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第48話 妹の暴走
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あまりにも変わり果てた姿にアスーナは叫んだ。
「そ、ソルティア!? なんて格好してるの!?」
「お姉様! お姉様はずるいわ! カリブラ様を振って私に押し付けて、自分はハラド様と婚約して! カリブラ様となんか婚約した私の身にもなってよ! せっかく贅沢できると思ったのに屋敷の連中は口うるさくて挙げ句にはカリブラ様に殴られたのよ!」
癇癪を起こした子供の如く、ソルティアは喚き散らす。しかも、アスーナに対する怨嗟の声も交じり始める。
「ソルティア! 落ち着いて!」
「お姉様! 私もうカリブラ様と婚約破棄するからハラド様をちょうだいよ! お姉様はもう十分でしょ! 勝ち組に慣れたんだから私に譲ってくれてもいいじゃない!」
ソルティアは鬼の形相のままアスーナに迫ろうとする。そんなソルティアに危険性を感じたハラドが立ち塞がるように前に出る。
「そこまでだソルティア嬢! 妹とはいえ、今の君にはアスーナに近づいてほしくはない!」
「ハラド様!」
「――っ!」
ハラドがアスーナを庇うように立った。その姿を見せつけられたソルティアはワナワナと震え、泣きそうな顔になって叫んだ。
「何よ何よ何よーっ! なんでお姉様ばかり贔屓されるのよ! 学園じゃいつもいつもアスーナアスーナって称賛されて、比べられる私は馬鹿にされるばかり! 我儘だの欲深いだのって悪口ばかり! なんでお姉様にばかり目麗しい人たちが集まるのよーっ!」
「「……」」
アスーナもハラドも一瞬言葉に詰まる。確かにソルティアはアスーナに比べられることが多くて、極めて低い評価をされる。ただ、肝心のソルティアが勉強も努力もしないで遊んでばかりいるため、学園でのソルティアの評価は適切で正確なのだ。
しかし、そんなことを素直に言えばソルティアは逆上するだけだ。今はソルティアを落ち着かせることを優先すべきなのだ。
「そ、ソルティア、まずは話をしましょう。カリブラ様のことは、」
「うるさい! 私はもうお姉様なんか要らない! お姉様なんか死んじゃえ!」
ソルティアは憎悪を込めた血走った目でアスーナを睨みながら迫っていく。だが、当然ながらソルティアの思うようにはいくはずがない。
「なんとおぞましい……お嬢の妹君とは思えん。いや、たとえ妹君といえど容赦せん!」
「ああああ~!」
「撃土流我!」
「ぶげっ!」
アスーナを守るためにチャンバーラ王国の戦士グレン・バク・リュウケンが『陰』の責務を全うすべく、ソルティアを叩きのめしたのだ。
「そ、ソルティア!?」
「ご安心ください、お嬢。みねうちです。気を失うだけに留めましたので」
グレンはソルティアを担いで言う。そして、そのまま屋敷の外に出ていこうとする。
「妹君は暴れられぬように縛っておきますゆえ、侯爵家との話し合いなどはお嬢達に任せます」
「そうだな。ソルティアが迷惑かけたこともそうだがカリブラのこともある。そのことでじっくり話をしないとな」
「……そうですね。それではグレン、ソルティアをお願いします」
ソルティアをグレンに託したアスーナは物陰に隠れたマキナの方に視線を移す。ソルティアのこと学園でのカリブラのことを話し合わなければならないのだ。
「ああ、やっと開放され……え?」
マキナ、侯爵家にとっては気の毒な話になるのだが。
「そ、ソルティア!? なんて格好してるの!?」
「お姉様! お姉様はずるいわ! カリブラ様を振って私に押し付けて、自分はハラド様と婚約して! カリブラ様となんか婚約した私の身にもなってよ! せっかく贅沢できると思ったのに屋敷の連中は口うるさくて挙げ句にはカリブラ様に殴られたのよ!」
癇癪を起こした子供の如く、ソルティアは喚き散らす。しかも、アスーナに対する怨嗟の声も交じり始める。
「ソルティア! 落ち着いて!」
「お姉様! 私もうカリブラ様と婚約破棄するからハラド様をちょうだいよ! お姉様はもう十分でしょ! 勝ち組に慣れたんだから私に譲ってくれてもいいじゃない!」
ソルティアは鬼の形相のままアスーナに迫ろうとする。そんなソルティアに危険性を感じたハラドが立ち塞がるように前に出る。
「そこまでだソルティア嬢! 妹とはいえ、今の君にはアスーナに近づいてほしくはない!」
「ハラド様!」
「――っ!」
ハラドがアスーナを庇うように立った。その姿を見せつけられたソルティアはワナワナと震え、泣きそうな顔になって叫んだ。
「何よ何よ何よーっ! なんでお姉様ばかり贔屓されるのよ! 学園じゃいつもいつもアスーナアスーナって称賛されて、比べられる私は馬鹿にされるばかり! 我儘だの欲深いだのって悪口ばかり! なんでお姉様にばかり目麗しい人たちが集まるのよーっ!」
「「……」」
アスーナもハラドも一瞬言葉に詰まる。確かにソルティアはアスーナに比べられることが多くて、極めて低い評価をされる。ただ、肝心のソルティアが勉強も努力もしないで遊んでばかりいるため、学園でのソルティアの評価は適切で正確なのだ。
しかし、そんなことを素直に言えばソルティアは逆上するだけだ。今はソルティアを落ち着かせることを優先すべきなのだ。
「そ、ソルティア、まずは話をしましょう。カリブラ様のことは、」
「うるさい! 私はもうお姉様なんか要らない! お姉様なんか死んじゃえ!」
ソルティアは憎悪を込めた血走った目でアスーナを睨みながら迫っていく。だが、当然ながらソルティアの思うようにはいくはずがない。
「なんとおぞましい……お嬢の妹君とは思えん。いや、たとえ妹君といえど容赦せん!」
「ああああ~!」
「撃土流我!」
「ぶげっ!」
アスーナを守るためにチャンバーラ王国の戦士グレン・バク・リュウケンが『陰』の責務を全うすべく、ソルティアを叩きのめしたのだ。
「そ、ソルティア!?」
「ご安心ください、お嬢。みねうちです。気を失うだけに留めましたので」
グレンはソルティアを担いで言う。そして、そのまま屋敷の外に出ていこうとする。
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「そうだな。ソルティアが迷惑かけたこともそうだがカリブラのこともある。そのことでじっくり話をしないとな」
「……そうですね。それではグレン、ソルティアをお願いします」
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「ああ、やっと開放され……え?」
マキナ、侯爵家にとっては気の毒な話になるのだが。
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