ローグ・ナイト ~復讐者の研究記録~

mimiaizu

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第6章 一週間編

五日目5

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 クロズクの死体暴走事件は数時間で終わった。首謀者とみられる男が倒されたことにより、動く死体たちは統率する者がいなくなったため、死人の動きが最初の時よりも鈍く弱くなって簡単に倒すことができた。四肢を斬って行動不能にして、更に念を入れて死体をローグの魔法で焼き尽くした。これで蘇ることはなくなった(この時も魔法の力に複雑な思いを抱かれていた)。

 倒れた男を逃げられないように縛り上げて、別室で尋問と拷問を行った。クロズクの目的が何だったのか、何故ここまでできたのか、どれほど犠牲にしてきたのか知るための行いだった。その結果、驚くべきことがいくつも伝わった。

 まず最初に驚いたのは、その男こそがクロズクのリーダー・ウルクスその人だったのだ。普段は影武者を用意して、自分は側近のふりをするために若い男に変装してきたのだという。万が一の時に備えていたらしい。

 更にこんなことも分かった。クロズク達は王国とも繋がりを持っていたのだ。自分たちの技術を磨くという理由で魔法のことをより深く知りたいと考えて、敵国と内通するようになったのだという。

 これを聞いた皇帝と重臣たちは頭を抱えた。その魔法に対抗するための組織だったはずが、王国と内通とは頭が痛くなるのも無理はない。しかし、頭を痛めている場合ではなかった。クロズクほどの組織が他国と繋がっているということは、帝国の内部情報が漏れてしまったことを意味していた。皇帝はすぐに新たな会議を始めることになってしまった。

 


 

帝城・会議室。

 クロズクの事件の夕方、緊急の会議が始まった。緊急にもかかわらず、前日と同じ重臣がすぐに集まったのは不幸中の幸いだった。

「……こ、皇帝陛下、それは真でしょうか」

 モッター辺境伯が震える声で口にするが、皇帝ははっきり答えた。

「残念ながら事実だ。我が国の内部情報は王国に漏れてしまったのだ。クロズクのリーダーが言ったのだ。間違いないだろう」
「で、出まかせという可能性は……っ!」
「ない。そんなことを口にする意味もない」
「そんな……」

 モッター辺境伯はそれ以上言えなくなった。いや、彼だけではない。重臣のほとんどが暗い雰囲気で俯いて沈黙jしているのだ。何しろ重要人物による国の内部情報漏洩だ。ここに居る全員が、その危機感を自覚している。戦争が起これば間違いなくこちらが不利になるのは避けられない。

 その沈黙を破るのは、やはり皇帝だった。

「皆、考えてることは分かるが俯いてる場合ではないぞ。この状況を打開するために我らは集まったのだからな」
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