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第11話 婚約破棄返し

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「もう、婚約破棄のドッキリはしないし反省してやるよ……」

「いいえ、許しません」

「は?」


仕方なさそうに謝ってくるカリブラの態度も含めて、この件に関してはアスーナは本気で心を鬼にした。自分の決意を――こちらからの婚約破棄を宣言する。


「カリブラ様、この場で私の方から貴方に婚約破棄をさせていただきます」

「アスーナ!?」

「お姉様!?」

「……ほう」


アスーナは堂々と婚約破棄を宣言した。婚約破棄を返したのだ。そんな彼女の言葉にカリブラとソルティアは驚き、隣ではハラドが興味深そうに見守っていた。


「こ、婚約破棄だと? は、ははは! アスーナ、お前がそんな面白いドッキリを口にするなんて思わなかったぞ!」 

「いいえ、ドッキリではありません。本気の婚約破棄です」

「な、何……!?」


アスーナがドッキリのつもりで口にしていると思ったカリブラは面白そうに笑い出すが、当のアスーナはバッサリ否定して遮る。


「そして、願わくば本当にソルティアと婚約していただければ幸いです」

「お、お姉様……?」

「ソルティア……どうも貴女のほうがカリブラ様と気が合うみたいだから、婚約の方は貴女に任せるわ。それが適材適所みたいだしね」

「ええええ!? いいの!?」


そして、ソルティアにカリブラとの婚約を任せるとまで言い出せば、ソルティアも驚かざるを得なかった。ただ、カリブラも次第に事態が飲み込めてきた。


「ソルティアに僕を任せるだと!? それじゃあまるでドッキリじゃなくて本気みたいじゃないか!」

「お、お姉様? 冗談も程々にしないと酷いですよ? あっ、もしかしてドッキリのことをまだすねてるの?」

「いいえ、本気の婚約破棄です。ドッキリではないと言っているでしょう」

「「ええ~~!?」」


決意に満ちた瞳、真剣な顔で二人を見据えるアスーナ。どこか鬼気迫る雰囲気を感じたカリブラもソルティアもやっと「本気かも……」と頭が理解した。だからこそ、二人は大きな反応を見せた。


「ふざけるな! お、お前ごときがこの僕に婚約破棄を突きつけるだと! 一体何様のつもりだ!」

「ほ、本気で私に譲ってくれるの!?」

(予想通りね……)


アスーナの予想通りの反応だ。ドッキリではなく、本当に婚約破棄を宣言されたカリブラは激昂し、ソルティアは嬉しそうであった。自分のことを棚に上げるカリブラと自分のことしか考えないソルティアに呆れるアスーナだが、呆れた様子を顔に出すことはない。呆れる以上に怒りを抱いているのだから。
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