142 / 252
第5章 外国編
外国で決闘(前編)
しおりを挟む
三人は、宿から出た後に人目のつかない路地裏に来た。女性がローグとミーラをここまで連れてきたのだ。ここなら『大事な話』をしても第三者には聞かれることはないだろう。普通ならば……
「……こんな場所にくるなんて」
「ここならめったに人が通ったりはしないな」
「そういうことだ。では話をしようではないか」
女性は、ローグ達に向き直ると警戒心を高め、敵意を向けてきた。顔が見えなくても分かるほどに。
「な、何よ……」
「ほう……」
「単刀直入に言おう、お前たちは王国の者だな」
「「!」」
女性の質問に二人は驚きの反応を示した。ローグはいつかこんな質問を投げられる時が来ることを想定していたため動揺しなかったが、ミーラは動揺を隠せなかった。
「な、な、なななな何を根拠にっ! そっ、そんなことを!?」
(あの時の門番が黙ってくれているっていう根拠がないから疑われるのも覚悟しろとあれほど言ったのに……)
一応、ミーラには疑われた時は動揺するなと言っていたのだが、やはり上手くはいかなかったようだ。ローグは心の中で嘆いた。
「……どうしてそう思った?」
「食堂でその女が『王国』と言いかけた時に、お前はうまく話題を変えてしまっただろう? そうする理由があるとすればなんだ?」
「あっ! ……って、そんなことで疑われるの!?」
「あの時は偶然だ。たまたま別の話題を思いついたから、そっちの話をしたかったから話をそらしたんだ」
「そっ、そう! その通りよ!」
今更遅い顔しれないが(ミーラのせい)、ローグはいい感じに疑いを晴らそうと弁明する。ミーラもそれに乗っかってくる。だが、女性のほうは甘くはなかった。
「嘘だな」
「え?」
「何?」
「お前たちの言葉には嘘が混ざっている。偶然ではない、意図したものだな。そうだろう?」
「な、何を!?」
「何故、そんなことが分かる?」
女性はローグとミーラの言葉を嘘とみなした。そして、二人との距離をじりじりと縮めてくる。
「否定しないのだな?」
「そ、それは…………。」
「今度はこっちの質問に答えろ。何を根拠に分かるってんだ?」
「私には子供の頃から、言葉を聞いただけでそこに嘘があるかないかが分かるんだ。信じられない特技だろうがな」
「「!?」」
(ちっ、そういう魔法か。嘘が聞かないタイプか。だが……)
相手には嘘が通じない。何も言っても無駄だということが分かった。ローグは戦うことになると判断したが、ここで疑問に思ったことがある。
「そんなのあり!?」
「……特技?」
(特技だと? 自分の魔法の能力を特技だと? 王国の人間にしては何か違和感があるな)
王国の人間ならば己の魔法を特技とは言わない。魔法は能力であって特技とは言わないのが王国の人間の考え方なのだ。それが二人の目の前の女性にはない。
「特技じゃなくて魔法じゃないのか?」
「そうよ! 何が特技よ! 魔法じゃない!」
ローグが女性の特技を魔法だと言うと、女性の敵意が更に高くなった。怒声を上げて否定してきたのだ。
「魔法だと!? あんな得体のしれない力と一緒にするな! これだから王国の異常者は嫌なんだ! ちょっと強いものを見れば魔法魔法と……本当の努力と才能を何だと思っているんだ!」
「え?」
「え?」
(この女、王国出身じゃないのか! 魔法をこんなに否定するなんて、まさか本当に……)
女性は腰に下げていた剣を抜いた。フードは身に着けたままで。
「ふん! このやり取りでお前たちが王国の人間だということは確定させてもらった! 拘束させてもらうが拒むというのであれば……」
「ひいい!」
「命はないっていうのか?」
「その通りだ。どうする? 大人しく降伏するか?」
女性は剣をローグに向かって突きつける。対するローグは、
「お断りだ。一戦交えようじゃないか」
「ちょ!? ローグ!?」
「……いい度胸だ、覚悟するがいい。王国の手先め!」
ローグは戦うことにした。ローグの人生の経験上、こういう人物は知って得する情報を持っているのだ。つまり、謎の女性が何者であるにしろ、利用するのには変わりはない。戦って勝つ必要があるのならそうするまでというだけだ。
(まさか帝国の者だったか。まあいい……気になることもあるしな)
「じゃあ、戦闘開始と行こうか。ミーラは下がってろ、俺一人でやってみる」
「う、うん、分かった。気を付けてね!」
「一対一で戦うというのか、この私を相手に!」
「そういうことだ、かかってきな」
「ならば覚悟せよ! はああああああああ!」
女性は剣で切りつけようと一気に距離を詰めてきた。だが、剣がローグの首をはねる直前、ローグの体が赤紫に光りだした。
「【外道魔法・憤怒】『理不尽の拡散』!」
ビリビリビリビリビリビリビリビリ!
「……こんな場所にくるなんて」
「ここならめったに人が通ったりはしないな」
「そういうことだ。では話をしようではないか」
女性は、ローグ達に向き直ると警戒心を高め、敵意を向けてきた。顔が見えなくても分かるほどに。
「な、何よ……」
「ほう……」
「単刀直入に言おう、お前たちは王国の者だな」
「「!」」
女性の質問に二人は驚きの反応を示した。ローグはいつかこんな質問を投げられる時が来ることを想定していたため動揺しなかったが、ミーラは動揺を隠せなかった。
「な、な、なななな何を根拠にっ! そっ、そんなことを!?」
(あの時の門番が黙ってくれているっていう根拠がないから疑われるのも覚悟しろとあれほど言ったのに……)
一応、ミーラには疑われた時は動揺するなと言っていたのだが、やはり上手くはいかなかったようだ。ローグは心の中で嘆いた。
「……どうしてそう思った?」
「食堂でその女が『王国』と言いかけた時に、お前はうまく話題を変えてしまっただろう? そうする理由があるとすればなんだ?」
「あっ! ……って、そんなことで疑われるの!?」
「あの時は偶然だ。たまたま別の話題を思いついたから、そっちの話をしたかったから話をそらしたんだ」
「そっ、そう! その通りよ!」
今更遅い顔しれないが(ミーラのせい)、ローグはいい感じに疑いを晴らそうと弁明する。ミーラもそれに乗っかってくる。だが、女性のほうは甘くはなかった。
「嘘だな」
「え?」
「何?」
「お前たちの言葉には嘘が混ざっている。偶然ではない、意図したものだな。そうだろう?」
「な、何を!?」
「何故、そんなことが分かる?」
女性はローグとミーラの言葉を嘘とみなした。そして、二人との距離をじりじりと縮めてくる。
「否定しないのだな?」
「そ、それは…………。」
「今度はこっちの質問に答えろ。何を根拠に分かるってんだ?」
「私には子供の頃から、言葉を聞いただけでそこに嘘があるかないかが分かるんだ。信じられない特技だろうがな」
「「!?」」
(ちっ、そういう魔法か。嘘が聞かないタイプか。だが……)
相手には嘘が通じない。何も言っても無駄だということが分かった。ローグは戦うことになると判断したが、ここで疑問に思ったことがある。
「そんなのあり!?」
「……特技?」
(特技だと? 自分の魔法の能力を特技だと? 王国の人間にしては何か違和感があるな)
王国の人間ならば己の魔法を特技とは言わない。魔法は能力であって特技とは言わないのが王国の人間の考え方なのだ。それが二人の目の前の女性にはない。
「特技じゃなくて魔法じゃないのか?」
「そうよ! 何が特技よ! 魔法じゃない!」
ローグが女性の特技を魔法だと言うと、女性の敵意が更に高くなった。怒声を上げて否定してきたのだ。
「魔法だと!? あんな得体のしれない力と一緒にするな! これだから王国の異常者は嫌なんだ! ちょっと強いものを見れば魔法魔法と……本当の努力と才能を何だと思っているんだ!」
「え?」
「え?」
(この女、王国出身じゃないのか! 魔法をこんなに否定するなんて、まさか本当に……)
女性は腰に下げていた剣を抜いた。フードは身に着けたままで。
「ふん! このやり取りでお前たちが王国の人間だということは確定させてもらった! 拘束させてもらうが拒むというのであれば……」
「ひいい!」
「命はないっていうのか?」
「その通りだ。どうする? 大人しく降伏するか?」
女性は剣をローグに向かって突きつける。対するローグは、
「お断りだ。一戦交えようじゃないか」
「ちょ!? ローグ!?」
「……いい度胸だ、覚悟するがいい。王国の手先め!」
ローグは戦うことにした。ローグの人生の経験上、こういう人物は知って得する情報を持っているのだ。つまり、謎の女性が何者であるにしろ、利用するのには変わりはない。戦って勝つ必要があるのならそうするまでというだけだ。
(まさか帝国の者だったか。まあいい……気になることもあるしな)
「じゃあ、戦闘開始と行こうか。ミーラは下がってろ、俺一人でやってみる」
「う、うん、分かった。気を付けてね!」
「一対一で戦うというのか、この私を相手に!」
「そういうことだ、かかってきな」
「ならば覚悟せよ! はああああああああ!」
女性は剣で切りつけようと一気に距離を詰めてきた。だが、剣がローグの首をはねる直前、ローグの体が赤紫に光りだした。
「【外道魔法・憤怒】『理不尽の拡散』!」
ビリビリビリビリビリビリビリビリ!
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
「お前のような役立たずは不要だ」と追放された三男の前世は世界最強の賢者でした~今世ではダラダラ生きたいのでスローライフを送ります~
平山和人
ファンタジー
主人公のアベルは転生者だ。一度目の人生は剣聖、二度目は賢者として活躍していた。
三度目の人生はのんびり過ごしたいため、アベルは今までの人生で得たスキルを封印し、貴族として生きることにした。
そして、15歳の誕生日でスキル鑑定によって何のスキルも持ってないためアベルは追放されることになった。
アベルは追放された土地でスローライフを楽しもうとするが、そこは凶悪な魔物が跋扈する魔境であった。
襲い掛かってくる魔物を討伐したことでアベルの実力が明らかになると、領民たちはアベルを救世主と崇め、貴族たちはアベルを取り戻そうと追いかけてくる。
果たしてアベルは夢であるスローライフを送ることが出来るのだろうか。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
[完結]回復魔法しか使えない私が勇者パーティを追放されたが他の魔法を覚えたら最強魔法使いになりました
mikadozero
ファンタジー
3月19日 HOTランキング4位ありがとうございます。三月二十日HOTランキング2位ありがとうございます。
ーーーーーーーーーーーーー
エマは突然勇者パーティから「お前はパーティを抜けろ」と言われて追放されたエマは生きる希望を失う。
そんなところにある老人が助け舟を出す。
そのチャンスをエマは自分のものに変えようと努力をする。
努力をすると、結果がついてくるそう思い毎日を過ごしていた。
エマは一人前の冒険者になろうとしていたのだった。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる