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第43話 返り討ち
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「カリブラ・ゲムデス……ゲムデス侯爵家の汚点とも言うべき恥晒しとお見受けするでござる」
「は、恥!?」
「偉大どころか凡庸だろ? いやむしろ凡庸以下、無能、害悪と言われる方がふさわしい」
「ぼ、凡よ……無能!? 害悪!?」
「その通りですね。カリブラ様の家はともかく、カリブラ様ご自身はそう言われても仕方ないでしょう」
「そうよね~。侯爵家の子供だからといって偉いというわけじゃない~」
「……~~っ!?」
謎の二人組とアスーナとバニアにボロくそ言われるカリブラは再び激昂する。恐怖で冷めた頭が怒りで一気に沸騰した。何が何でも自分を嘲る者たちを滅茶苦茶にしてやるという思いでいっぱいになった。
「ええい、もうどうでもいい! お前らぁ! こいつらを殺せ!」
カリブラがヤケを起こして『殺せ』と叫ぶ。命じられた取り巻きたちは、密かに持っていたナイフを取り出して構える。本来生徒が凶器を持つことは学園で禁止されているのだが、彼らは万が一の時のために準備していたわけだ。ただ、ナイフを持っていない者もいたようで、保健室の備品を武器代わりにしてしまった。
「ふん、学園は生徒の武器の携帯は禁止のはずでござるよ?」
「そんなもので私達を殺せるはずもないんだが?」
「――殺せぇぇぇぇぇっ!」
もはや誰の声も聞こえんとばかりにカリブラは半狂乱に叫んだ。それを合図に取り巻きたちは一斉に飛びかかっていった。
「小童どもめ」
「雑魚が……!」
学生とはいえ多数で凶器を持って襲いかかればどうにでもできる。カリブラも取り巻きたちも思っていたが、そう上手くはいかなかった。
「壊電ソード・争!」
「撃土流我!」
二人組の男の方は剣を二本持って取り巻き二人をなぎ倒し、女の方は槍を回転させてあっという間に払い除けるように取り巻き二人を叩きつけてしまった。
「ああ、ドーラ、ルギリ! ひっ、ローボル、トテマ……!」
ほぼ瞬殺された取り巻き四人、彼らは少なくとも主に相当するカリブラよりも身体能力だけは高かったはずだった。それが瞬殺された……味方が全滅したカリブラは怒りすら失い、恐怖が増大していった。
「ひっ、ひいい! ぼ、僕に近寄るな! ぼ、僕に何かすればただじゃ済まないぞ!」
ただ、それでもプライドが無駄に高いカリブラはやはり虚勢を張り続ける。その場に味方がいないとなれば、その場にいない親に頼ろうとするのであった。
「僕はゲムデス侯爵家の嫡男なんだ! 王家に匹敵する権力を持った家で名門なんだ! 僕に何かあれば、父上と母上が黙っていないんだ! お前らもアスーナも酷い目に合うんだぞ! 謝るなら今のうち、」
「――なわけないだろ!」
「っ!?」
カリブラの声を遮ったのは、この日学園に登校していなかったと聞いていたハラドだった。しかも、どういうわけかカリブラのすぐ後ろに立っていたのだ。
「は、ハラド!? 何故ここに!?」
「何故? それは大切な婚約者に害虫が近づこうとしているから駆除するのは当然だろ?」
「が、害虫?」
「お前のことだよ。カリブラ・ゲムデス」
「っ!?」
「は、恥!?」
「偉大どころか凡庸だろ? いやむしろ凡庸以下、無能、害悪と言われる方がふさわしい」
「ぼ、凡よ……無能!? 害悪!?」
「その通りですね。カリブラ様の家はともかく、カリブラ様ご自身はそう言われても仕方ないでしょう」
「そうよね~。侯爵家の子供だからといって偉いというわけじゃない~」
「……~~っ!?」
謎の二人組とアスーナとバニアにボロくそ言われるカリブラは再び激昂する。恐怖で冷めた頭が怒りで一気に沸騰した。何が何でも自分を嘲る者たちを滅茶苦茶にしてやるという思いでいっぱいになった。
「ええい、もうどうでもいい! お前らぁ! こいつらを殺せ!」
カリブラがヤケを起こして『殺せ』と叫ぶ。命じられた取り巻きたちは、密かに持っていたナイフを取り出して構える。本来生徒が凶器を持つことは学園で禁止されているのだが、彼らは万が一の時のために準備していたわけだ。ただ、ナイフを持っていない者もいたようで、保健室の備品を武器代わりにしてしまった。
「ふん、学園は生徒の武器の携帯は禁止のはずでござるよ?」
「そんなもので私達を殺せるはずもないんだが?」
「――殺せぇぇぇぇぇっ!」
もはや誰の声も聞こえんとばかりにカリブラは半狂乱に叫んだ。それを合図に取り巻きたちは一斉に飛びかかっていった。
「小童どもめ」
「雑魚が……!」
学生とはいえ多数で凶器を持って襲いかかればどうにでもできる。カリブラも取り巻きたちも思っていたが、そう上手くはいかなかった。
「壊電ソード・争!」
「撃土流我!」
二人組の男の方は剣を二本持って取り巻き二人をなぎ倒し、女の方は槍を回転させてあっという間に払い除けるように取り巻き二人を叩きつけてしまった。
「ああ、ドーラ、ルギリ! ひっ、ローボル、トテマ……!」
ほぼ瞬殺された取り巻き四人、彼らは少なくとも主に相当するカリブラよりも身体能力だけは高かったはずだった。それが瞬殺された……味方が全滅したカリブラは怒りすら失い、恐怖が増大していった。
「ひっ、ひいい! ぼ、僕に近寄るな! ぼ、僕に何かすればただじゃ済まないぞ!」
ただ、それでもプライドが無駄に高いカリブラはやはり虚勢を張り続ける。その場に味方がいないとなれば、その場にいない親に頼ろうとするのであった。
「僕はゲムデス侯爵家の嫡男なんだ! 王家に匹敵する権力を持った家で名門なんだ! 僕に何かあれば、父上と母上が黙っていないんだ! お前らもアスーナも酷い目に合うんだぞ! 謝るなら今のうち、」
「――なわけないだろ!」
「っ!?」
カリブラの声を遮ったのは、この日学園に登校していなかったと聞いていたハラドだった。しかも、どういうわけかカリブラのすぐ後ろに立っていたのだ。
「は、ハラド!? 何故ここに!?」
「何故? それは大切な婚約者に害虫が近づこうとしているから駆除するのは当然だろ?」
「が、害虫?」
「お前のことだよ。カリブラ・ゲムデス」
「っ!?」
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