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王宮でのパーティー中、二人の男女が寄り添って、一番目立つ場所に立った。そして、宣言を始める。
「リリィ・プラチナム公爵令嬢! 私、王太子ことマグーマ・ツインローズ第一王子との婚約を破棄させてもらう! それと同時に、貴様をアノマ・メアナイト男爵令嬢をいじめた罪で訴える!」
貴族のパーティー中に高らかに婚約破棄を宣言するのは、ツインローズ王国第一皇子にして王太子マグーマ・ツインローズだ。その隣には婚約者ではなく、安物のドレスを着たアノマ・メアナイト男爵令嬢だった。
「はあ……婚約破棄ですか。なにゆえそのような話を、いまここで? このパーティーのあとではいけませんの?」
呆れ果てた様子で質問するのは、王太子の婚約者のはずの公爵令嬢リリィ・プラチナム。彼女は婚約破棄と宣言されたのにもかかわらず、余裕を通り越して面倒くさそうにしている。
「フン! しらじらしい! 素直に認めたらどうだ、この可愛く可憐なマリアナをいじめた罪を!」
「いじめた罪?」
そう、一番分からないのはそこである。いじめた罪で訴えるって、いったいなんなのだ。
そう思ったリリィは、思い当たる節など一切ないため、マグーマの言い分を聞いて答えることにした。
それから王太子と公爵令嬢の問答が始まった。
……………………。
……………………。
……………………。
……………………。
……………………。
「……言いたいことはそれだけですか?」
「「…………え~と」」
リリィは水の流れるように反論を返し続けると王太子マグーマは顔を青褪めて顔を下に向けて俯いた。そして、そのままの姿勢で答えた。
「…………さっき言ったことは取り消してくれ。わ、悪かった、言いすぎた。こ、これからは、もっと仲良くしていこうじゃないか…………」
先ほどと違ってあまりにも力がこもっていない言葉だった。マグーマの方から反論する材料が無いことに気付き、今度は自分の方が危うくなったことに気付いたからだ。
「マ、マグーマ様…………」
さっきまでマグーマに縋るように抱き着いていたアノマはいつの間にか離れていて、マグーマと同じように顔を青褪めていた。
「もういいみたいですね」
それに対してリリィは笑顔でやり返した。
「では、今度は私から婚約破棄させていただきますわ」
「な、何ーっ!?」
王太子マグーマは目を丸くして顔を上げた。
「理由はもちろん、貴方の浮気と国のお金を勝手に使い続けた罪が原因ですよ。お隣の可愛く可憐なご令嬢も逃れられると思わないでくださいね」
「「そ、そんなあああああぁぁぁぁぁ!」」
この後、マグーマとアノマの叫びが響いたという。
「リリィ・プラチナム公爵令嬢! 私、王太子ことマグーマ・ツインローズ第一王子との婚約を破棄させてもらう! それと同時に、貴様をアノマ・メアナイト男爵令嬢をいじめた罪で訴える!」
貴族のパーティー中に高らかに婚約破棄を宣言するのは、ツインローズ王国第一皇子にして王太子マグーマ・ツインローズだ。その隣には婚約者ではなく、安物のドレスを着たアノマ・メアナイト男爵令嬢だった。
「はあ……婚約破棄ですか。なにゆえそのような話を、いまここで? このパーティーのあとではいけませんの?」
呆れ果てた様子で質問するのは、王太子の婚約者のはずの公爵令嬢リリィ・プラチナム。彼女は婚約破棄と宣言されたのにもかかわらず、余裕を通り越して面倒くさそうにしている。
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「いじめた罪?」
そう、一番分からないのはそこである。いじめた罪で訴えるって、いったいなんなのだ。
そう思ったリリィは、思い当たる節など一切ないため、マグーマの言い分を聞いて答えることにした。
それから王太子と公爵令嬢の問答が始まった。
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「……言いたいことはそれだけですか?」
「「…………え~と」」
リリィは水の流れるように反論を返し続けると王太子マグーマは顔を青褪めて顔を下に向けて俯いた。そして、そのままの姿勢で答えた。
「…………さっき言ったことは取り消してくれ。わ、悪かった、言いすぎた。こ、これからは、もっと仲良くしていこうじゃないか…………」
先ほどと違ってあまりにも力がこもっていない言葉だった。マグーマの方から反論する材料が無いことに気付き、今度は自分の方が危うくなったことに気付いたからだ。
「マ、マグーマ様…………」
さっきまでマグーマに縋るように抱き着いていたアノマはいつの間にか離れていて、マグーマと同じように顔を青褪めていた。
「もういいみたいですね」
それに対してリリィは笑顔でやり返した。
「では、今度は私から婚約破棄させていただきますわ」
「な、何ーっ!?」
王太子マグーマは目を丸くして顔を上げた。
「理由はもちろん、貴方の浮気と国のお金を勝手に使い続けた罪が原因ですよ。お隣の可愛く可憐なご令嬢も逃れられると思わないでくださいね」
「「そ、そんなあああああぁぁぁぁぁ!」」
この後、マグーマとアノマの叫びが響いたという。
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