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第1章 誕生編
第31話 魔王城攻略戦3・幸運と不運
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ミノタウロスを罠の位置までおびき寄せるため俺本体は涸れた川の中心に降り立った。遠くからでも分かる敵の圧倒的な威圧感に俺の動悸はおさまらない。
バカ、臆するな。俺は天才演者だ。演じろ。英雄を。演じろ。天才軍師を。演じろ。無敵の騎士団を。
「聖騎士団アイン、突撃!!!」
「うおおお!」
今使える全ての兵と動物を敵に向かって走らせる。
敵は押し寄せる兵の波を捉えて攻撃態勢に入った。
「グオオオ!」
腕を横なぎに振るうだけで数十体の兵が死滅していく。
だが関係ない。こっちは何度だってノータイムで召喚できるんだ。負けるかよ!
「いっけぇぇぇ!」
再召喚のたびに突撃させていく。
数の暴力。数は正義だ。蟻だって百億回噛み付けば牛だって殺せるさ。
行け、行け。そして、来い、来い。戦闘センスのあるお前なら気付くだろ? 俺本体が重要だって。来い、俺を殺しに来い!
俺の気迫を悟ったか、目が合う。鼓動が高まる。ビビったからじゃねぇ。てめぇを殺せるからだ!
「グオオオ!」
体を引き裂かれそうな声に心が折れそうになる。負けるな。俺は英雄。巨獣に立ち向かう最強の戦士だ!
「ヌウウウウ!」
こちらに向けて突進してくる。肉壁ならぬ鎧兵壁を破砕しながら確実に本体を殺しに近付いてくる。
怖い、逃げたい、逃げるな、戦え。
その時。戦いの余波で飛んできた巨大な岩が俺の真横を通り過ぎた。
「……ッッ!」
一メートルほどズレていたら死んでいた。……バカ言え。生きてるならいいじゃねぇか。死んだ後のことなんて考えなくていい。まだ負けてねぇ。目を離すな。活路を見出せ。生きるための道筋を。俺は逃げない。
「うおおおお!」
召喚、召喚、召喚。引き付ける、引き付ける。引き付けろ、引き付けろ。
轟音が響こうが、突風が吹こうが、礫が当たろうが、ただ一点を見つめ、好機を待つ。
演じろ。音ゲーの天才を。
俺はいつだって機を逃さなかった。死の淵であろうとも、俺はチャンスを逃さない。
そして山のごとく巨大なミノタウロスが迫る。
「ここだ!!」
ゼロコンマ一秒足りともズレを許さない刹那のタイミングで俺は手元のスイッチを押した。
瞬間、川を覆うほどの巨大樹の枝先から大量のスライムの残骸が降り注いだ。
「グラァ!?」
ミノタウロスの頭に覆い被さり、粘り気により身動きが取れなくなった。片膝をついた敵。
よし! これで仕留める!
「畳み掛けろ!」
勝利の道が見え始めた。が、その時だった。
「グオオオ!!」
どこからか大気を揺らすほどの獣の叫び声が響いた。
「な、なんだ!?」
直後、ミノタウロスの真横に何かが着地した。衝撃で俺本体が吹き飛ばされる。
「ぐわあああ!」
二転三転と地面に叩きつけられ、身体中に痛みが走る。が、不幸中の幸いか辛うじて命は助かり、意識も飛ばずに済んだ。
「く、いってぇ」
苦悶の表情を浮かべながら起き上がる。そして砂煙が晴れた先に目をやると、現れたのは“もう一頭”のミノタウロス。呪われたサファイアのごとく深い青。
「な!? もう一頭、だと……!」
俺は冷や汗をかき、恐怖と絶望を覚える。だがしかし。
自然と片方の口端を上げていた。不運ではあるが、まだ想定内だ。こんなことで負けてたまるか。
まだ策はある。俺は絶対に諦めない。
バカ、臆するな。俺は天才演者だ。演じろ。英雄を。演じろ。天才軍師を。演じろ。無敵の騎士団を。
「聖騎士団アイン、突撃!!!」
「うおおお!」
今使える全ての兵と動物を敵に向かって走らせる。
敵は押し寄せる兵の波を捉えて攻撃態勢に入った。
「グオオオ!」
腕を横なぎに振るうだけで数十体の兵が死滅していく。
だが関係ない。こっちは何度だってノータイムで召喚できるんだ。負けるかよ!
「いっけぇぇぇ!」
再召喚のたびに突撃させていく。
数の暴力。数は正義だ。蟻だって百億回噛み付けば牛だって殺せるさ。
行け、行け。そして、来い、来い。戦闘センスのあるお前なら気付くだろ? 俺本体が重要だって。来い、俺を殺しに来い!
俺の気迫を悟ったか、目が合う。鼓動が高まる。ビビったからじゃねぇ。てめぇを殺せるからだ!
「グオオオ!」
体を引き裂かれそうな声に心が折れそうになる。負けるな。俺は英雄。巨獣に立ち向かう最強の戦士だ!
「ヌウウウウ!」
こちらに向けて突進してくる。肉壁ならぬ鎧兵壁を破砕しながら確実に本体を殺しに近付いてくる。
怖い、逃げたい、逃げるな、戦え。
その時。戦いの余波で飛んできた巨大な岩が俺の真横を通り過ぎた。
「……ッッ!」
一メートルほどズレていたら死んでいた。……バカ言え。生きてるならいいじゃねぇか。死んだ後のことなんて考えなくていい。まだ負けてねぇ。目を離すな。活路を見出せ。生きるための道筋を。俺は逃げない。
「うおおおお!」
召喚、召喚、召喚。引き付ける、引き付ける。引き付けろ、引き付けろ。
轟音が響こうが、突風が吹こうが、礫が当たろうが、ただ一点を見つめ、好機を待つ。
演じろ。音ゲーの天才を。
俺はいつだって機を逃さなかった。死の淵であろうとも、俺はチャンスを逃さない。
そして山のごとく巨大なミノタウロスが迫る。
「ここだ!!」
ゼロコンマ一秒足りともズレを許さない刹那のタイミングで俺は手元のスイッチを押した。
瞬間、川を覆うほどの巨大樹の枝先から大量のスライムの残骸が降り注いだ。
「グラァ!?」
ミノタウロスの頭に覆い被さり、粘り気により身動きが取れなくなった。片膝をついた敵。
よし! これで仕留める!
「畳み掛けろ!」
勝利の道が見え始めた。が、その時だった。
「グオオオ!!」
どこからか大気を揺らすほどの獣の叫び声が響いた。
「な、なんだ!?」
直後、ミノタウロスの真横に何かが着地した。衝撃で俺本体が吹き飛ばされる。
「ぐわあああ!」
二転三転と地面に叩きつけられ、身体中に痛みが走る。が、不幸中の幸いか辛うじて命は助かり、意識も飛ばずに済んだ。
「く、いってぇ」
苦悶の表情を浮かべながら起き上がる。そして砂煙が晴れた先に目をやると、現れたのは“もう一頭”のミノタウロス。呪われたサファイアのごとく深い青。
「な!? もう一頭、だと……!」
俺は冷や汗をかき、恐怖と絶望を覚える。だがしかし。
自然と片方の口端を上げていた。不運ではあるが、まだ想定内だ。こんなことで負けてたまるか。
まだ策はある。俺は絶対に諦めない。
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