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第14話 受け入れてくださって嬉しい
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「あら? 機嫌に関しては私は何度も何度も損ねてきましたが?」
「侮辱も何も本当のことを口にしただけなんだが?」
怒りを込めて叫んで自身のプライドからくる言葉を言い放つカリブラだが、アスーナもハラドも堪えることがないかの如く涼しい顔のままだ。それがカリブラの怒りを増長した。
「ああ言えばこう言う! もういい! アスーナ、お前の婚約破棄は受け入れてやるよ! 口うるさいお前なんか、こちらから願い下げだからな!」
「そうですか、受け入れてくださって嬉しい限りです」
「……っ!」
「お姉様……!」
カリブラが『婚約破棄を受け入れる』と口にした。それを確かに耳にしたアスーナは、本心から喜んでいると見せつけるように笑みを浮かべた。今まで見たことがないような笑みを見せられたカリブラは素直に驚き、そしてすぐにそっぽを向いた。こんなことでアスーナが喜ぶのかと思うと非常に不愉快だったからだ。
(僕との婚約が失くなって嬉しいなんて……なんて女だ!)
「……ちっ、もう本当にどうでもいい……僕はお前のお望み通りソルティアと婚約するよ。彼女のほうがお前よりも聞き分けがいいしな」
「そうでしょうね。気が合う者同士のほうが何かと都合がいいでしょう」
気が合う者同士。アスーナが口にしたその言葉には、皮肉な意味が込められているのだがカリブラは気づかない。もちろん、今の状況に頭が追いつけないソルティアも同じで黙って見守るばかりだ。
「……親には僕の方から話すから、そっちは僕との婚約を失ったという残念な報告をするんだな!」
「残念? 吉報の間違いだろ? アスーナ嬢は俺と婚約するし、むしろ良くない?」
「……っ!」
ハラドがアスーナと婚約する。それは公爵令息と伯爵令嬢の婚約だ。結果的にアスーナはより身分の高い令息と婚約する話になったという意味では確かに残念というわけではない。ハラドの口にした意味くらいはカリブラも嫌でもわかったようだ。
「うるさいな! もう何も聞きたくない! 行こうソルティア、まずはうちの親に報告しに行こう!」
「! は、はい……でも、お姉様が公爵令息とだなんて……」
「何だ?」
「い、いえ、何も……」
カリブラはズカズカとした足取りでアスーナとハラドの前から立ち去っていった。その後をソルティアは戸惑いながらもついていくが、どこか複雑そうである。
「……アスーナ嬢、元婚約者との話は終わったね」
「はい、向こうはいい気はしていないでしょうが……同情できませんけど」
「自業自得だよ。むしろもっと嫌な思いをすればよかったんだ。さっきの態度からして性格に難があることは分かる。俺に対しても態度に問題があるしね。あれで嫡男とはゲムデス侯爵家も大変だろう」
「それは、侯爵家次第でしょう。まあ、カリブラ様が当主になられるかは私達とは関わりないでしょうし」
アスーナは関わりないとは言いつつもカリブラが当主になれるはずはないと思っていた。それというのも、カリブラの母親も『カリブラは当主の器ではない』と口にしていたからだ。
「侮辱も何も本当のことを口にしただけなんだが?」
怒りを込めて叫んで自身のプライドからくる言葉を言い放つカリブラだが、アスーナもハラドも堪えることがないかの如く涼しい顔のままだ。それがカリブラの怒りを増長した。
「ああ言えばこう言う! もういい! アスーナ、お前の婚約破棄は受け入れてやるよ! 口うるさいお前なんか、こちらから願い下げだからな!」
「そうですか、受け入れてくださって嬉しい限りです」
「……っ!」
「お姉様……!」
カリブラが『婚約破棄を受け入れる』と口にした。それを確かに耳にしたアスーナは、本心から喜んでいると見せつけるように笑みを浮かべた。今まで見たことがないような笑みを見せられたカリブラは素直に驚き、そしてすぐにそっぽを向いた。こんなことでアスーナが喜ぶのかと思うと非常に不愉快だったからだ。
(僕との婚約が失くなって嬉しいなんて……なんて女だ!)
「……ちっ、もう本当にどうでもいい……僕はお前のお望み通りソルティアと婚約するよ。彼女のほうがお前よりも聞き分けがいいしな」
「そうでしょうね。気が合う者同士のほうが何かと都合がいいでしょう」
気が合う者同士。アスーナが口にしたその言葉には、皮肉な意味が込められているのだがカリブラは気づかない。もちろん、今の状況に頭が追いつけないソルティアも同じで黙って見守るばかりだ。
「……親には僕の方から話すから、そっちは僕との婚約を失ったという残念な報告をするんだな!」
「残念? 吉報の間違いだろ? アスーナ嬢は俺と婚約するし、むしろ良くない?」
「……っ!」
ハラドがアスーナと婚約する。それは公爵令息と伯爵令嬢の婚約だ。結果的にアスーナはより身分の高い令息と婚約する話になったという意味では確かに残念というわけではない。ハラドの口にした意味くらいはカリブラも嫌でもわかったようだ。
「うるさいな! もう何も聞きたくない! 行こうソルティア、まずはうちの親に報告しに行こう!」
「! は、はい……でも、お姉様が公爵令息とだなんて……」
「何だ?」
「い、いえ、何も……」
カリブラはズカズカとした足取りでアスーナとハラドの前から立ち去っていった。その後をソルティアは戸惑いながらもついていくが、どこか複雑そうである。
「……アスーナ嬢、元婚約者との話は終わったね」
「はい、向こうはいい気はしていないでしょうが……同情できませんけど」
「自業自得だよ。むしろもっと嫌な思いをすればよかったんだ。さっきの態度からして性格に難があることは分かる。俺に対しても態度に問題があるしね。あれで嫡男とはゲムデス侯爵家も大変だろう」
「それは、侯爵家次第でしょう。まあ、カリブラ様が当主になられるかは私達とは関わりないでしょうし」
アスーナは関わりないとは言いつつもカリブラが当主になれるはずはないと思っていた。それというのも、カリブラの母親も『カリブラは当主の器ではない』と口にしていたからだ。
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