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第10話 ふざけるな
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婚約破棄とは大きな意味を持つ行為だ。貴族同士で決めた婚約を一方に問題があるとして白紙にしてしまうということは、それだけで次の婚約を困難にする。安易に冗談だと言うのも、ましてやドッキリで行うなど常識的にあり得ない。
(ここまでふざけた男だったなんて……!)
それをお仕置きとサプライズなどという理由で、しかもドッキリとして行うなど貴族としての自覚と責任能力に著しく欠けているとしか考えられない。アスーナはこんな二人から離れたい、ましてやカリブラと結婚なんて絶対に嫌だと思った。
(婚約破棄がドッキリなら……本当にするしかない! こんな男とは本当にもう付き合いきれない!)
婚約破棄をこちらからしよう。アスーナが意を決してカリブラにそう宣言しようとした時、隣りにいたハラドが先に怒り込めて動いた。
「……おい、無責任すぎやしないか?」
「何?」
「婚約破棄なんて重大な発言をドッキリで口にするなんてあまりにも酷いぞ。しかも、本気にしたアスーナ嬢が馬鹿だとか言って笑うなんて貴族としても紳士としてもありえないな」
「なっ、なんだよ。僕は単なるドッキリのつもりで……」
たじろぐカリブラだが、ハラドは容赦しない。冷たい目でカリブラを見ながら非難する。
「ドッキリ? 貴族の令息ともあろうものがいい年してドッキリなんて稚拙すぎる。趣味としては幼い子供だな」
「お、幼い子供だと!? ふざけんな!」
子供と呼ばれて流石に食って掛かるカリブラだったが、ハラドはそのまま攻め続ける。
「ふざけてるのはそっちだろ? 貴族令嬢に対して振る舞うべきことでは断じて無い。自分の婚約者だから何をしても良いと思う傲慢さも見苦しい。もしも、アスーナがお前にも同じことをすれば笑って許すのか?」
「――はあ!? なんで僕がそんなことを!? 許すわけねえだろ!」
同じことをされれば……そんなことを想像すらしないで怒りを交えて怒鳴るカリブラ。自分に事を棚に上げて何を言っているのだろうと思われているとも気づかずに。
「『婚約者だから』、だろう? お前はそう思っていたからドッキリを仕掛けたんだろ?」
「そ、それは……!」
「そもそも、婚約者にドッキリをしたのはお前で、そんなお前がヘラヘラ笑うんだろ? それなのに、アスーナが同じことをしたら許さないだって? そんなのは理不尽すぎんだろ?」
「くっ……!」
カリブラは墓穴を掘られて言い淀む。確かに同じことをされたらと思うとカリブラも良い気はしない。むしろその性格上、逆上しそうだなとハラドもアスーナも容易に想像できる。
「どうなんだ?」
「わ、悪かったよ! 流石にやりすぎた、それでいいんだろ!」
「か、カリブラ様!?」
カリブラは渋々ながら自分の非を認める。ただ、ソルティアはそうでもないようだ。だが、そんな二人のことをアスーナはもう許す気はない。
(ここまでふざけた男だったなんて……!)
それをお仕置きとサプライズなどという理由で、しかもドッキリとして行うなど貴族としての自覚と責任能力に著しく欠けているとしか考えられない。アスーナはこんな二人から離れたい、ましてやカリブラと結婚なんて絶対に嫌だと思った。
(婚約破棄がドッキリなら……本当にするしかない! こんな男とは本当にもう付き合いきれない!)
婚約破棄をこちらからしよう。アスーナが意を決してカリブラにそう宣言しようとした時、隣りにいたハラドが先に怒り込めて動いた。
「……おい、無責任すぎやしないか?」
「何?」
「婚約破棄なんて重大な発言をドッキリで口にするなんてあまりにも酷いぞ。しかも、本気にしたアスーナ嬢が馬鹿だとか言って笑うなんて貴族としても紳士としてもありえないな」
「なっ、なんだよ。僕は単なるドッキリのつもりで……」
たじろぐカリブラだが、ハラドは容赦しない。冷たい目でカリブラを見ながら非難する。
「ドッキリ? 貴族の令息ともあろうものがいい年してドッキリなんて稚拙すぎる。趣味としては幼い子供だな」
「お、幼い子供だと!? ふざけんな!」
子供と呼ばれて流石に食って掛かるカリブラだったが、ハラドはそのまま攻め続ける。
「ふざけてるのはそっちだろ? 貴族令嬢に対して振る舞うべきことでは断じて無い。自分の婚約者だから何をしても良いと思う傲慢さも見苦しい。もしも、アスーナがお前にも同じことをすれば笑って許すのか?」
「――はあ!? なんで僕がそんなことを!? 許すわけねえだろ!」
同じことをされれば……そんなことを想像すらしないで怒りを交えて怒鳴るカリブラ。自分に事を棚に上げて何を言っているのだろうと思われているとも気づかずに。
「『婚約者だから』、だろう? お前はそう思っていたからドッキリを仕掛けたんだろ?」
「そ、それは……!」
「そもそも、婚約者にドッキリをしたのはお前で、そんなお前がヘラヘラ笑うんだろ? それなのに、アスーナが同じことをしたら許さないだって? そんなのは理不尽すぎんだろ?」
「くっ……!」
カリブラは墓穴を掘られて言い淀む。確かに同じことをされたらと思うとカリブラも良い気はしない。むしろその性格上、逆上しそうだなとハラドもアスーナも容易に想像できる。
「どうなんだ?」
「わ、悪かったよ! 流石にやりすぎた、それでいいんだろ!」
「か、カリブラ様!?」
カリブラは渋々ながら自分の非を認める。ただ、ソルティアはそうでもないようだ。だが、そんな二人のことをアスーナはもう許す気はない。
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