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第15話 侯爵夫人の絶叫
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カリブラの母はカリブラの人格を熟知していた。それ故にアスーナに強く期待していたのだが、肝心のカリブラのせいでそれも無駄になったわけだ。
(カリブラ様の母君……マキナ・ゲムデス侯爵夫人も頭を抱えるでしょう……もしくは、これを機にカリブラ様を嫡男から外される決断をするかも……まあ、私に飛び火が来ないことを願うしかないか……)
「それもそうか。俺達も親に報告しに行こう。まずは君の父君と話そうか」
「そうですね。お父様もさぞ驚かれるでしょう。説明の方は任せてください」
「頼もしいけど俺のことも頼ってほしいな」
「ふふっ、期待してますわ」
アスーナとハラドは仲良さそうに談笑しながら、カリブラとは正反対の方向に落ち着いた足取りで歩いていく。その先にはアスーナの父親と義兄がいる。
「アスーナ? その方は、公爵令息のハラド・グラファイト殿ではないか!」
「カリブラ殿は、どこへ行ったのだ?」
タイミングが良い時に、父親と義兄もアスーナとハラドを見つけていたようであり、この二人も先程のカリブラの怒鳴り声を耳にして気になって近くまで来ていたのだ。
「あれが君の父と兄か?」
「はい、ちょうどいい時に来てくれたみたいですね」
この後、アスーナは父と義兄にカリブラに質の悪いドッキリを仕掛けられてから婚約破棄に至るまでの過程を懇切丁寧に説明することになるのであった。もちろん、隣りにいるハラドとの婚約も含めて。
◇
「――こ、この馬鹿者ぉぉぉぉぉっ!」
「は、母上!?」
アスーナからの婚約破棄を受け入れてソルティアと婚約を改めて結ぶことにしたカリブラ。彼は母親と合流してアスーナとハラドとソルティアのことを包み隠さず話した。
その結果は、大目玉。目立たないように一室を借りて話し合いをしていたのだが、それが無駄になりそうなほどカリブラの母は絶叫した。
「カリブラ! お前は何をやっているのです!? 大事にすべき婚約者にドッキリなんて非常識だと思わないのですか!? しかも、それが理由で婚約破棄されたにもかかわらず偉そうにアスーナ嬢を侮辱!? 婚約破棄された!? 恥を知りなさい!」
「は、母上……」
マゼンダ色の髪に白髪が混じった長い髪をまとめた夫人が怒鳴るようにカリブラを叱る。この夫人こそがマキナ・ゲムデス侯爵夫人。カリブラがたじろぐ数少ない相手だ。流石のカリブラも母親にだけは頭が上がらないようであり、この時ばかりは弱腰になってしまう。ただ、反論されてばかりでもいられなかった。
「あ、アスーナが悪いのですよ! 僕はただのドッキリのつもりで、」
「いい年してドッキリを仕掛けるところから間違っているのです! そもそも婚約破棄の時点でただ事ではないでしょう! そんなことも分からないのですか!」
「そんな大げさな、」
「大げさにすることでしょう! お前は子供の頃に決めた婚約を何だと思っているのです! しかも、その直後にアスーナ嬢がグラファイト公爵の嫡男に見初められて新たな婚約を結ぶ事態とは……なんと頭の痛いこと……」
(カリブラ様の母君……マキナ・ゲムデス侯爵夫人も頭を抱えるでしょう……もしくは、これを機にカリブラ様を嫡男から外される決断をするかも……まあ、私に飛び火が来ないことを願うしかないか……)
「それもそうか。俺達も親に報告しに行こう。まずは君の父君と話そうか」
「そうですね。お父様もさぞ驚かれるでしょう。説明の方は任せてください」
「頼もしいけど俺のことも頼ってほしいな」
「ふふっ、期待してますわ」
アスーナとハラドは仲良さそうに談笑しながら、カリブラとは正反対の方向に落ち着いた足取りで歩いていく。その先にはアスーナの父親と義兄がいる。
「アスーナ? その方は、公爵令息のハラド・グラファイト殿ではないか!」
「カリブラ殿は、どこへ行ったのだ?」
タイミングが良い時に、父親と義兄もアスーナとハラドを見つけていたようであり、この二人も先程のカリブラの怒鳴り声を耳にして気になって近くまで来ていたのだ。
「あれが君の父と兄か?」
「はい、ちょうどいい時に来てくれたみたいですね」
この後、アスーナは父と義兄にカリブラに質の悪いドッキリを仕掛けられてから婚約破棄に至るまでの過程を懇切丁寧に説明することになるのであった。もちろん、隣りにいるハラドとの婚約も含めて。
◇
「――こ、この馬鹿者ぉぉぉぉぉっ!」
「は、母上!?」
アスーナからの婚約破棄を受け入れてソルティアと婚約を改めて結ぶことにしたカリブラ。彼は母親と合流してアスーナとハラドとソルティアのことを包み隠さず話した。
その結果は、大目玉。目立たないように一室を借りて話し合いをしていたのだが、それが無駄になりそうなほどカリブラの母は絶叫した。
「カリブラ! お前は何をやっているのです!? 大事にすべき婚約者にドッキリなんて非常識だと思わないのですか!? しかも、それが理由で婚約破棄されたにもかかわらず偉そうにアスーナ嬢を侮辱!? 婚約破棄された!? 恥を知りなさい!」
「は、母上……」
マゼンダ色の髪に白髪が混じった長い髪をまとめた夫人が怒鳴るようにカリブラを叱る。この夫人こそがマキナ・ゲムデス侯爵夫人。カリブラがたじろぐ数少ない相手だ。流石のカリブラも母親にだけは頭が上がらないようであり、この時ばかりは弱腰になってしまう。ただ、反論されてばかりでもいられなかった。
「あ、アスーナが悪いのですよ! 僕はただのドッキリのつもりで、」
「いい年してドッキリを仕掛けるところから間違っているのです! そもそも婚約破棄の時点でただ事ではないでしょう! そんなことも分からないのですか!」
「そんな大げさな、」
「大げさにすることでしょう! お前は子供の頃に決めた婚約を何だと思っているのです! しかも、その直後にアスーナ嬢がグラファイト公爵の嫡男に見初められて新たな婚約を結ぶ事態とは……なんと頭の痛いこと……」
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