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第6章 一週間編
三日目4
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皇帝の私室。そこに入ることを許される者は皇帝とその家族、もしくは直属の家臣だけとされている。例外として、今の皇帝の状況のように医者を出入りさせることもあり得るが、今回はその例外ですらない。そのくらいはリオルも分かっているのだ。
それでも、病床の父親を救えるというのなら例外すら無視してしまえていた。本当にリオルは単純だとローグは思った。
(まあ、普段の彼女なら許さないんだろうが、幽閉中の兄と病床の父親のこともあって思い詰めてるんだろうな。それで判断が鈍ったから実現できたのかもしれないな)
「おい、本当に大丈夫なんだろうな」
「ああ、任せろ」
「こ、ここが、皇帝陛下の……!」
三人。それはリオル、ローグ、ミーラのことだ。リオルは、妹と騎士団長達にも言わないで独断で二人を病に伏する皇帝の部屋に連れてきたのだ。父親を治せるかもしれないというので連れてきてしまったのだ。
「……父上」
皇帝の顔は見るからに悪かった。意識がないまま眠り続ける父親の顔を見れば見るほど、リオルの心の中に悲しみが広がる。――もしや、死んでしまうのではないか。そう思えてならないほどに思い詰めている。
「よし、診てみるか。ミーラ、出番だ」
「え? 私!?」
「ローグではなくミーラが診るのか?」
突然、出番だと言われたミーラは驚いた。リオルもてっきりローグが診るものと思っていただけに意外そうな顔になった。
「そう驚くな。こいつの【解析魔法】はこういう時に役に立つ。人体の解析だってできるんだ。それがどういう意味か分かるだろ?」
「「??」」
「……実際にやってもらったほうが早いか。ミーラ、やってみろ」
言葉にしたことを理解しない二人に呆れてしまうローグは、説明が面倒だと思ったのでミーラに実行してもらった。
「や、やってみるね。【解析魔法】『解析』!」
「お、おお……」
「……(リオルも見たな、これでうまくいくかな)」
ミーラの両目が光る。これは、目に魔力が集中することで魔力の光が目からあふれているのだ。視覚が強化されて、その目に見える人の状態を『解析』できるのだ。
「どうだ?」
「……う~ん。毒がまだ残ってるみたい。それも体全体に。体の奥のほうにも結構あるかな。でも、命はつきかけてるってわけじゃないね。というよりも、この人――皇帝陛下はすっごく強い体の持ち主だから、今も寝てても毒に抗ってるんだね。でも、このままだと皇帝陛下は、ずっと一人で病気と寝ながら戦い続ける。……そんな風に見えるね」
それでも、病床の父親を救えるというのなら例外すら無視してしまえていた。本当にリオルは単純だとローグは思った。
(まあ、普段の彼女なら許さないんだろうが、幽閉中の兄と病床の父親のこともあって思い詰めてるんだろうな。それで判断が鈍ったから実現できたのかもしれないな)
「おい、本当に大丈夫なんだろうな」
「ああ、任せろ」
「こ、ここが、皇帝陛下の……!」
三人。それはリオル、ローグ、ミーラのことだ。リオルは、妹と騎士団長達にも言わないで独断で二人を病に伏する皇帝の部屋に連れてきたのだ。父親を治せるかもしれないというので連れてきてしまったのだ。
「……父上」
皇帝の顔は見るからに悪かった。意識がないまま眠り続ける父親の顔を見れば見るほど、リオルの心の中に悲しみが広がる。――もしや、死んでしまうのではないか。そう思えてならないほどに思い詰めている。
「よし、診てみるか。ミーラ、出番だ」
「え? 私!?」
「ローグではなくミーラが診るのか?」
突然、出番だと言われたミーラは驚いた。リオルもてっきりローグが診るものと思っていただけに意外そうな顔になった。
「そう驚くな。こいつの【解析魔法】はこういう時に役に立つ。人体の解析だってできるんだ。それがどういう意味か分かるだろ?」
「「??」」
「……実際にやってもらったほうが早いか。ミーラ、やってみろ」
言葉にしたことを理解しない二人に呆れてしまうローグは、説明が面倒だと思ったのでミーラに実行してもらった。
「や、やってみるね。【解析魔法】『解析』!」
「お、おお……」
「……(リオルも見たな、これでうまくいくかな)」
ミーラの両目が光る。これは、目に魔力が集中することで魔力の光が目からあふれているのだ。視覚が強化されて、その目に見える人の状態を『解析』できるのだ。
「どうだ?」
「……う~ん。毒がまだ残ってるみたい。それも体全体に。体の奥のほうにも結構あるかな。でも、命はつきかけてるってわけじゃないね。というよりも、この人――皇帝陛下はすっごく強い体の持ち主だから、今も寝てても毒に抗ってるんだね。でも、このままだと皇帝陛下は、ずっと一人で病気と寝ながら戦い続ける。……そんな風に見えるね」
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