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第33話 明確なお断り、拒絶の言葉
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カリブラとソルティアは早口でまくしたてるように語りだす。まるでそれこそが正しいことかのように真剣な顔でアスーナとハラドを見つめながら語るのだが、聞いているアスーナとハラドには一方的に都合のいいことを言っているようにしか聞こえない。
(つまり、カリブラはアスーナのほうが手間がかからないどころか面倒事を押し付けられるから都合がいい……そういうことか)
(つまり、ソルティアは公爵家に目をつけたわけね。侯爵夫人が目を光らせていたから思ってような贅沢ができないことが嫌になった……そういうことね)
カリブラとソルティアの性格を理解していたアスーナとハラドは、すでにその思惑を見抜いていた。そして、そんな思惑に頷くわけにもいかない。
「どうだ? いや、答えはすでに出ているだろう。本当はアスーナだって僕とやり直したいはずだからな!」
「そうよねそうよね! 私ってばお姉様よりも可愛いからハラド様も喜ぶでしょ!」
どこか品のない笑みを浮かべるカリブラ、欲を込めた目をキラキラ輝かせるソルティア。二人の考えていることはもう目に見えて分かってしまうアスーナとハラドは一度顔を見合わせて頷きあった後、一緒に答えた。
「絶対に嫌だ」
「絶対に嫌です」
「「…………え?」」
カリブラとソルティアは返答を聞いてもすぐに頭に入らなかった。だが、アスーナとハラドの次の言葉で嫌でも頭が追いつくのであった。
「婚約の交換なんてお断りだ。アスーナが好きだからね」
「カリブラ様のことは嫌いなのでその提案は却下です」
「「――っ!?」」
明確なお断り、拒絶の言葉。それを聞いたカリブラとソルティアは唖然とした表情になる。そして信じられないとでも言うように酷く動揺した。
「ど、どうしてだよ!? 僕とアスーナは元婚約者同士じゃないか!」
「ど、どうしてですか!? ハラド様は私よりもお姉様がいいとでも言うのですか!?」
本気で訳が分からないという感じで叫ぶカリブラとソルティアだが、アスーナとハラドは呆れるしかなかった。どうして自分たちの関係で婚約者の交換が可能だと思えるのかが分からない、本気でそう思ったのだ。
だからこそ、アスーナは正直な気持ちを口にした。容赦ない批判の声も含めて。
「元婚約者だから婚約を結び直せるなどと何故思えるのです? 私はイタズラやドッキリを行って人に迷惑ばかりかけることしかしないカリブラ様のことが嫌いでした。何度も注意しても直さないから元々婚約を白紙にできるチャンスを狙っていたのですよ」
「な、何だって!?」
「貴方のような自己中心的で精神年齢が低くて底意地の悪い男性と婚約していた時間は私にとって一番苦痛な時間でした。一番嬉しいと思った時があるとすれば婚約が破棄されたことですね」
「お、お前……この僕のことをそんなふうに思っていたのかっ!」
カリブラは顔を真っ赤にして怒鳴る。今までアスーナに自分がどういう人間に思われていたのか聞かされたことはなかったが、まさか『自己中心的で精神年齢が低くて底意地の悪い男』などという馬鹿としか思えないような男だと認識されていたなんて知らなかったのだ。
(つまり、カリブラはアスーナのほうが手間がかからないどころか面倒事を押し付けられるから都合がいい……そういうことか)
(つまり、ソルティアは公爵家に目をつけたわけね。侯爵夫人が目を光らせていたから思ってような贅沢ができないことが嫌になった……そういうことね)
カリブラとソルティアの性格を理解していたアスーナとハラドは、すでにその思惑を見抜いていた。そして、そんな思惑に頷くわけにもいかない。
「どうだ? いや、答えはすでに出ているだろう。本当はアスーナだって僕とやり直したいはずだからな!」
「そうよねそうよね! 私ってばお姉様よりも可愛いからハラド様も喜ぶでしょ!」
どこか品のない笑みを浮かべるカリブラ、欲を込めた目をキラキラ輝かせるソルティア。二人の考えていることはもう目に見えて分かってしまうアスーナとハラドは一度顔を見合わせて頷きあった後、一緒に答えた。
「絶対に嫌だ」
「絶対に嫌です」
「「…………え?」」
カリブラとソルティアは返答を聞いてもすぐに頭に入らなかった。だが、アスーナとハラドの次の言葉で嫌でも頭が追いつくのであった。
「婚約の交換なんてお断りだ。アスーナが好きだからね」
「カリブラ様のことは嫌いなのでその提案は却下です」
「「――っ!?」」
明確なお断り、拒絶の言葉。それを聞いたカリブラとソルティアは唖然とした表情になる。そして信じられないとでも言うように酷く動揺した。
「ど、どうしてだよ!? 僕とアスーナは元婚約者同士じゃないか!」
「ど、どうしてですか!? ハラド様は私よりもお姉様がいいとでも言うのですか!?」
本気で訳が分からないという感じで叫ぶカリブラとソルティアだが、アスーナとハラドは呆れるしかなかった。どうして自分たちの関係で婚約者の交換が可能だと思えるのかが分からない、本気でそう思ったのだ。
だからこそ、アスーナは正直な気持ちを口にした。容赦ない批判の声も含めて。
「元婚約者だから婚約を結び直せるなどと何故思えるのです? 私はイタズラやドッキリを行って人に迷惑ばかりかけることしかしないカリブラ様のことが嫌いでした。何度も注意しても直さないから元々婚約を白紙にできるチャンスを狙っていたのですよ」
「な、何だって!?」
「貴方のような自己中心的で精神年齢が低くて底意地の悪い男性と婚約していた時間は私にとって一番苦痛な時間でした。一番嬉しいと思った時があるとすれば婚約が破棄されたことですね」
「お、お前……この僕のことをそんなふうに思っていたのかっ!」
カリブラは顔を真っ赤にして怒鳴る。今までアスーナに自分がどういう人間に思われていたのか聞かされたことはなかったが、まさか『自己中心的で精神年齢が低くて底意地の悪い男』などという馬鹿としか思えないような男だと認識されていたなんて知らなかったのだ。
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