵を“一万体”召喚できる。急激に増えた理由は判然としないが、おそらく二人の彼女が仕事を手伝ってくれるおかげで時間的余裕と精神的余裕ができたからだと思う。
こういうのはピンチになればなるほど強くなっていくものじゃないのかよ。ホント、チグハグな能力だな。ペットは飼い主に似るというが、魔法もまた使い手の俺に似ているのかも知れない。
それで先ほどの再召喚されなかった理由は、実は千体を超えた辺りからクリエイティブモードにしなくても自動再召喚がオフに出来るようになったからだ。もっと早く実装しとけよ。この歯がゆい感じが俺のダメなところに似ていてムカつくわ。
あれこれ考えていると、ゴブリンが棘の木の柵を吹き飛ばした。ま、これじゃ止まんないわな。だがしかし、敵が減速して歩幅が狭まる。そして、二、三歩動いた瞬間、足下が崩れてゴブリンが落とし穴に落下した。
「はい、勝ち確定」
鎧兵を穴に飛び込ませて、とどめを刺そうと試みる。が。
「グガアアアア!」
敵が咆哮を上げたと同時に両腕が四倍ほど膨らみ、その腕で穴の底を叩いて大ジャンプした。
「なんだよそれ!?」
今まで戦ったゴブリンには見られなかった動きだ。
敵は落とし穴を抜けて先の地面に着地した後、なぜか四足歩行になって再び進撃を開始した。それは獣というより虫のような動きで嫌悪感が湧いてくる。
俺は少し焦るも、すぐに落ち着きを取り戻して鎧兵を次の罠の元へと移動させた。
ゴブリンはスライムボム改が埋められた地雷原に突入しようとしていた。地雷は巨獣のような重量のあるものにしか反応しないので不備がない限り人間には安全だ。
「さすがにこれで倒せるよな?」
おかしな行動を取る異常個体だが、たかが雑魚巨獣ゴブリンだ。体もボロボロだし勝てるはず。
直後、ゴブリンの右足が地雷を踏んだ。爆音と爆炎が周囲を支配する。
「嘘だろ!?」
敵は上半身だけになっていたが、それでも両腕を泳ぐように地面に叩きつけながら神樹へ向かって進み続ける。
俺は焦りながらも鎧兵にバリスタを撃たせた。矢はわずかに逸れてゴブリンの首に直撃。爆発して上半身と顔が分離した。しかしそれでも頭だけが動き、歯をガチガチさせながら前へと進んでくる。
「はぁ!? どうなってんだよ!?」
急激に吹き出した汗を拭いながら、複数の鎧兵に矢を構えさせた。だが、そのタイミングで敵は目からビームを放ってきた。数体の鎧兵が消し飛ぶ。
「うぜぇ、悪あがきすんじゃねぇ!」
俺は罵倒しながら敵の頭を爆弾で爆破した。そしてゴブリンはようやく動かなくなった。
「や、やったか。なんだったんだよコイツ」
結果的に大したことはなかったものの、俺は背中に嫌な汗をかいていた。
「ん? アレなんだろう」
ゴブリンの死体を観察していると、上半身の残骸近くに小さめの巨獣が転がっているのが見えた。大きさは人間の大人くらい。シルエットは“蚊”のようで、口先に鋭い針、六本の足、二枚の羽を有している。体色は黒を基調としているが、腹部だけ藍色だ。
「……蚊の巨獣、か?」
初めて見た。そういえば空飛ぶ巨獣には一度も遭遇したことがない。ニートン巨獣記にも載っていなかった。
ふと嫌な考えが頭をよぎった。……もし、この蚊より大きくて空の飛べる巨獣が現れたら果たして勝てるのだろうか。鎧コウモリを使えば何とかなりそうな気はする。でも神樹の上へ登ってきたら王都を守りつつ戦う自信はない。
……ダメだな。ネガティブ思考になっている。今は頭の片隅に置いておこう。
それより蚊がどこから来たか調査しないと。巣があるかも知れないな。取り返しのつかない事態になる前に探そう。
俺は曇り空から聞こえる遠雷に不安を覚えながら鎧兵を森中に派遣した。
モニターを見ると、二足歩行の人型巨獣が神樹に向かってものすごい勢いで走ってきていた。
おいおいなんだぁ? 駆け込み乗車はご遠慮なんだが?
誰かが追いかけられている様子はない。逆に巨獣自身が追われているわけでもない。となると神樹が目的か。だが神樹には巨獣の嫌う毒があり、余程のことがなければ近付いて来ないはず。
原因を考えていると、鎧コウモリの主観カメラにようやく巨獣の全体像が映し出された。
「ゴブリン、か」
人型巨獣ゴブリン。鷲鼻に尖った耳、筋肉質な体をしている。森で割と見かけるやつで特別珍しくはない。
「……少し様子がおかしいな」
顔を見ると、白目をむき、ヨダレを撒き散らしていた。どう見ても正気ではない。体も傷だらけで肉が裂けて骨が見えている箇所もある。
頭をふと過ぎったのは“ゾンビ”だ。ゾンビ映画では大体こんな感じで人間に向かって突っ込んできて噛み付いたり体液を吐きかけたりして謎の病原菌に感染させて仲間を増やす。普通はこんな巨大ではないが。
そうこうしていると、みるみる内に神樹との距離が縮まっていた。しかし特段焦る必要はない。なぜなら周辺には対巨獣用の罠がたくさん仕掛けられているからだ。
罠の前に鎧兵をけしかけてみる。ほーら、目から“ビーム”撃ってこーい。
ゴブリンの特徴として、目から光線を出すのだ。
しかし、見向きもされず蹴り飛ばされた、というより進行方向にたまたま鎧兵が居て、当たっただけという感じだ。
人間に興味なしか。ならなんらかの理由で正気を失い、進行方向にたまたま神樹があったと考えるべきか? つまりは偶然。
ちなみにやられた鎧兵は俺の周りに再召喚“されなかった”。
現在、俺は鎧兵を“一万体”召喚できる。急激に増えた理由は判然としないが、おそらく二人の彼女が仕事を手伝ってくれるおかげで時間的余裕と精神的余裕ができたからだと思う。
こういうのはピンチになればなるほど強くなっていくものじゃないのかよ。ホント、チグハグな能力だな。ペットは飼い主に似るというが、魔法もまた使い手の俺に似ているのかも知れない。
それで先ほどの再召喚されなかった理由は、実は千体を超えた辺りからクリエイティブモードにしなくても自動再召喚がオフに出来るようになったからだ。もっと早く実装しとけよ。この歯がゆい感じが俺のダメなところに似ていてムカつくわ。
あれこれ考えていると、ゴブリンが棘の木の柵を吹き飛ばした。ま、これじゃ止まんないわな。だがしかし、敵が減速して歩幅が狭まる。そして、二、三歩動いた瞬間、足下が崩れてゴブリンが落とし穴に落下した。
「はい、勝ち確定」
鎧兵を穴に飛び込ませて、とどめを刺そうと試みる。が。
「グガアアアア!」
敵が咆哮を上げたと同時に両腕が四倍ほど膨らみ、その腕で穴の底を叩いて大ジャンプした。
「なんだよそれ!?」
今まで戦ったゴブリンには見られなかった動きだ。
敵は落とし穴を抜けて先の地面に着地した後、なぜか四足歩行になって再び進撃を開始した。それは獣というより虫のような動きで嫌悪感が湧いてくる。
俺は少し焦るも、すぐに落ち着きを取り戻して鎧兵を次の罠の元へと移動させた。
ゴブリンはスライムボム改が埋められた地雷原に突入しようとしていた。地雷は巨獣のような重量のあるものにしか反応しないので不備がない限り人間には安全だ。
「さすがにこれで倒せるよな?」
おかしな行動を取る異常個体だが、たかが雑魚巨獣ゴブリンだ。体もボロボロだし勝てるはず。
直後、ゴブリンの右足が地雷を踏んだ。爆音と爆炎が周囲を支配する。
「嘘だろ!?」
敵は上半身だけになっていたが、それでも両腕を泳ぐように地面に叩きつけながら神樹へ向かって進み続ける。
俺は焦りながらも鎧兵にバリスタを撃たせた。矢はわずかに逸れてゴブリンの首に直撃。爆発して上半身と顔が分離した。しかしそれでも頭だけが動き、歯をガチガチさせながら前へと進んでくる。
「はぁ!? どうなってんだよ!?」
急激に吹き出した汗を拭いながら、複数の鎧兵に矢を構えさせた。だが、そのタイミングで敵は目からビームを放ってきた。数体の鎧兵が消し飛ぶ。
「うぜぇ、悪あがきすんじゃねぇ!」
俺は罵倒しながら敵の頭を爆弾で爆破した。そしてゴブリンはようやく動かなくなった。
「や、やったか。なんだったんだよコイツ」
結果的に大したことはなかったものの、俺は背中に嫌な汗をかいていた。
「ん? アレなんだろう」
ゴブリンの死体を観察していると、上半身の残骸近くに小さめの巨獣が転がっているのが見えた。大きさは人間の大人くらい。シルエットは“蚊”のようで、口先に鋭い針、六本の足、二枚の羽を有している。体色は黒を基調としているが、腹部だけ藍色だ。
「……蚊の巨獣、か?」
初めて見た。そういえば空飛ぶ巨獣には一度も遭遇したことがない。ニートン巨獣記にも載っていなかった。
ふと嫌な考えが頭をよぎった。……もし、この蚊より大きくて空の飛べる巨獣が現れたら果たして勝てるのだろうか。鎧コウモリを使えば何とかなりそうな気はする。でも神樹の上へ登ってきたら王都を守りつつ戦う自信はない。
……ダメだな。ネガティブ思考になっている。今は頭の片隅に置いておこう。
それより蚊がどこから来たか調査しないと。巣があるかも知れないな。取り返しのつかない事態になる前に探そう。
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