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おまけ5 第31話補足
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アスーナとハラドが公爵家の屋敷で和やかにしている頃、カリブラとソルティアは騒がしく過ごしていた。
「また、勝手にお菓子を食べたのか! あれはお前のじゃないと何度言えば分かるんだ!」
「この屋敷にあるものだから私が食べてもいいじゃないですか! 文句を言うならお小遣いをくださいよ!」
「ふ、ふざけるなよ! お前のせいでどれだけ金が無くなったと持ってるんだ! お前の散財に付き合えるか!」
「なんですか! もっと宝石やドレスが買えると期待してたのに!」
「もう十分あるだろ! 飽き性のくせに欲しがるな!
カリブラとソルティアの仲は日に日に悪くなっていくばかり、もはや一緒にアスーナにドッキリを仕掛けるような間柄ではなくなっていた。
「くそ! こんな女と婚約しなきゃよかった!」
「よく言えますね! お姉様の目を盗んで私と一緒に遊んでたくせに!」
挙げ句にはこんなことまで言い出すが、中々婚約を白紙にしようとは言えずにいた。何故なら、カリブラとアスーナが婚約破棄となった要因がカリブラとソルティアによるドッキリだと知れ渡ってしまっていたからだ。当然、この二人の評判は悪いものになってしまい、婚約が白紙にでもなれば次の婚約が見つかるのは困難になるのは目に見える。下手をすれば一生独身……そのようなことを侯爵家の当主に言われてしまっていた。
(畜生! アスーナのせいでこんな性格悪い女と婚約してしまったのに、アスーナは僕に何もしてくれないなんて理不尽じゃないか! なんでこんなことに!)
(お姉様からカリブラ様の婚約を譲ってもらったけど……思ったよりも贅沢が続かないわ。カリブラ様も性格が悪いし、なんとかしてハラド様あたりに乗り換えないと……)
互いに自分のことだけを考えて相手のことを性格悪いと思うあたりはカリブラもソルティアも同じだった。今の自分たちの婚約のことを後悔し始めるしまつ。だからこそ、どうしても今の婚約を捨てて都合の良い相手と婚約したいと考え始めるのだ。
(どうにかしてアスーナと婚約し直さなければ、そのためにもソルティアをどうにかしないと……)
(お姉様からハラド様を奪わないと……そうだわ!)
「カリブラ様! 私いいこと閃きました!」
「はぁ!? いいことだと? また巫山戯たこと言い出すんだろ!」
「いいえ、カリブラ様にとっても良い提案ですわ!」
「何……?」
ソルティアが馬鹿だと思っていても、『カリブラにとっても良い』と聞けば自然と聞きたくなる。カリブラは訝しむようにソルティアの言葉に耳を傾けた。
「私達の婚約とお姉様とハラド様の婚約を交換するのですわ!」
「何? 婚約を交換だと?」
「そうです! カリブラ様が苛立つのはお姉様に未練があるからでしょう。それなのにハラド様に取られてしまったから気に入らない。だからこそ心が荒れているのですわ」
「ん? あ、ああ……」
ほとんどお前のせいだけどな……と心の中で思うカリブラだったが、アスーナに未練があるというのもあながち間違いではない。アスーナなら我儘に振る舞わないのだから。
「そこでお姉様とハラド様と話し合って、カリブラ様とお姉様の婚約を戻して、私とハラド様と新たに婚約を結べば良いのですの!」
「!」
「私、ハラド様なら良いなって思いますの! 言ってはなんですけどお金持ちそうですし!」
ソルティアの口にしていることはカリブラに対してもハラドに対しても失礼なことだったが、カリブラはそんなこと気にしないで『婚約の交換』について考えた。
(アスーナとの婚約を戻してソルティアをハラドに押し付ける。なんて名案なんだ! 僕の状況が良くなるうえに、いけ好かないハラドに厄介事をプレゼント……最高じゃないか!)
「そうだな! そうするべきだ! なんて名案なんだ!」
「そうでしょうそうでしょう! 明日すぐにお姉様にも提案して受け入れてもらいましょう!」
「ああ! 勿論だ!」
婚約の交換。そんなものは普通受け入れられるはずがないもの、マキナでも侯爵でもいいから相談すれば止めてもらえたのだが、勝手に盛り上がった二人は誰にも言わないままでいた。
――そして、結果的に二人の提案は拒絶された挙げ句、カリブラは大恥をかくこととなった。勿論、侯爵夫妻から叱られるのも当然だった。
「また、勝手にお菓子を食べたのか! あれはお前のじゃないと何度言えば分かるんだ!」
「この屋敷にあるものだから私が食べてもいいじゃないですか! 文句を言うならお小遣いをくださいよ!」
「ふ、ふざけるなよ! お前のせいでどれだけ金が無くなったと持ってるんだ! お前の散財に付き合えるか!」
「なんですか! もっと宝石やドレスが買えると期待してたのに!」
「もう十分あるだろ! 飽き性のくせに欲しがるな!
カリブラとソルティアの仲は日に日に悪くなっていくばかり、もはや一緒にアスーナにドッキリを仕掛けるような間柄ではなくなっていた。
「くそ! こんな女と婚約しなきゃよかった!」
「よく言えますね! お姉様の目を盗んで私と一緒に遊んでたくせに!」
挙げ句にはこんなことまで言い出すが、中々婚約を白紙にしようとは言えずにいた。何故なら、カリブラとアスーナが婚約破棄となった要因がカリブラとソルティアによるドッキリだと知れ渡ってしまっていたからだ。当然、この二人の評判は悪いものになってしまい、婚約が白紙にでもなれば次の婚約が見つかるのは困難になるのは目に見える。下手をすれば一生独身……そのようなことを侯爵家の当主に言われてしまっていた。
(畜生! アスーナのせいでこんな性格悪い女と婚約してしまったのに、アスーナは僕に何もしてくれないなんて理不尽じゃないか! なんでこんなことに!)
(お姉様からカリブラ様の婚約を譲ってもらったけど……思ったよりも贅沢が続かないわ。カリブラ様も性格が悪いし、なんとかしてハラド様あたりに乗り換えないと……)
互いに自分のことだけを考えて相手のことを性格悪いと思うあたりはカリブラもソルティアも同じだった。今の自分たちの婚約のことを後悔し始めるしまつ。だからこそ、どうしても今の婚約を捨てて都合の良い相手と婚約したいと考え始めるのだ。
(どうにかしてアスーナと婚約し直さなければ、そのためにもソルティアをどうにかしないと……)
(お姉様からハラド様を奪わないと……そうだわ!)
「カリブラ様! 私いいこと閃きました!」
「はぁ!? いいことだと? また巫山戯たこと言い出すんだろ!」
「いいえ、カリブラ様にとっても良い提案ですわ!」
「何……?」
ソルティアが馬鹿だと思っていても、『カリブラにとっても良い』と聞けば自然と聞きたくなる。カリブラは訝しむようにソルティアの言葉に耳を傾けた。
「私達の婚約とお姉様とハラド様の婚約を交換するのですわ!」
「何? 婚約を交換だと?」
「そうです! カリブラ様が苛立つのはお姉様に未練があるからでしょう。それなのにハラド様に取られてしまったから気に入らない。だからこそ心が荒れているのですわ」
「ん? あ、ああ……」
ほとんどお前のせいだけどな……と心の中で思うカリブラだったが、アスーナに未練があるというのもあながち間違いではない。アスーナなら我儘に振る舞わないのだから。
「そこでお姉様とハラド様と話し合って、カリブラ様とお姉様の婚約を戻して、私とハラド様と新たに婚約を結べば良いのですの!」
「!」
「私、ハラド様なら良いなって思いますの! 言ってはなんですけどお金持ちそうですし!」
ソルティアの口にしていることはカリブラに対してもハラドに対しても失礼なことだったが、カリブラはそんなこと気にしないで『婚約の交換』について考えた。
(アスーナとの婚約を戻してソルティアをハラドに押し付ける。なんて名案なんだ! 僕の状況が良くなるうえに、いけ好かないハラドに厄介事をプレゼント……最高じゃないか!)
「そうだな! そうするべきだ! なんて名案なんだ!」
「そうでしょうそうでしょう! 明日すぐにお姉様にも提案して受け入れてもらいましょう!」
「ああ! 勿論だ!」
婚約の交換。そんなものは普通受け入れられるはずがないもの、マキナでも侯爵でもいいから相談すれば止めてもらえたのだが、勝手に盛り上がった二人は誰にも言わないままでいた。
――そして、結果的に二人の提案は拒絶された挙げ句、カリブラは大恥をかくこととなった。勿論、侯爵夫妻から叱られるのも当然だった。
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