61 / 71
おまけ11 元侯爵令息の末路3(総集編?)
しおりを挟む
「な、なんだよこれ……」
カリブラは思わず声を上げた。無理もない。提示された証拠というのは、投影機により『あの時』を映し出した映像だったのだ。
(あ、あの時の光景を投影機に録画していやがったのか!? なんてことを……!)
『やあやあアスーナにバニア嬢。待ちわびていたよ……』
『……カリブラ様?』
『ああそうだ。お前の伴侶となるべき男さ』
映し出されたカリブラの顔は見るからに下卑た笑みそのもの。映っているアスーナのように見ている者ほぼ全員が顔をしかめる。マキナも例外ではなく映される息子に軽蔑の眼差しを向ける。ただ、今ここにいるカリブラ自身は羞恥に震えていた。
(こ、こんな最初のところを……しかも、言葉まで……)
『お前が真に結ばれるべき相手はこの僕なのにお前は拒んだ。ハラドなんかに乗り換えて僕を捨てようなんて生意気なことをするから少し強引な手に出ると決めたんだ。僕のものになるしかならないようにね』
自分勝手なカリブラのセリフを合図に、取り巻きたちも現れる。もちろん下卑た顔で。そして、今ここにいる取り巻きたちもまたカリブラのように羞恥のあまり顔を背ける。彼らの親たちも見ているのだから当然だ。汚いものを見るような目で見られることに耐えられないのだ。
『この僕が寄りを戻してやろうというのに、ハラドと仲良くなりやがって! それにその女も許せるわけ無いんだよ! 伯爵令嬢の分際で僕をこの僕を馬鹿にしてコケにして恥をかけさせやがって! この屈辱を晴らすためにもその女には恥辱を味わってもらわないといけないんだよ!』
「なんて自分勝手な理屈だ。侯爵令息とはいえ、横暴すぎる考えだ」
「いや、これはもう貴族紳士の考え方からも外れている。人間のクズだ」
笑顔から一転して醜悪な顔で身勝手な言い分を叫ぶのは、映し出されるカリブラ。醜悪さ以上にその言動が目立つのか聞いている取り巻きの親たちからも苦言を口にされる。マキナは吐き気が込み上げたのか口元を多い出す始末だ。
(な、なんだよ……僕の理屈が間違っているというのか? 母上までなんで……。そもそも、あれは本当に僕なのか? この僕があの時、あんな顔で……)
自身の醜悪な顔を自分で見て、カリブラ自身も絶句してしまった。あの時の自分はこんな顔だったなんて……。
『貴方は実に醜い。自分の思い通りにならないことをすぐ人のせいにして自分に非がないと喚いて反省もしない。挙げ句には、こうして力尽くで解決しようとまで……こんな醜くて見苦しくてくだらない男と婚約破棄できてよかったです』
『本当よね~。醜い~。自分のことしか考えられない頭だから他人に拒絶される理由がわからないんだね~。……本当に最悪な男。典型的なクズ』
「ぐっ……」
あらためて聞かされるアスーナとバニアの罵倒に対して、カリブラは怒りが込み上げてくるがグッとこらえた。ここで騒いでも意味がないし印象が悪くなるだけなことくらいカリブラも分かっていたのだ。
ただ、我慢しても結果は見えているのだが。
「ぷっ」
「っ!?」
バニアの罵倒を聞いた王太子が吹き出した。どうも王太子も同じことを思っていたらしい。そんな王太子の様子に気づいたカリブラは唖然とした。王太子に笑われるなんて……と思った矢先、更に批判の声が上がった。
「醜いか。全くだ」
「それに見苦しくてくだらない、最悪だな」
(なんだよ……僕の思い通りにしたかっただけなのに……!)
取り巻きの親といえば男爵やよくても子爵しかいない。そんな者たちにまで蔑まされたカリブラは流石に怒りを堪えられない。感情に任せて喚こうとした直後だった。
『ふ、ふざ……ふざけ、ふざけんな、うぐわあああああ、ぬぐあああああ……はーっ、はーっ!』
「「「「「っっ!!??」」」」」
奇声を叫ぶカリブラの姿が映し出され、人とは思えぬ奇声に誰もが驚いた。そして、叫び疲れて息を切らしながらも顔を真っ赤にして憎悪を込めた目でアスーナとバニアを凝視するカリブラの姿にも見ている誰もが驚かされる。
肝心のカリブラ自身もそうだった。怒りが吹き飛ぶほどに。
(……な、なんだこれ? あれが僕だというのか?)
『よ、よくも、そ、そこまで……み、醜いなんて、ゆ、許さない……! こ、殺し……いや、死んだほうがマシだと思うくらいの恥辱を与えてやるぞぉっ!』
普段自分がどのように見られているのか分からないカリブラだったが、奇声を叫んで怒り狂う自分の姿に愕然としてしまった。あの時の自分がこんな姿だったなんて……。
『こんなことで取り乱して感情が爆発するなんて、本当に幼稚すぎますね』
『全く~、貴族になっちゃいけない男~。まして嫡男なんて世も末~』
『だ、黙れ黙れ黙れぇっ! お前らぁっ、女どもを顔以外殴ってやれ!』
アスーナとバニアの罵倒とカリブラの怒号。映し出されるカリブラとは違い、今ここにいるカリブラは目を丸くするばかりだった。あまりにもあんまりな自分の姿に怒るどころではなかった。
「なんてことを……顔以外殴れだと?」
「……下劣な考え方、不快だ」
もはや今される罵倒すら己の耳に入ってもカリブラは動じることができなかった。いや、反論もできなくなっていたのだ。
カリブラ自身ですら、アスーナとバニアの言う通りだと思い始めてしまったのだから。
『ははははは! アスーナぁ! 泣け! 喚け! 恐怖しろ! そして『助けてください』と叫べぇ!』
(……もう、止めてくれ……)
『いい加減余裕ぶるのも大概にしろよ! お前は今から傷物になるんだよぉ!』
「もうやめろぉぉぉぉぉ!」
思わずカリブラは叫んだ。怒りや憎しみからではなく、羞恥と絶望からの叫びであった。己の恥ずかしい姿をこれ以上見せたくなくて、そして同じくらいに醜い自分の姿を自分で見たくなかったから。
「もうやめろ! 止めてくれ! もうこれ以上はいいだろ!」
「そうだな。ここから先は機密事項だ」
「……え?」
王太子は投影機を止めた。
カリブラは思わず声を上げた。無理もない。提示された証拠というのは、投影機により『あの時』を映し出した映像だったのだ。
(あ、あの時の光景を投影機に録画していやがったのか!? なんてことを……!)
『やあやあアスーナにバニア嬢。待ちわびていたよ……』
『……カリブラ様?』
『ああそうだ。お前の伴侶となるべき男さ』
映し出されたカリブラの顔は見るからに下卑た笑みそのもの。映っているアスーナのように見ている者ほぼ全員が顔をしかめる。マキナも例外ではなく映される息子に軽蔑の眼差しを向ける。ただ、今ここにいるカリブラ自身は羞恥に震えていた。
(こ、こんな最初のところを……しかも、言葉まで……)
『お前が真に結ばれるべき相手はこの僕なのにお前は拒んだ。ハラドなんかに乗り換えて僕を捨てようなんて生意気なことをするから少し強引な手に出ると決めたんだ。僕のものになるしかならないようにね』
自分勝手なカリブラのセリフを合図に、取り巻きたちも現れる。もちろん下卑た顔で。そして、今ここにいる取り巻きたちもまたカリブラのように羞恥のあまり顔を背ける。彼らの親たちも見ているのだから当然だ。汚いものを見るような目で見られることに耐えられないのだ。
『この僕が寄りを戻してやろうというのに、ハラドと仲良くなりやがって! それにその女も許せるわけ無いんだよ! 伯爵令嬢の分際で僕をこの僕を馬鹿にしてコケにして恥をかけさせやがって! この屈辱を晴らすためにもその女には恥辱を味わってもらわないといけないんだよ!』
「なんて自分勝手な理屈だ。侯爵令息とはいえ、横暴すぎる考えだ」
「いや、これはもう貴族紳士の考え方からも外れている。人間のクズだ」
笑顔から一転して醜悪な顔で身勝手な言い分を叫ぶのは、映し出されるカリブラ。醜悪さ以上にその言動が目立つのか聞いている取り巻きの親たちからも苦言を口にされる。マキナは吐き気が込み上げたのか口元を多い出す始末だ。
(な、なんだよ……僕の理屈が間違っているというのか? 母上までなんで……。そもそも、あれは本当に僕なのか? この僕があの時、あんな顔で……)
自身の醜悪な顔を自分で見て、カリブラ自身も絶句してしまった。あの時の自分はこんな顔だったなんて……。
『貴方は実に醜い。自分の思い通りにならないことをすぐ人のせいにして自分に非がないと喚いて反省もしない。挙げ句には、こうして力尽くで解決しようとまで……こんな醜くて見苦しくてくだらない男と婚約破棄できてよかったです』
『本当よね~。醜い~。自分のことしか考えられない頭だから他人に拒絶される理由がわからないんだね~。……本当に最悪な男。典型的なクズ』
「ぐっ……」
あらためて聞かされるアスーナとバニアの罵倒に対して、カリブラは怒りが込み上げてくるがグッとこらえた。ここで騒いでも意味がないし印象が悪くなるだけなことくらいカリブラも分かっていたのだ。
ただ、我慢しても結果は見えているのだが。
「ぷっ」
「っ!?」
バニアの罵倒を聞いた王太子が吹き出した。どうも王太子も同じことを思っていたらしい。そんな王太子の様子に気づいたカリブラは唖然とした。王太子に笑われるなんて……と思った矢先、更に批判の声が上がった。
「醜いか。全くだ」
「それに見苦しくてくだらない、最悪だな」
(なんだよ……僕の思い通りにしたかっただけなのに……!)
取り巻きの親といえば男爵やよくても子爵しかいない。そんな者たちにまで蔑まされたカリブラは流石に怒りを堪えられない。感情に任せて喚こうとした直後だった。
『ふ、ふざ……ふざけ、ふざけんな、うぐわあああああ、ぬぐあああああ……はーっ、はーっ!』
「「「「「っっ!!??」」」」」
奇声を叫ぶカリブラの姿が映し出され、人とは思えぬ奇声に誰もが驚いた。そして、叫び疲れて息を切らしながらも顔を真っ赤にして憎悪を込めた目でアスーナとバニアを凝視するカリブラの姿にも見ている誰もが驚かされる。
肝心のカリブラ自身もそうだった。怒りが吹き飛ぶほどに。
(……な、なんだこれ? あれが僕だというのか?)
『よ、よくも、そ、そこまで……み、醜いなんて、ゆ、許さない……! こ、殺し……いや、死んだほうがマシだと思うくらいの恥辱を与えてやるぞぉっ!』
普段自分がどのように見られているのか分からないカリブラだったが、奇声を叫んで怒り狂う自分の姿に愕然としてしまった。あの時の自分がこんな姿だったなんて……。
『こんなことで取り乱して感情が爆発するなんて、本当に幼稚すぎますね』
『全く~、貴族になっちゃいけない男~。まして嫡男なんて世も末~』
『だ、黙れ黙れ黙れぇっ! お前らぁっ、女どもを顔以外殴ってやれ!』
アスーナとバニアの罵倒とカリブラの怒号。映し出されるカリブラとは違い、今ここにいるカリブラは目を丸くするばかりだった。あまりにもあんまりな自分の姿に怒るどころではなかった。
「なんてことを……顔以外殴れだと?」
「……下劣な考え方、不快だ」
もはや今される罵倒すら己の耳に入ってもカリブラは動じることができなかった。いや、反論もできなくなっていたのだ。
カリブラ自身ですら、アスーナとバニアの言う通りだと思い始めてしまったのだから。
『ははははは! アスーナぁ! 泣け! 喚け! 恐怖しろ! そして『助けてください』と叫べぇ!』
(……もう、止めてくれ……)
『いい加減余裕ぶるのも大概にしろよ! お前は今から傷物になるんだよぉ!』
「もうやめろぉぉぉぉぉ!」
思わずカリブラは叫んだ。怒りや憎しみからではなく、羞恥と絶望からの叫びであった。己の恥ずかしい姿をこれ以上見せたくなくて、そして同じくらいに醜い自分の姿を自分で見たくなかったから。
「もうやめろ! 止めてくれ! もうこれ以上はいいだろ!」
「そうだな。ここから先は機密事項だ」
「……え?」
王太子は投影機を止めた。
13
お気に入りに追加
2,311
あなたにおすすめの小説
お父様お母様、お久しぶりです。あの時わたしを捨ててくださりありがとうございます
柚木ゆず
恋愛
ヤニックお父様、ジネットお母様。お久しぶりです。
わたしはアヴァザール伯爵家の長女エマとして生まれ、6歳のころ貴方がたによって隣国に捨てられてしまいましたよね?
当時のわたしにとってお二人は大事な家族で、だからとても辛かった。寂しくて悲しくて、捨てられたわたしは絶望のどん底に落ちていました。
でも。
今は、捨てられてよかったと思っています。
だって、その出来事によってわたしは――。大切な人達と出会い、大好きな人と出逢うことができたのですから。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冷遇された王妃は自由を望む
空橋彩
恋愛
父を亡くした幼き王子クランに頼まれて王妃として召し上げられたオーラリア。
流行病と戦い、王に、国民に尽くしてきた。
異世界から現れた聖女のおかげで流行病は終息に向かい、王宮に戻ってきてみれば、納得していない者たちから軽んじられ、冷遇された。
夫であるクランは表情があまり変わらず、女性に対してもあまり興味を示さなかった。厳しい所もあり、臣下からは『氷の貴公子』と呼ばれているほどに冷たいところがあった。
そんな彼が聖女を大切にしているようで、オーラリアの待遇がどんどん悪くなっていった。
自分の人生よりも、クランを優先していたオーラリアはある日気づいてしまった。
[もう、彼に私は必要ないんだ]と
数人の信頼できる仲間たちと協力しあい、『離婚』して、自分の人生を取り戻そうとするお話。
貴族設定、病気の治療設定など出てきますが全てフィクションです。私の世界ではこうなのだな、という方向でお楽しみいただけたらと思います。
酷い扱いを受けていたと気付いたので黙って家を出たら、家族が大変なことになったみたいです
柚木ゆず
恋愛
――わたしは、家族に尽くすために生まれてきた存在――。
子爵家の次女ベネディクトは幼い頃から家族にそう思い込まされていて、父と母と姉の幸せのために身を削る日々を送っていました。
ですがひょんなことからベネディクトは『思い込まれている』と気付き、こんな場所に居てはいけないとコッソリお屋敷を去りました。
それによって、ベネディクトは幸せな人生を歩み始めることになり――反対に3人は、不幸に満ちた人生を歩み始めることとなるのでした。
(完結)王家の血筋の令嬢は路上で孤児のように倒れる
青空一夏
恋愛
父親が亡くなってから実の母と妹に虐げられてきた主人公。冬の雪が舞い落ちる日に、仕事を探してこいと言われて当てもなく歩き回るうちに路上に倒れてしまう。そこから、はじめる意外な展開。
ハッピーエンド。ショートショートなので、あまり入り組んでいない設定です。ご都合主義。
Hotランキング21位(10/28 60,362pt 12:18時点)
ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?
ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。
一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?
これでも全属性持ちのチートですが、兄弟からお前など不要だと言われたので冒険者になります。
りまり
恋愛
私の名前はエルムと言います。
伯爵家の長女なのですが……家はかなり落ちぶれています。
それを私が持ち直すのに頑張り、贅沢できるまでになったのに私はいらないから出て行けと言われたので出ていきます。
でも知りませんよ。
私がいるからこの贅沢ができるんですからね!!!!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる