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第22話 親友との会話
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アスーナとハラドの婚約が決まってから数日、二人の婚約の話はあっという間に社交界でもアスーナ達が通う学園でも噂になっていた。アスーナとハラドは婚約者同士で仲良くなり、その関係は社交界でも学園でも評判になった。
同じ学園で同じクラスというだけであまり接点のなかった二人、幼馴染だったとか昔甘い出会いがあったわけでもないのに急にくっついた理由を誰もが知りたい。それはアスーナの親友もそうだった。
「――そういう事があって私の婚約が決まったの!」
「そ、それほどのことが一日で決まるってすごいわね……」
オレンジ色の長い髪のポニーテールで金色の瞳の大人びた顔立ちの令嬢は、アスーナからハラドとの婚約に関する詳しい事情を聞いて驚きながら笑みを浮かべていた。彼女はアスーナの親友・バニア・モタス伯爵令嬢だ。
「これはもうおめでとうとしか言えないわね。3つの意味も込めて」
「3つ? どういうこと?」
アスーナはおめでとうと言われる理由は分かるが『3つ』というのが分からない。カリブラと婚約破棄できたこととハラドと婚約できたことで2つなら分かるのだが。
「1つ目にカリブラと婚約破棄できたこと、2つ目にソルティアをカリブラに譲れたこと、3つ目にハラド様と婚約できたことね」
「ああ! そういうことね」
ソルティアをカリブラに譲れたことは確かにアスーナにとって喜ばしいことだった。そのおかげで伯爵家の屋敷でソルティアの我儘に振り回されなくなったのだから当然だ。
(ソルティアの嫁ぎ先は難航すると思ってたから心配してたお父様の負担が減ったし……何よりもう伯爵家にいないのよね)
「そういうこと。ソルティアって今は侯爵家に住み込んでいるんでしょう?」
「え? 私そんなことまで言ったっけ?」
「ソルティア自身が学園で『カリブラ様と婚約した』とか『次期侯爵夫人よ』とか言って学園中に自慢してるでしょ。いくら婚約したからって動きが大胆すぎるのよね。前にもましてやりたい放題してるみたいだし」
「う……姉として情けないわ……」
アスーナとハラドの婚約の後すぐにカリブラとソルティアの婚約も決まった。長女と婚約破棄となったカリブラが次女と婚約することにノゲムスは反対した。勿論、侯爵夫人も反対していたらしいがカリブラとソルティアがあの日に大勢の貴族に吹聴し回ったために後に引けなくなったため仕方ないと言った形で婚約が決まったのだ。
「ソルティアの我儘で自分勝手な性格からして、侯爵家に住み込んでる理由なら予想ができるわ。どうせ伯爵家よりも上の立場の屋敷に住んで遊んで回りたいってとこかしらね。婚約をしたんだからいいじゃない、とか言ったんじゃないの?」
「……はい、そのとおりです」
アスーナは否定しない。むしろバニアの予想は的確だと感心するほどだった。
同じ学園で同じクラスというだけであまり接点のなかった二人、幼馴染だったとか昔甘い出会いがあったわけでもないのに急にくっついた理由を誰もが知りたい。それはアスーナの親友もそうだった。
「――そういう事があって私の婚約が決まったの!」
「そ、それほどのことが一日で決まるってすごいわね……」
オレンジ色の長い髪のポニーテールで金色の瞳の大人びた顔立ちの令嬢は、アスーナからハラドとの婚約に関する詳しい事情を聞いて驚きながら笑みを浮かべていた。彼女はアスーナの親友・バニア・モタス伯爵令嬢だ。
「これはもうおめでとうとしか言えないわね。3つの意味も込めて」
「3つ? どういうこと?」
アスーナはおめでとうと言われる理由は分かるが『3つ』というのが分からない。カリブラと婚約破棄できたこととハラドと婚約できたことで2つなら分かるのだが。
「1つ目にカリブラと婚約破棄できたこと、2つ目にソルティアをカリブラに譲れたこと、3つ目にハラド様と婚約できたことね」
「ああ! そういうことね」
ソルティアをカリブラに譲れたことは確かにアスーナにとって喜ばしいことだった。そのおかげで伯爵家の屋敷でソルティアの我儘に振り回されなくなったのだから当然だ。
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「え? 私そんなことまで言ったっけ?」
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「ソルティアの我儘で自分勝手な性格からして、侯爵家に住み込んでる理由なら予想ができるわ。どうせ伯爵家よりも上の立場の屋敷に住んで遊んで回りたいってとこかしらね。婚約をしたんだからいいじゃない、とか言ったんじゃないの?」
「……はい、そのとおりです」
アスーナは否定しない。むしろバニアの予想は的確だと感心するほどだった。
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