ドッキリで婚約破棄を宣言するようなクズ男はいりませんので我儘な妹とお幸せに! 〜後から後悔してももう遅いので寄って来ないで!〜

mimiaizu

文字の大きさ
上 下
10 / 71

第10話 ふざけるな

しおりを挟む
婚約破棄とは大きな意味を持つ行為だ。貴族同士で決めた婚約を一方に問題があるとして白紙にしてしまうということは、それだけで次の婚約を困難にする。安易に冗談だと言うのも、ましてやドッキリで行うなど常識的にあり得ない。


(ここまでふざけた男だったなんて……!)


それをお仕置きとサプライズなどという理由で、しかもドッキリとして行うなど貴族としての自覚と責任能力に著しく欠けているとしか考えられない。アスーナはこんな二人から離れたい、ましてやカリブラと結婚なんて絶対に嫌だと思った。


(婚約破棄がドッキリなら……本当にするしかない! こんな男とは本当にもう付き合いきれない!)


婚約破棄をこちらからしよう。アスーナが意を決してカリブラにそう宣言しようとした時、隣りにいたハラドが先に怒り込めて動いた。


「……おい、無責任すぎやしないか?」

「何?」

「婚約破棄なんて重大な発言をドッキリで口にするなんてあまりにも酷いぞ。しかも、本気にしたアスーナ嬢が馬鹿だとか言って笑うなんて貴族としても紳士としてもありえないな」

「なっ、なんだよ。僕は単なるドッキリのつもりで……」


たじろぐカリブラだが、ハラドは容赦しない。冷たい目でカリブラを見ながら非難する。


「ドッキリ? 貴族の令息ともあろうものがいい年してドッキリなんて稚拙すぎる。趣味としては幼い子供だな」

「お、幼い子供だと!? ふざけんな!」


子供と呼ばれて流石に食って掛かるカリブラだったが、ハラドはそのまま攻め続ける。


「ふざけてるのはそっちだろ? 貴族令嬢に対して振る舞うべきことでは断じて無い。自分の婚約者だから何をしても良いと思う傲慢さも見苦しい。もしも、アスーナがお前にも同じことをすれば笑って許すのか?」

「――はあ!? なんで僕がそんなことを!? 許すわけねえだろ!」


同じことをされれば……そんなことを想像すらしないで怒りを交えて怒鳴るカリブラ。自分に事を棚に上げて何を言っているのだろうと思われているとも気づかずに。


「『婚約者だから』、だろう? お前はそう思っていたからドッキリを仕掛けたんだろ?」

「そ、それは……!」

「そもそも、婚約者にドッキリをしたのはお前で、そんなお前がヘラヘラ笑うんだろ? それなのに、アスーナが同じことをしたら許さないだって? そんなのは理不尽すぎんだろ?」

「くっ……!」


カリブラは墓穴を掘られて言い淀む。確かに同じことをされたらと思うとカリブラも良い気はしない。むしろその性格上、逆上しそうだなとハラドもアスーナも容易に想像できる。


「どうなんだ?」

「わ、悪かったよ! 流石にやりすぎた、それでいいんだろ!」

「か、カリブラ様!?」


カリブラは渋々ながら自分の非を認める。ただ、ソルティアはそうでもないようだ。だが、そんな二人のことをアスーナはもう許す気はない。
しおりを挟む
感想 63

あなたにおすすめの小説

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

魅了の魔法を使っているのは義妹のほうでした・完

瀬名 翠
恋愛
”魅了の魔法”を使っている悪女として国外追放されるアンネリーゼ。実際は義妹・ビアンカのしわざであり、アンネリーゼは潔白であった。断罪後、親しくしていた、隣国・魔法王国出身の後輩に、声をかけられ、連れ去られ。 夢も叶えて恋も叶える、絶世の美女の話。 *五話でさくっと読めます。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

嘘をありがとう

七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」 おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。 「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」 妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。 「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

【完結】え、お嬢様が婚約破棄されたって本当ですか?

瑞紀
恋愛
「フェリシア・ボールドウィン。お前は王太子である俺の妃には相応しくない。よって婚約破棄する!」 婚約を公表する手はずの夜会で、突然婚約破棄された公爵令嬢、フェリシア。父公爵に勘当まで受け、絶体絶命の大ピンチ……のはずが、彼女はなぜか平然としている。 部屋まで押しかけてくる王太子(元婚約者)とその恋人。なぜか始まる和気あいあいとした会話。さらに、親子の縁を切ったはずの公爵夫妻まで現れて……。 フェリシアの執事(的存在)、デイヴィットの視点でお送りする、ラブコメディー。 ざまぁなしのハッピーエンド! ※8/6 16:10で完結しました。 ※HOTランキング(女性向け)52位,お気に入り登録 220↑,24hポイント4万↑ ありがとうございます。 ※お気に入り登録、感想も本当に嬉しいです。ありがとうございます。

一年で死ぬなら

朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。 理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。 そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。 そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。 一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・

父が転勤中に突如現れた継母子に婚約者も家も王家!?も乗っ取られそうになったので、屋敷ごとさよならすることにしました。どうぞご勝手に。

青の雀
恋愛
何でも欲しがり屋の自称病弱な義妹は、公爵家当主の座も王子様の婚約者も狙う。と似たような話になる予定。ちょっと、違うけど、発想は同じ。 公爵令嬢のジュリアスティは、幼い時から精霊の申し子で、聖女様ではないか?と噂があった令嬢。 父が長期出張中に、なぜか新しい後妻と連れ子の娘が転がり込んできたのだ。 そして、継母と義姉妹はやりたい放題をして、王子様からも婚約破棄されてしまいます。 3人がお出かけした隙に、屋根裏部屋に閉じ込められたジュリアスティは、精霊の手を借り、使用人と屋敷ごと家出を試みます。 長期出張中の父の赴任先に、無事着くと聖女覚醒して、他国の王子様と幸せになるという話ができれば、イイなぁと思って書き始めます。

王侯貴族、結婚相手の条件知ってますか?

時見 靜
恋愛
病弱な妹を虐げる悪女プリシア・セノン・リューゲルト、リューゲルト公爵家の至宝マリーアン・セノン・リューゲルト姉妹の評価は真っ二つに別れていたけど、王太子の婚約者に選ばれたのは姉だった。 どうして悪評に塗れた姉が選ばれたのか、、、 その理由は今夜の夜会にて

処理中です...