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最終章

魔法が使えない

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王城。

 王国の王都の中心に位置する王城。そこは今、暴徒が押し寄せていたが数か月前のように騎士団の手によって鎮圧……することはできないでいた。

「魔法が使えなくなったぞ! どういうことだ!」

「お前ら、またなんか企んでんだろ! どういうつもりだ!」

「生活に困るのよ! 何とかしてよ!」

「国王を出せよ! 説明しろ!」

「もう何なんだよ! どうにかしてくれよ!」

 暴徒の数は数百人、いや数千人を超えていた。これからさらに増える可能性もある。王国全体で『魔法が使えない』という状況が発生しているから、王城に押し寄せる者は遠くからも集まってくるだろう。





 その頃、王城内部では外の騒ぎを気にしつつも緊急会議が開かれていた。会議が行われる部屋では国の政を決める国の上層部が危機感をもって会議に臨んでいる。多くの重鎮が集まったが、その誰もがかなりの緊張感と焦りを顔に見せていた。それもそのはず、彼らもまた魔法を失い、それが意味することの重さを理解しているからだ。

「わが国で一体何が起こっているのですか!? 魔法が使えなくなるなど王国建国以来からそんな事態は起こったことは無かったはずです!」

「この状況は王都どころか王国全体に起こっているという声もありますぞ!」

「魔法に詳しい者に調べさせろ! この状況を一刻も早く解決するんだ!」

 会議の内容は現在進行形で『魔法が使えない状況』についてだが、会議が始まると同時に怒号が叫ばれる。焦るあまりほとんどのものが落ち着きを持てないでいるのだ。魔法を失ったことに対する不安に恐怖が彼らの心を蝕んでいると言ってもいい。そんな気持ちでいたらうまく会議などできるとは思えない。

 会議の中心になる二人の人物も同様の気持ちだった。白い靴髭と金色の王冠が特徴的な国王『フレデリック・アラドス』と大臣の『アベル・シュタイナー』だ。彼らも王国に起こった前例のない事態に頭を抱えていた。

「……こ、こんなことが起きるとは。……アベルよ、魔法協会の生き残りにこういうことに詳しい者がいなかったか?」

 絞り出すような声で国王は大臣に確認を取った。魔法協会とは数か月前に壊滅した魔法を研究する組織だ。組織の幹部は全員死亡、組織自体も無くなったが、その構成員の中に生き残った者も数名いたのだ。国王にとって縋るような思いが込められた言葉だったが、大臣は縦に振ることはしないで事実だけを告げた。

「……残念ながら魔法協会で生き残っている者は魔単の構成員が数人と言う程度です。そういう者たちの中にこんな事態に詳しそうな者はいそうにありません。国家機密はおろか会長が裏で行っていたことも知らないような雑用係のようなものだけで……」

ダンッ!

「それでもいいっ! そいつらでもいいから意見だけでも聞かせろ!」

「「「「「っ!?」」」」」

「この状況は何としてでも解決せねばならん! 魔法を失うなど王国の常識が失われたようなものだ! あってはならん、あってはならんのだ! どんなことをしてでも解決しなければ王国は終わりだ!」

 国王は机を力を込めて叩いて会議中に初めて怒鳴った。その気迫に押されて騒がしく論争していた他の重鎮たちも一旦止まった。

「は、はい! すぐに手配します!」

 国王の気迫に押されて、大臣はすぐに魔法協会の生き残りを呼びに行った。こういうことはもっと下位の者に任せるものだが今は時間と人手が足りない。何しろ、多くの兵士や騎士に暴徒の鎮圧を任せてしまっているからだ。面倒でも大臣自身が会議を抜けてでも行動するしかないのだ。

「……さて、会議を続けよう。皆の中でこの状況にたいする打開案は無いか?」

「「「「「…………」」」」」

 国王に気圧されて落ち着きを取り戻した者たち。その誰もが今度は中々口を開けない。下手なことを言って国王の怒りを買うようなことは避けたいというのもあるが、それ以上に本当に何も思いつかないのだ。ほとんどの者が会議で国王と同じ答えを求めていたため冷静になると口を閉ざすしかないのだ。

(ちっ、文句ばかり言いに来ただけなのか? 使えない連中ばかりだな)

 少し長く沈黙が続いた。苛立った国王がしびれを切らして声を張り上げようとしたその時、大臣がノックもしないで会議室に入ってきた。それも血相を青く変えた顔で。

「大変です! 帝国が攻めてきました!」

「な、何!?」

「「「「「っ!?」」」」」

 帝国が責めてきた。政に携わる立場だからこそ、国王を含め、それをここで聞いた誰もが目を丸くして驚くか顔を青褪めた。こんな時に他国に責められればどうなるか、その意味をよく理解できるからだ。

「す、すぐに迎撃にあたれ! 王城の兵士、王都中の兵士で動けるものを総動員するんだ!」
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