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最終話 会話
しおりを挟むカリブラの襲撃を返り討ちにしたり、侯爵家で暴れるソルティアを引き取ったり、慌ただしい一日が過ぎてから一週間が経過した。
「――結局、カリブラは廃嫡。そればかりか子爵にまで降格したゲムデス家の親戚の家に奉公のために送られた。つまり、めでたく厄介払いってやつね!」
「そういうことね。ゲムデス家はカリブラ様の弟君が継ぐことになるのだけど、きっと大変な思いをするでしょうね……」
「あの醜い最低男。最後まで迷惑を残したわけね~。ゲムデス子爵家お気の毒~」
「ソルティアも殴られたけど体に殴られた後が残ることが無さそうで良かったけど、心の傷は残るわね……」
「それに関しては同情するけど、それ以上に自業自得じゃない。むしろそれくらいの心の傷が残れば、大人しくなるんじゃないの? 修道院でね?」
「…………」
学園のすぐ近くの喫茶店でアスーナとバニアがカリブラとソルティアの結末について会話していた。カリブラもソルティアもアスーナ達とは離れて生きることになったことも。
「私の――ブラアラン伯爵家の屋敷に連れ戻されたソルティアは父にゲムデス家を訴えるように懇願した。それはいいんだけど、そのあとすぐに無茶な我儘を口にするものだから遂にお父様も怒ってソルティアの修道院送りを決意されたのよ」
「私としてはもっと早くそうするべきだったと思うんだけどね。あの穏やかな父君がよくご決断されたわね」
「どちらかというと義兄様の強い意見が後押ししたの。それ以前にゲムデス家からと学園から苦情がきていたし、お父様も当主として心を鬼にしたの」
「あ~。リボール様の方か~。流石は次期当主。影が薄くても今の当主よりもしっかりしてる~」
「もう、義兄様は影が薄いわけじゃないって言ってるでしょ。常識人でしっかりしてて模範的な貴族令息な人なのよ」
「とりたてて目立つものが無いのが残念だけどね」
「バニア、意地悪言わないでよ」
アスーナとバニアの会話は、いつの間にかアスーナの家族が話題になってしまった。それを聞きつけたハラドは面白そうに会話に混ざる。
「面白そうな話だけど、リボール殿は真面目でしっかりした人だ。目立ちにくい人ではあるが、近しくなれば尊敬できることも多かったよ」
「流石はハラド様です。よく分かっておりますわ」
「ああ、なにせ俺にとっても『義兄様』」なんだしな」
「このバカップルめ!」
アスーナとハラドは照れて、バニアが茶化す。3人で楽しく会話して笑いあった。この3人の友情はこれからも続く。アスーナとハラドが結婚して、バニアもいい出会いに恵まれて、幸せな日々を過ごすことになるのはまた次の話。
―おわり―
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