上 下
35 / 71

第35話 醜い言い争い

しおりを挟む
「さっきも言ったけどソルティア、お前は迷惑なんだ。お前が馬鹿みたいに金を使ったり屋敷のものを使って壊したりするせいで僕も両親も屋敷の使用人すらも苦労してんだよ。何度も何度も注意したり叱っても繰り返して馬鹿をやらかすお前なんてハラドの言う通りの女だ。価値が無いな」

「なんですって!? カリブラ様までそんなこと……!」

「事実だろうが! 大体お前が婚約者の交換なんて言い出したからその話に乗ったのにこのザマだろうがよ! お前のせいで僕までアスーナとハラドにコケにされる羽目になったんだろうが! あの時、お前を代わりに婚約者にしたのが間違いだったよ!」

「何よそれ! お姉様に振られて私を取ったのはカリブラ様じゃない! 私のせいじゃないわ!」

(婚約者の交換はソルティアの考えたことだったのね)

(それにカリブラが乗った……どっちも馬鹿だ)


カリブラとソルティアは再び口論を始める。二人共、求めた相手から眼中に無いかのようにコケにされた苛立ちを互いにぶつけ合うかのように罵り合いだした。


「お前本当にあのアスーナの妹なのかよ!? それを疑うほど馬鹿すぎんだよ! 侯爵家の金はお前のものじゃないって何度言えば分かるんだ!」

「婚約者だから私のものでもいいじゃないって言ってるでしょ! そっちこそ私に最低なイタズラだのドッキリを仕掛けないでよ! その度に怒らなきゃいけない私の身にもなりなさいよ!」

「はぁ!? アスーナしてきたものよりはましだろうが! たかが虫やカエルを投げつけたくらいで怒り狂うなよ! そのくせに僕や母上に酒やスープをかけるガキよりもたちが悪いイタズラなんかしやがって! あれはもうドッキリでもない!」

「私、虫やカエルなんか大嫌いなのよ! そもそもカリブラ様がお姉様にしたドッキリを私もしてみただけって言ってるでしょ!」

「知るかそんなの! ガキの頃のことを真似るな!」


貴族の令息令嬢ともあろうに、かなり低レベルな罵り合い。しかも、何やらアスーナを苦しめたイタズラやドッキリの内容まで飛び交う始末。聞いている側からすれば最悪の内容だ。


「何なんだこの二人……」

「まさか、ここまでとは……」


当事者であるアスーナは改めて恥じた。カリブラが元婚約者であり、ソルティアが実の妹であることをこの時ほど恥ずかしく思ったことはないだろう。そんなアスーナにハラドは改めて同情するのであった。


「もう行こうアスーナ。わざわざ止める必要も無さそうだし、何より見るに耐えん」

「そうですね……私ももう疲れました。付き合いきれません」


アスーナとハラドがほっといて去ってしまおうとした直後、こんなタイミングでアスーナに向かってくる令嬢が現れるのであった。


「アスーナ、おはよう!」

「――っ! バニア、おはよう……」


アスーナの親友バニアだった。タイミングの悪い時に来たとアスーナは思ったが、バニアの方はカリブラとソルティアが醜い言い争いをしている光景が目に入った瞬間、ちょうどいい時に来たと思った。

顔をニヤリと悪意を込めて歪めるほどに。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

これでも全属性持ちのチートですが、兄弟からお前など不要だと言われたので冒険者になります。

りまり
恋愛
私の名前はエルムと言います。 伯爵家の長女なのですが……家はかなり落ちぶれています。 それを私が持ち直すのに頑張り、贅沢できるまでになったのに私はいらないから出て行けと言われたので出ていきます。 でも知りませんよ。 私がいるからこの贅沢ができるんですからね!!!!!!

【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?

ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。 卒業3か月前の事です。 卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。 もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。 カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。 でも大丈夫ですか? 婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。 ※ゆるゆる設定です ※軽い感じで読み流して下さい

逆恨みをした侯爵令嬢たちの末路~せっかくのチャンスをふいにした結果~

柚木ゆず
恋愛
 王立ラーサンルズ学院の生徒会メンバーである、侯爵令嬢パトリシアと侯爵令息ロベール。二人は同じく生徒会に籍を置く格下であり後輩のベルナデットが自分たちより支持されていることが許せず、ベルナデットが学院に居られなくなるよう徹底的に攻撃をすると宣告。調子に乗った罰としてたっぷり苦しめてやると、揃って口の端を吊り上げました。 「パトリシア様っ、ロベール様! おやめください!」  ですがそんな二人は、まだ知りません。  自分たちは、最初で最後のチャンスを逃してしまったことを。自分達は、最悪のタイミングで宣告してしまったということを――。

婚約破棄されましたが、お兄様がいるので大丈夫です

榎夜
恋愛
「お前との婚約を破棄する!」 あらまぁ...別に良いんですよ だって、貴方と婚約なんてしたくなかったですし。

奪われたものは、もう返さなくていいです

gacchi
恋愛
幼い頃、母親が公爵の後妻となったことで公爵令嬢となったクラリス。正式な養女とはいえ、先妻の娘である義姉のジュディットとは立場が違うことは理解していた。そのため、言われるがままにジュディットのわがままを叶えていたが、学園に入学するようになって本当にこれが正しいのか悩み始めていた。そして、その頃、双子である第一王子アレクシスと第二王子ラファエルの妃選びが始まる。どちらが王太子になるかは、その妃次第と言われていたが……

結婚式の日取りに変更はありません。

ひづき
恋愛
私の婚約者、ダニエル様。 私の専属侍女、リース。 2人が深い口付けをかわす姿を目撃した。 色々思うことはあるが、結婚式の日取りに変更はない。 2023/03/13 番外編追加

妹がいるからお前は用済みだ、と婚約破棄されたので、婚約の見直しをさせていただきます。

あお
恋愛
「やっと来たか、リリア。お前との婚約は破棄する。エリーゼがいれば、お前などいらない」 セシル・ベイリー侯爵令息は、リリアの家に居候しているエリーゼを片手に抱きながらそう告げた。 え? その子、うちの子じゃないけど大丈夫? いや。私が心配する事じゃないけど。 多分、ご愁傷様なことになるけど、頑張ってね。 伯爵令嬢のリリアはそんな風には思わなかったが、オーガス家に利はないとして婚約を破棄する事にした。 リリアに新しい恋は訪れるのか?! ※内容とテイストが違います

処理中です...