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おまけ19 元伯爵令嬢の行き着く先
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「彼らは盗賊のようなもの。左様な者共に情は無用でございます」
情は無用。御者は淡々とそう言って何事もなかったかのように馬車を動かし始める。さっきまで命だったモノを転がして。
「……?」
ソルティアは段々と頭が追いついてきた。とりあえず倒された男達はもう襲いかかってこないこと、御者が敵ではなさそうだということに。
ただ、御者の正体が何者何かさっぱり分からないため、完全に安心できない。ソルティアは恐る恐る聞いてみた。
「あ、貴方は、何者……ですか?」
「私はダーク・コク・リュウケン。貴女を修道院に送り届ける御者兼護衛を務める『陰』です」
「御者兼……護衛? 私に?」
ソルティアは困惑する。御者の名前は分かったのだが、聞いたこともない名前と姓名なのだ。それに護衛だというから更に動揺する。それを聞いたソルティアはありえないと思った。『陰』が何なのか知らないが何となく特別な存在であることだけは分かる。だが、そんな存在が自分を守る意味が分からない。ソルティアは親族にさえ見捨てられた身の上だ。
――もはや誰も味方してくれなくないはずなのに護衛なんて……。
「ああ、依頼主ですが、貴女の姉君アスーナ様ですよ」
「えっ!? お姉様が!?」
「貴女が無事に修道院に到着するとは思えないということで、私を護衛としたのです。案の定、落ちぶれたクズどもに襲われることになりましたが、大したことがない者共でよかったです」
「――っ!」
なんと驚くべきことに御者の男は、ソルティアの姉のアスーナに依頼されて護衛に就いたというのだ。つまり、アスーナはソルティアの身を案じてくれていたということだ。その事実に、ソルティアは驚愕して全身の力が抜ける。
「お、お姉様……」
最後に見た姉のアスーナ、今生の別れと言ってもいい最後の顔は悲しみにあふれていた。少しでも自分に情を持ってくれていたことにソルティアは少し嬉しかったが、まさか護衛をつけてくれていたとは思ってもいなかった。
「う、うあああああああああああ!」
ソルティアは号泣した。アスーナに対する様々な感情が爆発したかのように。それは多大な感謝であり、少しの怒りと嫉妬であり、これまでの行いの罪悪感でもあるのかもしれない。
◇
修道院に無事に到着したソルティアは、そこで御者ことダークと別れることになる。
「……ここまで運んでいただき本当にありがとうございました」
「いえいえ、依頼ですので。ここで私の仕事は終わりです。それでは、」
「その前に、お姉様に伝言をお願いしたいのですが」
「? それくらいならいいでしょう」
伝言。ソルティアは一旦深呼吸して気持ちを落ち着かせて、真剣な顔で口にした。
「私は……もう一度やり直します。それだけ、伝えてください。今の私にはそれくらいしか言えないですから……」
もう一度やり直す。それはアスーナとの別れ際に言わなかった言葉だった。
「分かりました。必ずやお伝えします。きっとお喜びくださるでしょうから」
「そうでしょうか?」
「勿論です。姉君のお心を理解されたのでしょう? その上での言葉ならいいではありませんか」
「……!」
ソルティアの伝言はダークによって間違いなくアスーナに伝わった。そしてそれは、ダークの言った通りアスーナを喜ばせることになるのであった。
アスーナとソルティア。アスーナがハラドと結婚して幸せになり、ソルティアがしっかり反省してやり直して真っ当な修道女になるのは先の話になる。
――奇跡的に二人が再会して、和解するのもずっと先の話になる。
情は無用。御者は淡々とそう言って何事もなかったかのように馬車を動かし始める。さっきまで命だったモノを転がして。
「……?」
ソルティアは段々と頭が追いついてきた。とりあえず倒された男達はもう襲いかかってこないこと、御者が敵ではなさそうだということに。
ただ、御者の正体が何者何かさっぱり分からないため、完全に安心できない。ソルティアは恐る恐る聞いてみた。
「あ、貴方は、何者……ですか?」
「私はダーク・コク・リュウケン。貴女を修道院に送り届ける御者兼護衛を務める『陰』です」
「御者兼……護衛? 私に?」
ソルティアは困惑する。御者の名前は分かったのだが、聞いたこともない名前と姓名なのだ。それに護衛だというから更に動揺する。それを聞いたソルティアはありえないと思った。『陰』が何なのか知らないが何となく特別な存在であることだけは分かる。だが、そんな存在が自分を守る意味が分からない。ソルティアは親族にさえ見捨てられた身の上だ。
――もはや誰も味方してくれなくないはずなのに護衛なんて……。
「ああ、依頼主ですが、貴女の姉君アスーナ様ですよ」
「えっ!? お姉様が!?」
「貴女が無事に修道院に到着するとは思えないということで、私を護衛としたのです。案の定、落ちぶれたクズどもに襲われることになりましたが、大したことがない者共でよかったです」
「――っ!」
なんと驚くべきことに御者の男は、ソルティアの姉のアスーナに依頼されて護衛に就いたというのだ。つまり、アスーナはソルティアの身を案じてくれていたということだ。その事実に、ソルティアは驚愕して全身の力が抜ける。
「お、お姉様……」
最後に見た姉のアスーナ、今生の別れと言ってもいい最後の顔は悲しみにあふれていた。少しでも自分に情を持ってくれていたことにソルティアは少し嬉しかったが、まさか護衛をつけてくれていたとは思ってもいなかった。
「う、うあああああああああああ!」
ソルティアは号泣した。アスーナに対する様々な感情が爆発したかのように。それは多大な感謝であり、少しの怒りと嫉妬であり、これまでの行いの罪悪感でもあるのかもしれない。
◇
修道院に無事に到着したソルティアは、そこで御者ことダークと別れることになる。
「……ここまで運んでいただき本当にありがとうございました」
「いえいえ、依頼ですので。ここで私の仕事は終わりです。それでは、」
「その前に、お姉様に伝言をお願いしたいのですが」
「? それくらいならいいでしょう」
伝言。ソルティアは一旦深呼吸して気持ちを落ち着かせて、真剣な顔で口にした。
「私は……もう一度やり直します。それだけ、伝えてください。今の私にはそれくらいしか言えないですから……」
もう一度やり直す。それはアスーナとの別れ際に言わなかった言葉だった。
「分かりました。必ずやお伝えします。きっとお喜びくださるでしょうから」
「そうでしょうか?」
「勿論です。姉君のお心を理解されたのでしょう? その上での言葉ならいいではありませんか」
「……!」
ソルティアの伝言はダークによって間違いなくアスーナに伝わった。そしてそれは、ダークの言った通りアスーナを喜ばせることになるのであった。
アスーナとソルティア。アスーナがハラドと結婚して幸せになり、ソルティアがしっかり反省してやり直して真っ当な修道女になるのは先の話になる。
――奇跡的に二人が再会して、和解するのもずっと先の話になる。
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