6 / 108
第1章 誕生編
第6話 ヌルゲー?1・オーク改戦
しおりを挟む
女王マルメロの真意を聞いた次の日。
——そうじゃ、また森にオークが出たらしいから狩っといてくれんかの。最近なぜか巨獣が国周辺に増えておっての。いやー困った困った。ま、お主らにとっても国民のご機嫌取りになるし悪くない話じゃろ?——
と、マルメロが言っていたので、様々な現状を考えて聖騎士団を出すことにした。もちろん本体である俺はやられたら終わりなので留守番だ。
鎧達はありがたいことに遠隔操作できる。どれくらいの距離まで可能なのかは未知数だが、少なくとも山一つ越えても可能なのは実証済み。
鎧馬を走らすこと数分。神樹上部北側にある昇降機にたどり着いた。この世界でいう昇降機とは、木でできたファンシーな謎技術エレベーターだ。なぜか神樹さんに搭載されており、乗ると木の内部を一気に昇降できる。
「おう、来たか」
短髪赤毛で二十歳くらいの女“クローザ”が話しかけてきた。八重歯と日焼けした肌が特徴的。北側第一門の総合管理人&巨獣加工屋だ。巨獣加工屋は、その名の通り誰かが倒してきた巨獣を解体して肉、皮、油などに分けて加工する。と言っても最近は巨獣を狩る人間が居ないので実質廃業していた。だが、俺が来たことで再開し、それをきっかけに仲良くしている。
「ほら早く乗りな」
騎士団が昇降機にぞろぞろと乗っていき、全員集まったところで上に半透明な膜が張られた。高山病みたいな気圧の上下による弊害はないという。うーん素晴らしき世界。
「よーし全員乗ったな? 落ちたら死ぬから端っこの方には行くなよ。あーしは面白いからいいけどよ。ぎゃはは!」
なんともワイルドなエレベーターガールである。
そのクローザが端にあるレバーを引くと、昇降機から数メートル離れた場所にある穴が開く。そこから汽笛のようなかん高い音が鳴り、昇降機が揺れたかと思うと一気に下降を始めた。
「また狩りたぁ勤勉だねぇ」
下降中、クローザが騎士団No.4の土色鎧ドロダンゴに向けて話しかけてきた。彼女のお気に入りらしい。
「民の信頼を勝ち取らなければでごわすから」
「ぷっ、なーにカッコつけてんだよ。こんな腹でよぉ」
茶色の鎧の腹部をバシバシ叩かれる。ドロダンゴは横に大きく、ちょっぴりおデブ体型だ。
「や、辞めるでごわすっ!」
「どーせブヨブヨの腹してんだろ? そんなんで戦えんのか? あん?」
脂肪はないぜおねぇさん。
「し、失礼でごわすな。ムキムキでごわすっ」
嘘です。筋肉もないぜおねぇさん。
「んじゃ見せてみろよ? 出来ねぇんだろぉ?」
「それは騎士団の掟で出来ないでごわす」
「ほら無理なんじゃねぇか! ほれほれ!」
腹や脇をベシベシ叩いてくる。
「だ、だから辞めるでごわす! みんな見てるでごわすよ!」
俺しかいないけどね。
「若い女に構われて嬉しいくせによぉ? どうせ童貞だろ? ぎゃはは!」
クッ、ウブな男をたぶらかすんじゃないよ。好きになるだろ!
「ち、違うでござる、じゃなかった、ごわす」
「はいはい。ほら、もうすぐ着くぞ。舌噛むから喋るなよ」
おデブに優しいギャル。新ジャンルきたな。いや待てよ、言うほどギャルか? 仕方ない、ではギャルの定義から——。
どうでもいいことに思考を割かれようとした瞬間、下に着いた。ちっ、仕方ない。ギャル談義はまた今度だな。
「それじゃあクローザ殿、行ってくるでごわす」
「帰ったらいじめてやるからな。……だから死ぬなよ」
ツンデレ。
「大丈夫でごわす。おいどんは丈夫だけが取り柄でごわすから」
クローザは無言で優しく笑いかけてくれた。かわいい。
「周囲に敵影なーしッッ! いつでも開門可能ですッッ!」
近くで外の様子を窺っていた見張りの男が声を張り上げた。
「よし! 聖騎士団アイン、出るぞ!」
「うおおおおおおお!」
能力“ワンオペ”の特殊機能、手元のボタン一つで歓声を上げてみた。前にも紹介したが、他にも『わーわー』『やんややんや』『ぶーぶー』などシチュエーションに合わせて選び放題なのである。宴があったら盛り上がること間違いなし。
もちろん特別な効果はない。ただ盛り上がった感を出せるだけ。でもそういうのって大事だよな? BGMみたいなもんよ。無言に耐えられないぼっちな俺にはむなしい機能だ。誰がぼっちだよ。
「開門ッッ!!」
周囲の歯車が回転を始め、樹皮に偽装した門が上に開いていく。陽の光が眩しい。俺はモニターの輝度を下げた。
「ハァ!!」
掛け声と共に馬の手綱を思い切り引いた。
黒鎧の団長ゼロを先頭に神樹から飛び出していく。
出撃した聖騎士団は九十五体。あとの五体中四体は本体の護衛だ。暗殺怖いからね。
俺を聖騎士団に強行任命したことで嫌がらせを受けてそうな女王や教皇にも護衛をつけようとしたがやんわり断られた。ある程度信頼はしているが、四六時中近くには置きたくないってとこだろう。まぁ仕方ない。信頼は積み重ねだ。これから頑張るさ。
残りの一体は神樹の枝先から敵の位置を知らせる係。基本枝に登るのは禁止されているけど聖騎士団だから許されている。聖騎士団サイコー。
そのぼっち兵に単眼鏡で北東方向を探らせる。神樹の周りはバカみたいに大きな木の林立する森だ。巨獣よりも高い木も多く、探しづらい。
しかし、図体のデカい獣だから見つけられない訳がない。その時だった。遠くで枝の折れる音と共に無数の鳥が飛び立った。よしみっーけ。手元の鏡で光を反射して下の騎士団に合図を送る。
まぁ、モニターがあるからやらなくてもいいんだけど、対外用のパフォーマンスだ。ただでさえ鎧兜を脱がない怪しい集団なので少しは人間味を持たせないとね。
しばらく北東に向けて走っていると、木のモンスター“ドリアード”を食っている猪型の巨獣オークを発見。
なぜモンスターの名前を知っているかというと、屋敷の本棚から“ニートン巨獣記”という既視感のあるネーミングの本を見つけてそこに載っていたからだ。
オークめ、せんべい食うみたいに美味そうに食べやがって。今仕留めてやるからな。
「第二大隊、矢を放て!」
「わーわー」
「やんややんや」
「たーまやー」
歓声ボタンを連打しながら、目や鼻の穴に向けて矢を放った。巨獣の皮膚や毛は硬いが、粘膜系には割とダメージが入るのだ。
どうだ痛いだろー? みかんの汁が目に入ったみたいに痛いだろー?
「グオオオ!」
オークが嫌がって首を振ると、それだけで突風が起きた。数体の鎧兵が風船みたいに飛んでいく。
「うわー(棒読み)」
コラ、辞めなさい。他人の迷惑を考えろ!
と、遊んでいる間に密かに移動させていた五体を敵の口の真下に配置した。
舞台は整った。対巨獣必勝法。みなさんご存知、数体の兵が噛み砕かれている隙に攻撃の兵を体内に潜り込ませる策、“自己犠牲アタック”だ。
オークは真下の鎧兵を視認すると、バリバリムシャムシャと周りに鎧のカケラをこぼしながら食べ始めた。
「チキショウ、ここまでかよ……!」
「ば、バカなこの俺が猪如きに!」
「あわわ、死にましたー」
「こんな最後も、悪くはないさ」
ファイア、アイス、ウォーター、エアロがプログラミングしておいた死に際の台詞を吐きながら消滅した。騎士団番号が若い奴らの宿命で、いの一番に死んじゃうのだ。ただ、ドロダンゴだけはとろ臭くて助かった。細身体型にしとけば良かったな。
ともかく、今だ! 敵が砕いた兵を飲み込む瞬間、僅かに開いた口から無傷の鎧兵をタイミングよく飛び込ませた。
はい勝ち確定。完全にコツ掴んだわ。音ゲーならperfect!的な文字が出るレベル。いやぁヌルゲーですなぁ。命の危険がないってだけでこうも上手く行くとは。引きこもり万歳!
一人ドヤ顔をしていると、先に犠牲になった兵達が本体の元へ帰ってきた。
「おかえり」
「ただいま(裏声)」
さて、後は内臓を切り刻んでジ・エンドだな。グロいから薄目にして——ってあれ、視界が青い? 何だろ、モニターぶっ壊れた?
全く操作を受け付けない。まだ一年も使ってない新品魔法だぞ。修理屋さーん助けてー! くそ、保険に入っとけばよかったな。ねぇよそんなもん。
とか考えながらカメラを外の兵視点に切り替える。オークを見ると全身が青い半透明の膜に包まれていた。うーん、第二形態的なやつ? とりあえずオーク改と呼称する。
そのオーク改の動きが止まっている隙にニートン巨獣記を開いた。この巨獣記、大層な名前をしているが簡約版と隅っこに小さく書かれており湯葉十枚分くらいの厚さしかない。ニートが三日坊主で書き捨てたのかと疑いたくなるレベル。ニートンだけに。
「んー、お、これかな?」
数ページめくると挿絵の描かれた項にたどり着く。オークではないが青い粘液状の生物が描かれている。名前は“スライム”。よく漫画やゲームで見るのと同じアメーバを大きくしたようなモンスターだ。
挿絵の横に書かれている説明文を見る。なになに、普段は水辺に住み大人しく水面を漂っているだけだが、近くに水分が無くなると生物に寄生する。
なるほど、喉が渇いたのでオークに取り付きました的なことね。俺からしたら迷惑な話だ。
弱点は、体内にある赤くて丸い核、それと乾くのを嫌ってか“火”が苦手である、ね。
火かぁ。マッチ売りの少女から買うしかねぇな。いねぇよばか。
一人ツッコミをしていたその時だった。どこからか鐘のような音が聞こえて肩が跳ねる。
「えっ、なんだ?」
一瞬の思考停止の後、急いでモニターを確認する。まだオークに動きはない。兵に周辺を確認させるも乱入者はいない。
「あれー? トンカツなんで動かないのー? もしもーし?」
とんかつ……これは、本体の方か!? そういえば門番に一人置いてたんだった!
「トンカツ、もしかして死んだの?」
チッ、やっぱりあのガキか……!
乱入者の正体は——金髪三つ編み少女のお隣さん、ムギッコだった。
——そうじゃ、また森にオークが出たらしいから狩っといてくれんかの。最近なぜか巨獣が国周辺に増えておっての。いやー困った困った。ま、お主らにとっても国民のご機嫌取りになるし悪くない話じゃろ?——
と、マルメロが言っていたので、様々な現状を考えて聖騎士団を出すことにした。もちろん本体である俺はやられたら終わりなので留守番だ。
鎧達はありがたいことに遠隔操作できる。どれくらいの距離まで可能なのかは未知数だが、少なくとも山一つ越えても可能なのは実証済み。
鎧馬を走らすこと数分。神樹上部北側にある昇降機にたどり着いた。この世界でいう昇降機とは、木でできたファンシーな謎技術エレベーターだ。なぜか神樹さんに搭載されており、乗ると木の内部を一気に昇降できる。
「おう、来たか」
短髪赤毛で二十歳くらいの女“クローザ”が話しかけてきた。八重歯と日焼けした肌が特徴的。北側第一門の総合管理人&巨獣加工屋だ。巨獣加工屋は、その名の通り誰かが倒してきた巨獣を解体して肉、皮、油などに分けて加工する。と言っても最近は巨獣を狩る人間が居ないので実質廃業していた。だが、俺が来たことで再開し、それをきっかけに仲良くしている。
「ほら早く乗りな」
騎士団が昇降機にぞろぞろと乗っていき、全員集まったところで上に半透明な膜が張られた。高山病みたいな気圧の上下による弊害はないという。うーん素晴らしき世界。
「よーし全員乗ったな? 落ちたら死ぬから端っこの方には行くなよ。あーしは面白いからいいけどよ。ぎゃはは!」
なんともワイルドなエレベーターガールである。
そのクローザが端にあるレバーを引くと、昇降機から数メートル離れた場所にある穴が開く。そこから汽笛のようなかん高い音が鳴り、昇降機が揺れたかと思うと一気に下降を始めた。
「また狩りたぁ勤勉だねぇ」
下降中、クローザが騎士団No.4の土色鎧ドロダンゴに向けて話しかけてきた。彼女のお気に入りらしい。
「民の信頼を勝ち取らなければでごわすから」
「ぷっ、なーにカッコつけてんだよ。こんな腹でよぉ」
茶色の鎧の腹部をバシバシ叩かれる。ドロダンゴは横に大きく、ちょっぴりおデブ体型だ。
「や、辞めるでごわすっ!」
「どーせブヨブヨの腹してんだろ? そんなんで戦えんのか? あん?」
脂肪はないぜおねぇさん。
「し、失礼でごわすな。ムキムキでごわすっ」
嘘です。筋肉もないぜおねぇさん。
「んじゃ見せてみろよ? 出来ねぇんだろぉ?」
「それは騎士団の掟で出来ないでごわす」
「ほら無理なんじゃねぇか! ほれほれ!」
腹や脇をベシベシ叩いてくる。
「だ、だから辞めるでごわす! みんな見てるでごわすよ!」
俺しかいないけどね。
「若い女に構われて嬉しいくせによぉ? どうせ童貞だろ? ぎゃはは!」
クッ、ウブな男をたぶらかすんじゃないよ。好きになるだろ!
「ち、違うでござる、じゃなかった、ごわす」
「はいはい。ほら、もうすぐ着くぞ。舌噛むから喋るなよ」
おデブに優しいギャル。新ジャンルきたな。いや待てよ、言うほどギャルか? 仕方ない、ではギャルの定義から——。
どうでもいいことに思考を割かれようとした瞬間、下に着いた。ちっ、仕方ない。ギャル談義はまた今度だな。
「それじゃあクローザ殿、行ってくるでごわす」
「帰ったらいじめてやるからな。……だから死ぬなよ」
ツンデレ。
「大丈夫でごわす。おいどんは丈夫だけが取り柄でごわすから」
クローザは無言で優しく笑いかけてくれた。かわいい。
「周囲に敵影なーしッッ! いつでも開門可能ですッッ!」
近くで外の様子を窺っていた見張りの男が声を張り上げた。
「よし! 聖騎士団アイン、出るぞ!」
「うおおおおおおお!」
能力“ワンオペ”の特殊機能、手元のボタン一つで歓声を上げてみた。前にも紹介したが、他にも『わーわー』『やんややんや』『ぶーぶー』などシチュエーションに合わせて選び放題なのである。宴があったら盛り上がること間違いなし。
もちろん特別な効果はない。ただ盛り上がった感を出せるだけ。でもそういうのって大事だよな? BGMみたいなもんよ。無言に耐えられないぼっちな俺にはむなしい機能だ。誰がぼっちだよ。
「開門ッッ!!」
周囲の歯車が回転を始め、樹皮に偽装した門が上に開いていく。陽の光が眩しい。俺はモニターの輝度を下げた。
「ハァ!!」
掛け声と共に馬の手綱を思い切り引いた。
黒鎧の団長ゼロを先頭に神樹から飛び出していく。
出撃した聖騎士団は九十五体。あとの五体中四体は本体の護衛だ。暗殺怖いからね。
俺を聖騎士団に強行任命したことで嫌がらせを受けてそうな女王や教皇にも護衛をつけようとしたがやんわり断られた。ある程度信頼はしているが、四六時中近くには置きたくないってとこだろう。まぁ仕方ない。信頼は積み重ねだ。これから頑張るさ。
残りの一体は神樹の枝先から敵の位置を知らせる係。基本枝に登るのは禁止されているけど聖騎士団だから許されている。聖騎士団サイコー。
そのぼっち兵に単眼鏡で北東方向を探らせる。神樹の周りはバカみたいに大きな木の林立する森だ。巨獣よりも高い木も多く、探しづらい。
しかし、図体のデカい獣だから見つけられない訳がない。その時だった。遠くで枝の折れる音と共に無数の鳥が飛び立った。よしみっーけ。手元の鏡で光を反射して下の騎士団に合図を送る。
まぁ、モニターがあるからやらなくてもいいんだけど、対外用のパフォーマンスだ。ただでさえ鎧兜を脱がない怪しい集団なので少しは人間味を持たせないとね。
しばらく北東に向けて走っていると、木のモンスター“ドリアード”を食っている猪型の巨獣オークを発見。
なぜモンスターの名前を知っているかというと、屋敷の本棚から“ニートン巨獣記”という既視感のあるネーミングの本を見つけてそこに載っていたからだ。
オークめ、せんべい食うみたいに美味そうに食べやがって。今仕留めてやるからな。
「第二大隊、矢を放て!」
「わーわー」
「やんややんや」
「たーまやー」
歓声ボタンを連打しながら、目や鼻の穴に向けて矢を放った。巨獣の皮膚や毛は硬いが、粘膜系には割とダメージが入るのだ。
どうだ痛いだろー? みかんの汁が目に入ったみたいに痛いだろー?
「グオオオ!」
オークが嫌がって首を振ると、それだけで突風が起きた。数体の鎧兵が風船みたいに飛んでいく。
「うわー(棒読み)」
コラ、辞めなさい。他人の迷惑を考えろ!
と、遊んでいる間に密かに移動させていた五体を敵の口の真下に配置した。
舞台は整った。対巨獣必勝法。みなさんご存知、数体の兵が噛み砕かれている隙に攻撃の兵を体内に潜り込ませる策、“自己犠牲アタック”だ。
オークは真下の鎧兵を視認すると、バリバリムシャムシャと周りに鎧のカケラをこぼしながら食べ始めた。
「チキショウ、ここまでかよ……!」
「ば、バカなこの俺が猪如きに!」
「あわわ、死にましたー」
「こんな最後も、悪くはないさ」
ファイア、アイス、ウォーター、エアロがプログラミングしておいた死に際の台詞を吐きながら消滅した。騎士団番号が若い奴らの宿命で、いの一番に死んじゃうのだ。ただ、ドロダンゴだけはとろ臭くて助かった。細身体型にしとけば良かったな。
ともかく、今だ! 敵が砕いた兵を飲み込む瞬間、僅かに開いた口から無傷の鎧兵をタイミングよく飛び込ませた。
はい勝ち確定。完全にコツ掴んだわ。音ゲーならperfect!的な文字が出るレベル。いやぁヌルゲーですなぁ。命の危険がないってだけでこうも上手く行くとは。引きこもり万歳!
一人ドヤ顔をしていると、先に犠牲になった兵達が本体の元へ帰ってきた。
「おかえり」
「ただいま(裏声)」
さて、後は内臓を切り刻んでジ・エンドだな。グロいから薄目にして——ってあれ、視界が青い? 何だろ、モニターぶっ壊れた?
全く操作を受け付けない。まだ一年も使ってない新品魔法だぞ。修理屋さーん助けてー! くそ、保険に入っとけばよかったな。ねぇよそんなもん。
とか考えながらカメラを外の兵視点に切り替える。オークを見ると全身が青い半透明の膜に包まれていた。うーん、第二形態的なやつ? とりあえずオーク改と呼称する。
そのオーク改の動きが止まっている隙にニートン巨獣記を開いた。この巨獣記、大層な名前をしているが簡約版と隅っこに小さく書かれており湯葉十枚分くらいの厚さしかない。ニートが三日坊主で書き捨てたのかと疑いたくなるレベル。ニートンだけに。
「んー、お、これかな?」
数ページめくると挿絵の描かれた項にたどり着く。オークではないが青い粘液状の生物が描かれている。名前は“スライム”。よく漫画やゲームで見るのと同じアメーバを大きくしたようなモンスターだ。
挿絵の横に書かれている説明文を見る。なになに、普段は水辺に住み大人しく水面を漂っているだけだが、近くに水分が無くなると生物に寄生する。
なるほど、喉が渇いたのでオークに取り付きました的なことね。俺からしたら迷惑な話だ。
弱点は、体内にある赤くて丸い核、それと乾くのを嫌ってか“火”が苦手である、ね。
火かぁ。マッチ売りの少女から買うしかねぇな。いねぇよばか。
一人ツッコミをしていたその時だった。どこからか鐘のような音が聞こえて肩が跳ねる。
「えっ、なんだ?」
一瞬の思考停止の後、急いでモニターを確認する。まだオークに動きはない。兵に周辺を確認させるも乱入者はいない。
「あれー? トンカツなんで動かないのー? もしもーし?」
とんかつ……これは、本体の方か!? そういえば門番に一人置いてたんだった!
「トンカツ、もしかして死んだの?」
チッ、やっぱりあのガキか……!
乱入者の正体は——金髪三つ編み少女のお隣さん、ムギッコだった。
10
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました
ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが……
なろう、カクヨムでも投稿しています。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
異世界に召喚されたおっさん、実は最強の癒しキャラでした
鈴木竜一
ファンタジー
健康マニアのサラリーマン宮原優志は行きつけの健康ランドにあるサウナで汗を流している最中、勇者召喚の儀に巻き込まれて異世界へと飛ばされてしまう。飛ばされた先の世界で勇者になるのかと思いきや、スキルなしの上に最底辺のステータスだったという理由で、優志は自身を召喚したポンコツ女性神官リウィルと共に城を追い出されてしまった。
しかし、実はこっそり持っていた《癒しの極意》というスキルが真の力を発揮する時、世界は大きな変革の炎に包まれる……はず。
魔王? ドラゴン? そんなことよりサウナ入ってフルーツ牛乳飲んで健康になろうぜ!
【「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」1巻発売中です! こちらもよろしく!】
※作者の他作品ですが、「おっさん、異世界でドラゴンを育てる。」がこのたび書籍化いたします。発売は3月下旬予定。そちらもよろしくお願いします。
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
鑑定能力で恩を返す
KBT
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。
彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。
そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。
この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。
帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。
そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。
そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる