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第5章 外国編

覚悟を決める2

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「兄上を、どうするつもりだ?」
「第一皇子をおかしくしてるのは背中にいる『何か』だろう。そいつをどうにかすれば皇子を止められるかもしれない」
「本当か! それなら兄上は……」
「ただ、助けられるかは分からないがな。背中のあれも対処できるかも微妙なところだしな」
「! ……そうか、助けられるかは、か……」

 ローグに正直な話をされてリオルは俯いた。リオルに嘘は通じない。つまり、残酷な事実もはっきり分かるということだ。少ししてから、リオルは顔を上げた。

「……分かった、私も戦おう」
「いいのか? 相手は兄だろ? 戦いの中で取り乱しそうな気がするんだけど、今までのあんたなら」

 ローグは茶化す感じで言うが、本当にそんな気もしていた。リオルと関わてきたのは短い間だが、それだけでも彼女が感情的になりやすい人物だということは分かっているのだ。ローグはそれを心配している。笑い事ではない。

「……妹に冷静になれと言われているから大丈夫……とは保証できないかな。私は短気な女だ、情に負けるかもしれん」
「自覚はあったのか。それでもやるつもりか?」
「無論だ。身内の問題だ。ましてや私達は皇族、責任を取る立場にいる。といっても、この状況だとお前の手を借りたほうがいいから偉そうには言えないが、な!」

ザンッ!

 リオルは剣を引き抜いた。そして、自身に迫っていた触手を切り裂いた。触手を切られたアゼルは寄声をあげる。

「ウオオオオウッ! ウオオオオウッ!」

「ローグ、背中のあれはお前に任せる。細長い尻尾のような物は私が相手しよう」
「そうだな、いいだろう。それでいこう」

 二人が役割分担しているとアゼルに変化が起こった。

「ウワオオオオオオオウッ!」

ニョキ ニョキ ニョキ ニョキ

「「「「「!?」」」」」

 何と触手が新たに生えてきたのだ。少なくともさっきの倍以上はある。リオルに切られて興奮したせいだろうか。

「ちっ、面倒なことになったな」
「ローグ、もし失敗したなら兄上を殺すことになっても構わない。その必要があれば言って欲しい。せめて私の手で引導を渡す」
「! ……そこまで覚悟するか」
「今の兄上を見ているとつらいからな」

 リオルの言うことはもっともだ。今のアゼルの顔色はさっきよりも悪そうに見える。口と目から血が流れ始め、息が荒くなっている。辛そうだ。

 リオルの覚悟を聞いたサーファをはじめとする兵士たちがリオルに進言する。
 
「リオル様、どうか我らにも協力させてください」
「! みんな……」
「リオル様一人に重荷を背負わせられません。その時がくれば我らも一緒に背負いますゆえ、一人で戦おうとしないでいただきたい」
「そうですわ、お姉さま」
「サーラ……」

 サーラが悲しそうな顔でリオルに訴える。その目は涙目になっていた。
 
「私は体が弱いから戦えませんが気持ちは同じです。私もお兄様のお姿を見ると心が痛みます。私もお姉さまもお兄様に対してはいい思い出が無く、お兄様と仲が良かったとは言えませんが家族であったのは間違いありません。せめて安らかに眠らせてあげてください」
「……ああ!」

 リオルの眼にも涙が浮かんだ。結局、感情が高ぶったが怒りや憎しみによるものではないだけましだろう。ローグは彼らの覚悟を見て気が引き締まった。

(……不思議だ、柄にもなく俺が彼らの覚悟に感動しているのか? 熱血モノは苦手だと思ってたんだけど、嫌いじゃなかったってことかな? ふん、それもいいか)

「覚悟は決まったな! 行くぞ皆!」

「ああ! 頼むぞ、ローグ!」

「リオル様に続け! アゼル様を救うのだ!」

「「「「「おおおおお!」」」」」

「皆さん、どうかご武運を!」

 ローグ、リオル、サーファ、それに兵士たちがアゼルを救うために覚悟を決めて戦いを挑む。




「…………」

 一方、ミーラはアゼルの変化に驚いて腰を抜かしていたため、何も言えなかった。立ち上がれた時には、既にローグ達はアゼルのところに向かっていた。

(……みんなが覚悟を決めてる間に……私、カッコ悪いし情けない。最悪……!)

 今更何を言っても気まずいため、自分のふがいなさを呪った。
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