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第30話 共に過ごす時間
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ハラドは唖然とした。アスーナが自身を過小評価していたことは薄々感じてはいた。だが、自身の顔を『平々凡々とした顔でろくに特徴もない』と真顔で言うとは思わなかった。
(アスーナは美人だ。例えるなら、可愛さと綺麗さを併せ持つという感じだ。それなのに肝心の本人が……)
「アスーナ……君は自分のことを過小評価し過ぎだ。そうだ、カリブラとはもう婚約破棄しているんだから気分転換も兼ねて髪を伸ばしてみたらどうだい?」
「そうですね。カリブラ様に無理やり切られた髪をもう一度長くするのもいいかもしれませんね。私にロングヘアが似合うかはわかりませんけど」
「いや、絶対似合うって!」
寂しそうに自分の髪を触るアスーナを見て、ハラドもつられるように悲しくなった。そして、それと同時にカリブラに内心激しい怒りを燃やす。
(婚約破棄した後でも悪い影響をここまで……カリブラめ、俺でも婚約者としてあるまじきことしかしていないと分かるぞ……なんであんな奴が嫡男なんだ?)
「アスーナ、カリブラのような悪すぎる意味で個性の強い男のことを忘れることが容易ではないことはよく分かる。だけど、やつのことは危険分子に過ぎないと思ってほしい」
「大丈夫です。それは私が誰よりもわかっています」
「それもそうだが……ちょっとわかりにくいけど、今は男のことは俺だけを見てほしいんだ。語彙力ってやつが足りなくて御免」
「なんとなく分かりました。ハラド様を頼ればいいのですね」
「ちょっと違……わなくもないかな? まあ、そんなところかな」
アスーナのちょっと違う解釈を聞いて苦笑いするハラドだが、頼ってくれるのならばそれもいいとして良しとした。
「昨日のことがあったから王太子殿下も『婚約者とイチャイチャしていけ』と言われたんだ。つまり、明日から学園で過ごす時間が増えるんだ」
「え? それも私のためですか?」
「当然だよ。むしろそれくらいしないと不味いとよく分かったからね。カリブラと君の妹が何かしてきても俺が自分自身で守りたいし」
「『陰』の方が、」
「いるけど、やっぱり俺も男だしさ。格好いいとこ見せたいんだよ」
「なるほど、カリブラ様とは逆の考え方なんですね」
「カリブラはどうか知らないけど、俺は責任感があるって思われたいからね」
カリブラとは逆の考え方、そう言われてハラドは顔に出さないが呆れてしまった。
(カリブラは侯爵令息のくせに適当すぎるようだな。なんなんだあいつは?)
「ハラドお坊っちゃま! お料理ができました!」
「ああ、ガモンバ料理長。すぐ行く」
ガモンバと呼ばれた料理人の呼ぶ声が聞こえて来たのでハラドは会話を切り上げた。
「アスーナ、話は食事の後にしよう。ガモンバには無理を言っていつもより豪華な料理を作ってもらったんだ」
「そうなのですか! それは楽しみですわね」
二人はガモンバという料理長が待つ食堂に向かう。そして二人は向かった先の食堂で、スキンヘッドの無精髭の料理人に豪華な料理の丁寧な説明を聞きながら、美味しい料理を口にするのであった。
(アスーナは美人だ。例えるなら、可愛さと綺麗さを併せ持つという感じだ。それなのに肝心の本人が……)
「アスーナ……君は自分のことを過小評価し過ぎだ。そうだ、カリブラとはもう婚約破棄しているんだから気分転換も兼ねて髪を伸ばしてみたらどうだい?」
「そうですね。カリブラ様に無理やり切られた髪をもう一度長くするのもいいかもしれませんね。私にロングヘアが似合うかはわかりませんけど」
「いや、絶対似合うって!」
寂しそうに自分の髪を触るアスーナを見て、ハラドもつられるように悲しくなった。そして、それと同時にカリブラに内心激しい怒りを燃やす。
(婚約破棄した後でも悪い影響をここまで……カリブラめ、俺でも婚約者としてあるまじきことしかしていないと分かるぞ……なんであんな奴が嫡男なんだ?)
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「そうなのですか! それは楽しみですわね」
二人はガモンバという料理長が待つ食堂に向かう。そして二人は向かった先の食堂で、スキンヘッドの無精髭の料理人に豪華な料理の丁寧な説明を聞きながら、美味しい料理を口にするのであった。
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