53 / 71
おまけ3 第22・23話補足
しおりを挟む
アスーナとハラドの婚約が決まってから二人の婚約の話はあっという間に社交界でもアスーナ達が通う学園でも噂になる寸前、誰よりも早くその話を嗅ぎつけた令嬢がいた。
「なんですって! 遂にアスーナがカリブラと婚約破棄して開放されたですって!? しかも、その後であのハラド・グラファイト公爵令息と婚約!? 本当なのそれ!?」
それはアスーナの親友・バニア・モタス伯爵令嬢だ。貴族令嬢として社交界に広く精通し、あらゆる話題にかなりの早さで聞きつけることを得意とする。特に親友であるアスーナとその家族であるブラアラン伯爵家に関しては尋常ではなかった。
「はい、どうやらカリブラ令息のがソルティア嬢と共謀してドッキリを図ったようで、アスーナ嬢はそれをきっかけに婚約破棄したようです」
「あんの馬鹿男! 私の親友になんてことしてくれてんのよ! でも、それでグラファイト公爵令息と婚約なんてアスーナはなんて運がいいの!」
「……」
カリブラに憤って怒り狂ったかと思えば、アスーナが良縁に恵まれたことに喜ぶバニア。そんな護衛対象に対してなんとも言えない気分の『陰』、ガット・ン・カインデンであった。
◇
「婚約したのだからいいじゃない! 可愛い婚約者の私が侯爵家に移り住むことくらい!」
「何言ってるの! 嫁入り前の伯爵家の娘を居候させるなんて!」
「そうだぞソルティア! いくらなんでも前例がないし、常識がないと言われるだけだぞ!」
ソルティアは父ノゲムスと侯爵夫人マキナと言い争っていた。カリブラと婚約したソルティアは、それを理由に侯爵家に移り住みたいと言うのだが、ノゲムスとマキナは大反対したのだ。
(きっとソルティアは問題を起こすに決まっている!)
(この娘は贅沢がしたいだけ! 顔にそう書いてあるわ!)
「お父様は私が可愛いから侯爵家に行くのが嫌なのね!」
「違う! 迷惑をかけるだけなのが目に見えるからだ!」
「何が迷惑なのよ! 娘が侯爵家との縁を繋ぐ努力をしているのに邪魔しないで!」
自分の思い通りにならないことが気に入らないソルティアは癇癪を起こして泣き喚く。そんな状況に苛立ちを爆発させたカリブラも激怒した。
「我が侯爵家なら伯爵家ごときよりも裕福な生活ができるのに何故ソルティアの言葉を聞けないんだ! 伯爵風情が駄々をこねるな!」
「なっ!?」
「カリブラ!?」
ノゲムスは絶句した。カリブラの言葉は、仮にも婚約者の父親相手に口にしていい言葉ではない。ましてや、アスーナが婚約者だった頃からの付き合いだと言うのに。マキナも同じことを思ったのか、カリブラに対して唖然とした。
「我が家に住みたいだなんてアスーナよりも可愛げがあるじゃないか! どうやら伯爵は姉妹の教育を随分分けていたようだな。これが姉妹格差ってやつか? アスーナばかりかわいがっていたんだろう!」
「「はぁっ!?」」
こいつは何を言ってるんだ? ノゲムスとマキナは同時にそう思った。どちらかと言えばソルティアのほうが甘やかされている方なのに、カリブラは全く逆に捉えたのだ。
(なんてやつだ……どういう神経してるんだ? 人を見る目がなさすぎる。こんな奴をアスーナを婚約させてしまっていたのか? そして今はソルティアと……なんということだ)
(カリブラは一体どういう神経をしているの? 絶対逆でしょ。そんなことも分からないなんて……この子に当主は無理だわ)
カリブラの馬鹿さ加減に呆れ果てたノゲムスとマキナは、もう諦めることにした。この二人、特にカリブラの方は身をもって経験しなければ分からないと判断したのだ。
(ソルティアのわがままぶりを考えればすぐにボロが出るはず……そうなればこいつも分かるだろう。侯爵夫人は厳しいだろうからソルティアも最終的に後悔するやもしれん)
(カリブラは痛い目に遭わないとわからないわね……私達も覚悟しないと……)
「わかった……好きにしろ」
「わかったわ……覚悟なさい」
こうしてソルティアが侯爵家に移り住むことが決まった。このときのソルティアとカリブラは大喜びするのだが、最終的には後悔することとなった。
「なんですって! 遂にアスーナがカリブラと婚約破棄して開放されたですって!? しかも、その後であのハラド・グラファイト公爵令息と婚約!? 本当なのそれ!?」
それはアスーナの親友・バニア・モタス伯爵令嬢だ。貴族令嬢として社交界に広く精通し、あらゆる話題にかなりの早さで聞きつけることを得意とする。特に親友であるアスーナとその家族であるブラアラン伯爵家に関しては尋常ではなかった。
「はい、どうやらカリブラ令息のがソルティア嬢と共謀してドッキリを図ったようで、アスーナ嬢はそれをきっかけに婚約破棄したようです」
「あんの馬鹿男! 私の親友になんてことしてくれてんのよ! でも、それでグラファイト公爵令息と婚約なんてアスーナはなんて運がいいの!」
「……」
カリブラに憤って怒り狂ったかと思えば、アスーナが良縁に恵まれたことに喜ぶバニア。そんな護衛対象に対してなんとも言えない気分の『陰』、ガット・ン・カインデンであった。
◇
「婚約したのだからいいじゃない! 可愛い婚約者の私が侯爵家に移り住むことくらい!」
「何言ってるの! 嫁入り前の伯爵家の娘を居候させるなんて!」
「そうだぞソルティア! いくらなんでも前例がないし、常識がないと言われるだけだぞ!」
ソルティアは父ノゲムスと侯爵夫人マキナと言い争っていた。カリブラと婚約したソルティアは、それを理由に侯爵家に移り住みたいと言うのだが、ノゲムスとマキナは大反対したのだ。
(きっとソルティアは問題を起こすに決まっている!)
(この娘は贅沢がしたいだけ! 顔にそう書いてあるわ!)
「お父様は私が可愛いから侯爵家に行くのが嫌なのね!」
「違う! 迷惑をかけるだけなのが目に見えるからだ!」
「何が迷惑なのよ! 娘が侯爵家との縁を繋ぐ努力をしているのに邪魔しないで!」
自分の思い通りにならないことが気に入らないソルティアは癇癪を起こして泣き喚く。そんな状況に苛立ちを爆発させたカリブラも激怒した。
「我が侯爵家なら伯爵家ごときよりも裕福な生活ができるのに何故ソルティアの言葉を聞けないんだ! 伯爵風情が駄々をこねるな!」
「なっ!?」
「カリブラ!?」
ノゲムスは絶句した。カリブラの言葉は、仮にも婚約者の父親相手に口にしていい言葉ではない。ましてや、アスーナが婚約者だった頃からの付き合いだと言うのに。マキナも同じことを思ったのか、カリブラに対して唖然とした。
「我が家に住みたいだなんてアスーナよりも可愛げがあるじゃないか! どうやら伯爵は姉妹の教育を随分分けていたようだな。これが姉妹格差ってやつか? アスーナばかりかわいがっていたんだろう!」
「「はぁっ!?」」
こいつは何を言ってるんだ? ノゲムスとマキナは同時にそう思った。どちらかと言えばソルティアのほうが甘やかされている方なのに、カリブラは全く逆に捉えたのだ。
(なんてやつだ……どういう神経してるんだ? 人を見る目がなさすぎる。こんな奴をアスーナを婚約させてしまっていたのか? そして今はソルティアと……なんということだ)
(カリブラは一体どういう神経をしているの? 絶対逆でしょ。そんなことも分からないなんて……この子に当主は無理だわ)
カリブラの馬鹿さ加減に呆れ果てたノゲムスとマキナは、もう諦めることにした。この二人、特にカリブラの方は身をもって経験しなければ分からないと判断したのだ。
(ソルティアのわがままぶりを考えればすぐにボロが出るはず……そうなればこいつも分かるだろう。侯爵夫人は厳しいだろうからソルティアも最終的に後悔するやもしれん)
(カリブラは痛い目に遭わないとわからないわね……私達も覚悟しないと……)
「わかった……好きにしろ」
「わかったわ……覚悟なさい」
こうしてソルティアが侯爵家に移り住むことが決まった。このときのソルティアとカリブラは大喜びするのだが、最終的には後悔することとなった。
1
お気に入りに追加
2,297
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
婚約破棄された公爵令嬢は虐げられた国から出ていくことにしました~国から追い出されたのでよその国で竜騎士を目指します~
ヒンメル
ファンタジー
マグナス王国の公爵令嬢マチルダ・スチュアートは他国出身の母の容姿そっくりなためかこの国でうとまれ一人浮いた存在だった。
そんなマチルダが王家主催の夜会にて婚約者である王太子から婚約破棄を告げられ、国外退去を命じられる。
自分と同じ容姿を持つ者のいるであろう国に行けば、目立つこともなく、穏やかに暮らせるのではないかと思うのだった。
マチルダの母の祖国ドラガニアを目指す旅が今始まる――
※文章を書く練習をしています。誤字脱字や表現のおかしい所などがあったら優しく教えてやってください。
※第二章まで完結してます。現在、最終章について考え中です(第二章が考えていた話から離れてしまいました(^_^;))
書くスピードが亀より遅いので、お待たせしてすみませんm(__)m
※小説家になろう様にも投稿しています。

二人のお貴族様から見染められた平民の私。それと嫉妬を隠そうともしない令嬢。
田太 優
恋愛
試験の成績が優秀だったため学園への入学が認められた平民の私。
貴族が多く通う中、なぜかとある貴族の令息に見染められ婚約者になってしまった。
拒否することもできず、都合よく扱われても何も言えない関係。
でもそこに救いの手を差し伸べてくれた人がいた。

読心令嬢が地の底で吐露する真実
リコピン
恋愛
※改題しました
旧題『【修正版】ダンジョン☆サバイバル【リメイク投稿中】』
転移魔法の暴走で、自身を裏切った元婚約者達と共に地下ダンジョンへと飛ばされてしまったレジーナ。命の危機を救ってくれたのは、訳ありの元英雄クロードだった。
元婚約者や婚約者を奪った相手、その仲間と共に地上を目指す中、それぞれが抱えていた「嘘」が徐々に明らかになり、レジーナの「秘密」も暴かれる。
生まれた関係の変化に、レジーナが選ぶ結末は―

裏庭係の私、いつの間にか偉い人に気に入られていたようです
ルーシャオ
恋愛
宮廷メイドのエイダは、先輩メイドに頼まれ王城裏庭を掃除した——のだが、それが悪かった。「一体全体何をしているのだ! お前はクビだ!」「すみません、すみません!」なんと貴重な薬草や香木があることを知らず、草むしりや剪定をしてしまったのだ。そこへ、薬師のデ・ヴァレスの取りなしのおかげで何とか「裏庭の管理人」として首が繋がった。そこからエイダは学び始め、薬草の知識を増やしていく。その真面目さを買われて、薬師のデ・ヴァレスを通じてリュドミラ王太后に面会することに。そして、お見合いを勧められるのである。一方で、エイダを嵌めた先輩メイドたちは——?


十分我慢しました。もう好きに生きていいですよね。
りまり
恋愛
三人兄弟にの末っ子に生まれた私は何かと年子の姉と比べられた。
やれ、姉の方が美人で気立てもいいだとか
勉強ばかりでかわいげがないだとか、本当にうんざりです。
ここは辺境伯領に隣接する男爵家でいつ魔物に襲われるかわからないので男女ともに剣術は必需品で当たり前のように習ったのね姉は野蛮だと習わなかった。
蝶よ花よ育てられた姉と仕来りにのっとりきちんと習った私でもすべて姉が優先だ。
そんな生活もううんざりです
今回好機が訪れた兄に変わり討伐隊に参加した時に辺境伯に気に入られ、辺境伯で働くことを赦された。
これを機に私はあの家族の元を去るつもりです。

その言葉はそのまま返されたもの
基本二度寝
恋愛
己の人生は既に決まっている。
親の望む令嬢を伴侶に迎え、子を成し、後継者を育てる。
ただそれだけのつまらぬ人生。
ならば、結婚までは好きに過ごしていいだろう?と、思った。
侯爵子息アリストには幼馴染がいる。
幼馴染が、出産に耐えられるほど身体が丈夫であったならアリストは彼女を伴侶にしたかった。
可愛らしく、淑やかな幼馴染が愛おしい。
それが叶うなら子がなくても、と思うのだが、父はそれを認めない。
父の選んだ伯爵令嬢が婚約者になった。
幼馴染のような愛らしさも、優しさもない。
平凡な容姿。口うるさい貴族令嬢。
うんざりだ。
幼馴染はずっと屋敷の中で育てられた為、外の事を知らない。
彼女のために、華やかな舞踏会を見せたかった。
比較的若い者があつまるような、気楽なものならば、多少の粗相も多目に見てもらえるだろう。
アリストは幼馴染のテイラーに己の色のドレスを贈り夜会に出席した。
まさか、自分のエスコートもなしにアリストの婚約者が参加しているとは露ほどにも思わず…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる