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第6章 一週間編

五日目1

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「……そういうことになったか」
「ああ、それが兄上の処分だ」

 ローグとミーラが泊まっている客室でリオルは、アゼルに下された処遇について説明した。リオルの話によると、アゼルの下された処罰について、何人かの貴族は反論したが大多数が皇帝に賛成するか流れに任せるというスタンスを取ったため、最終的に皇帝が初めに口にした罰が決まったらしい。

「よくそんな罰で決まったな」
「そこは父上の徳の高さが決めたようなものだ。まあ、サーファのように何人かは渋々と言った感じだがな」

 リオルは思い出す。会議が終わった後、退席していく貴族の中に不満こそ口にしないが表情から不満そうにしていることがよく分かる者たちのことを。

(……私もダメもとで頼んだことだったけど、あんな結果になるなんてな)

 リオルは父である皇帝にアゼルの助命を頼んだのは、会議が始まれ前日のことだった。その時に言われたのは「生かすか殺すかは、この目で見て決めることだ」というだけだった。つまり、リオルの言葉を聞くよりアゼル本人を直接見て判断する。それだけだった。




 結果的に、リオルの望みは叶った。一緒に暮らすことは二度とできなくなる形で。



「……ローグ、それにミーラも。本当にありがとう」
「「!」」

 ローグとミーラに頭を下げて礼を言うリオルの態度に二人は驚いた。これまでのリオルの態度からしたら思いもよらなかったのだ。

「おいおい、大げさだぞ」
「そ、そうですよ。私達は、その……」
「何を言うんだ。お前たち二人のおかげで帝国の内乱は治まったと言っても同然だ。会議でも二人のことを大多数が認めてくれているし、おかげでお前たちの亡命も速やかに通ったんだ。近いうちに謁見の間に招かれて我が国に居住が許されることになるからそれれまで待っていてほしい」

 頭を上げたリオルは、ローグとミーラの亡命の話がうまくいったことを嬉しそうに語った。彼女にとって、ローグとミーラはもう味方ということらしい。初対面の時とは大違いだ。

(亡命の話。思ったより早く進んだものだな。この国の皇子があんなんだから後回しになって遅れると思ったんだが)

「良かったね、ローグ」
「ああ、よかったと言えばよかったが随分早く話が通ったな。もう少し遅れて決まると思ったけど……」

 ローグはどうしても気になったため、思ったことを口にしてみた。元敵国の出身なのだ。そんな者の亡命をすぐに通すのは急な話に聞こえるのだ。

「私もそう思ったが、今の王国の状況はお前が作ったようなものだろ? 敵国を混乱に陥れてくれた上に、我が国に助力してくれたのだ。当然と言えば当然じゃないか?」
「……そんなもんか。ん? 今の王国の現状って分かるのか?」
「ああ。王国に差し向けた間者はそのままだったから、私が追われる身になるまで仕事をしていてくれていたんだ。最後の報告だと、だいぶ落ち着いたらしいが反乱組織が出来上がったらしい」

 反乱組織の結成。初めて耳にした話だった。帝国の町でもそんなことを聞いたこともない。ローグとしてはいい情報をもらったものだ。

「そんなことになってんのか。情報提供感謝するよ」
「お前がしてくれたことに比べると大したことじゃないさ」
「王国も物騒になったね。あ、違った。元から悪い国だったっけ」

 ローグはもちろんミーラにも王国に対する情は無かった。この二人にとって祖国は最悪のイメージが定着しているからだ。
 
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