上 下
33 / 71

第33話 明確なお断り、拒絶の言葉

しおりを挟む
カリブラとソルティアは早口でまくしたてるように語りだす。まるでそれこそが正しいことかのように真剣な顔でアスーナとハラドを見つめながら語るのだが、聞いているアスーナとハラドには一方的に都合のいいことを言っているようにしか聞こえない。


(つまり、カリブラはアスーナのほうが手間がかからないどころか面倒事を押し付けられるから都合がいい……そういうことか)

(つまり、ソルティアは公爵家に目をつけたわけね。侯爵夫人が目を光らせていたから思ってような贅沢ができないことが嫌になった……そういうことね)


カリブラとソルティアの性格を理解していたアスーナとハラドは、すでにその思惑を見抜いていた。そして、そんな思惑に頷くわけにもいかない。


「どうだ? いや、答えはすでに出ているだろう。本当はアスーナだって僕とやり直したいはずだからな!」

「そうよねそうよね! 私ってばお姉様よりも可愛いからハラド様も喜ぶでしょ!」


どこか品のない笑みを浮かべるカリブラ、欲を込めた目をキラキラ輝かせるソルティア。二人の考えていることはもう目に見えて分かってしまうアスーナとハラドは一度顔を見合わせて頷きあった後、一緒に答えた。


「絶対に嫌だ」

「絶対に嫌です」

「「…………え?」」


カリブラとソルティアは返答を聞いてもすぐに頭に入らなかった。だが、アスーナとハラドの次の言葉で嫌でも頭が追いつくのであった。


「婚約の交換なんてお断りだ。アスーナが好きだからね」

「カリブラ様のことは嫌いなのでその提案は却下です」

「「――っ!?」」


明確なお断り、拒絶の言葉。それを聞いたカリブラとソルティアは唖然とした表情になる。そして信じられないとでも言うように酷く動揺した。


「ど、どうしてだよ!? 僕とアスーナは元婚約者同士じゃないか!」

「ど、どうしてですか!? ハラド様は私よりもお姉様がいいとでも言うのですか!?」


本気で訳が分からないという感じで叫ぶカリブラとソルティアだが、アスーナとハラドは呆れるしかなかった。どうして自分たちの関係で婚約者の交換が可能だと思えるのかが分からない、本気でそう思ったのだ。

だからこそ、アスーナは正直な気持ちを口にした。容赦ない批判の声も含めて。


「元婚約者だから婚約を結び直せるなどと何故思えるのです? 私はイタズラやドッキリを行って人に迷惑ばかりかけることしかしないカリブラ様のことが嫌いでした。何度も注意しても直さないから元々婚約を白紙にできるチャンスを狙っていたのですよ」

「な、何だって!?」

「貴方のような自己中心的で精神年齢が低くて底意地の悪い男性と婚約していた時間は私にとって一番苦痛な時間でした。一番嬉しいと思った時があるとすれば婚約が破棄されたことですね」

「お、お前……この僕のことをそんなふうに思っていたのかっ!」


カリブラは顔を真っ赤にして怒鳴る。今までアスーナに自分がどういう人間に思われていたのか聞かされたことはなかったが、まさか『自己中心的で精神年齢が低くて底意地の悪い男』などという馬鹿としか思えないような男だと認識されていたなんて知らなかったのだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

これでも全属性持ちのチートですが、兄弟からお前など不要だと言われたので冒険者になります。

りまり
恋愛
私の名前はエルムと言います。 伯爵家の長女なのですが……家はかなり落ちぶれています。 それを私が持ち直すのに頑張り、贅沢できるまでになったのに私はいらないから出て行けと言われたので出ていきます。 でも知りませんよ。 私がいるからこの贅沢ができるんですからね!!!!!!

逆恨みをした侯爵令嬢たちの末路~せっかくのチャンスをふいにした結果~

柚木ゆず
恋愛
 王立ラーサンルズ学院の生徒会メンバーである、侯爵令嬢パトリシアと侯爵令息ロベール。二人は同じく生徒会に籍を置く格下であり後輩のベルナデットが自分たちより支持されていることが許せず、ベルナデットが学院に居られなくなるよう徹底的に攻撃をすると宣告。調子に乗った罰としてたっぷり苦しめてやると、揃って口の端を吊り上げました。 「パトリシア様っ、ロベール様! おやめください!」  ですがそんな二人は、まだ知りません。  自分たちは、最初で最後のチャンスを逃してしまったことを。自分達は、最悪のタイミングで宣告してしまったということを――。

【完結】え?今になって婚約破棄ですか?私は構いませんが大丈夫ですか?

ゆうぎり
恋愛
カリンは幼少期からの婚約者オリバーに学園で婚約破棄されました。 卒業3か月前の事です。 卒業後すぐの結婚予定で、既に招待状も出し終わり済みです。 もちろんその場で受け入れましたよ。一向に構いません。 カリンはずっと婚約解消を願っていましたから。 でも大丈夫ですか? 婚約破棄したのなら既に他人。迷惑だけはかけないで下さいね。 ※ゆるゆる設定です ※軽い感じで読み流して下さい

もう我慢する気はないので出て行きます〜陰から私が国を支えていた事実を彼らは知らない〜

おしゃれスナイプ
恋愛
公爵令嬢として生を受けたセフィリア・アインベルクは己の前世の記憶を持った稀有な存在であった。 それは『精霊姫』と呼ばれた前世の記憶。 精霊と意思疎通の出来る唯一の存在であったが故に、かつての私は精霊の力を借りて国を加護する役目を負っていた。 だからこそ、人知れず私は精霊の力を借りて今生も『精霊姫』としての役目を果たしていたのだが————

処刑直前ですが得意の転移魔法で離脱します~私に罪を被せた公爵令嬢は絶対許しませんので~

インバーターエアコン
恋愛
 王宮で働く少女ナナ。王様の誕生日パーティーに普段通りに給仕をしていた彼女だったが、突然第一王子の暗殺未遂事件が起きる。   ナナは最初、それを他人事のように見ていたが……。 「この女よ! 王子を殺そうと毒を盛ったのは!」 「はい?」  叫んだのは第二王子の婚約者であるビリアだった。  王位を巡る争いに巻き込まれ、王子暗殺未遂の罪を着せられるナナだったが、相手が貴族でも、彼女はやられたままで終わる女ではなかった。  (私をドロドロした内争に巻き込んだ罪は贖ってもらいますので……)  得意の転移魔法でその場を離脱し反撃を始める。  相手が悪かったことに、ビリアは間もなく気付くこととなる。

奪われたものは、もう返さなくていいです

gacchi
恋愛
幼い頃、母親が公爵の後妻となったことで公爵令嬢となったクラリス。正式な養女とはいえ、先妻の娘である義姉のジュディットとは立場が違うことは理解していた。そのため、言われるがままにジュディットのわがままを叶えていたが、学園に入学するようになって本当にこれが正しいのか悩み始めていた。そして、その頃、双子である第一王子アレクシスと第二王子ラファエルの妃選びが始まる。どちらが王太子になるかは、その妃次第と言われていたが……

酷い扱いを受けていたと気付いたので黙って家を出たら、家族が大変なことになったみたいです

柚木ゆず
恋愛
 ――わたしは、家族に尽くすために生まれてきた存在――。  子爵家の次女ベネディクトは幼い頃から家族にそう思い込まされていて、父と母と姉の幸せのために身を削る日々を送っていました。  ですがひょんなことからベネディクトは『思い込まれている』と気付き、こんな場所に居てはいけないとコッソリお屋敷を去りました。  それによって、ベネディクトは幸せな人生を歩み始めることになり――反対に3人は、不幸に満ちた人生を歩み始めることとなるのでした。

処理中です...