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第4章 因縁編
VSレオン(前編)
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ミーラが小屋の後ろに隠れたのを確認してから、ローグとレオンの対決が始まった。
「先手必勝!【炎魔法】『火球弾』!」
「【外道魔法・憤怒】『理不尽の雷』!」
ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ!
ビリビリビリビリビリビリ!
レオンの炎の玉を放つのに対し、ローグは赤紫色の雷の槍を放った。『理不尽の雷』は『火球弾』を全て消し去ってしまった。それを見たレオンは次の手段を見せる。
「『魔法付与・剣』!」
ボオッ!
「何!? 付与だと!?」
レオンは剣を抜くと、その剣の刀身から炎が噴き出てきたのだ。ローグの感じる限りでは相当な魔力が発せられた。更に『魔法付与』という言葉にローグは驚いていた。
(魔法付与……それは過去の世界でも相当難しいと言われた技術だった。専用の魔道具を使わずに人の手で行うなど……)
考えてる暇はローグになかった。レオンは剣を使って迫ってきた『理不尽の雷』を直前で切りつけた。そして、
ビリビリビリビリッバシュン……
『理不尽の雷』は真っ二つにされ、二つに分かれて消え去ってしまった。あっという間の出来事だった。
「ふう。危なかった……」
「ば、馬鹿な……」
「今度はこっちの番だ!」
驚くローグに対し、今度はレオン自身が剣を構えて迫ってきた。このままローグに切りかかるつもりだ。一瞬、呆けかけたローグは新たな魔法を発動する。
「【外道魔法・傲慢】『超える模倣』!」
ローグはメルガー戦でも使用した『チェーンソー』を模した武器を形成し、レオンの剣に対抗した。互いに魔法の力を持った武器を交えた。
ガッキィィィィーン!
二人の武器が拮抗した。その状況にローグは唇を噛みそうになった。本来ならば、相手の武器を削ってしまうはずなのだが、炎を吹き出す剣は全くそんなことにはならなかった。それどころか、こちらが少しでも気を抜けば押されてしまいかねない、そんな気がしてならなかった。
「驚いたよ、僕の魔法付与された剣でも焼けきれないなんてさ! 魔法でできた武器だからかな?」
「焼けきるか……本当に魔法付与された武器みたいだな」
魔法付与。それは特定の物に魔法の効果を与えて使役し続ける技術のことだ。過去の世界では人の手による手段は難しく、専用の魔道具を頼ってきた。魔術とは似て非なるが、魔術に比べて強い力を発揮するが扱いにくい技術だ。
(この時代で、魔法付与された武器を見ることになるとは。しかも、人の手でだと? レオンにここまでの才能があったとは……)
今見た限りだが、どう見てもレオンがその場で剣に【炎魔法】を付与したようにしか見えなかった。剣を抜く前は、剣自体に魔力が感じられなかったから。今、剣から感じられる熱がそれを証明している。
「ローグが出してる『それ』は何? 見たこともない武器に見えるけど、ローグのオリジナルかい?」
「はっ! お前の知らない世界の武器だ、よっと!」
「おっと!」
ローグはレオンが疑問を投げかけた隙をついて、レオンの体ごと剣を弾いた。お互い一歩引く程度にしかならなかったが、あのままだとローグが押されていた。レオンのほうが身体能力が高いのだ。不利になる力勝負に持ち込まれるわけにはいかない。
「ふぅ、魔法付与何て、どこで教わった?」
「知りたいかい?」
「いや、聞く必要もないな。お前の所属からして、騎士団の上司か魔法協会の繋がりだろう。違うか?」
「正解だね、つまらないな。でも、さっきのはすごいよ。実を言うとあっさり勝負がつくと思ってたのに、あんな力を手にしてたなんてね」
「今頃、怖気づいたか?」
「ハズレ。逆だね。むしろワクワクしてきたよ。魔物や盗賊相手じゃ張り合いが無かったからねえ。ずっとこういう戦いを待ち望んでいたんだよ!」
「……レオン?」
ローグはレオンに不気味なものを感じた。今のレオンはこんな時でも、無垢な子供のように笑っていたのだ。
「こんな戦いを望んでいた、だと?」
ローグはレオンに問いかけてみた。戦いを望んでいたという願望、そんなことを初めて知ったからだ。詳しく聞き出せば攻略のきっかけになるかもしれない。
「そうだよ、あの村にいた頃は皆が僕より弱かった。力を試しても試してやる価値がある奴はどこにもいなかった。大人たちに魔法をぶつけたら悪ガキ扱いされちゃうしね」
「ほう。それでも、猫かぶりしなきゃよかったな」
「ケリーたちを見てれば分かるだろ? 子供の時はいい子でいたほうが都合がよかったのさ」
「……だろうな」
ローグは少し意外に思っている。レオンの本性が善人ではないことは明らかだったが、自分からそれを白状する時が来るとは思わなかったからだ。
「騎士団にスカウトされた時は素直に嬉しかったよ。やっと思う存分力を振るえる場所に行けるんだって、戦っていられるんだってね」
「そうか。だが、さっきの発言だと期待外れみたいだな」
「そうだね、半分くらいはそんな感じかな。確かに戦い続けられはするんだけど、いつも魔物や犯罪者の盗伐ってとこだね。そんな奴らじゃ張り合いが無かったんだよ」
「仲間や上司と手合わせしてもダメか?」
「騎士団にも強い人はいるけど、僕と同じこと考える人がいなくてダメなんだ。考え方が違う人や国のことしか考えない人、それと変態だったりでね。相手してくれないし相手をしたくもないんだ」
「…………」
「先手必勝!【炎魔法】『火球弾』!」
「【外道魔法・憤怒】『理不尽の雷』!」
ボンッ! ボンッ! ボンッ! ボンッ!
ビリビリビリビリビリビリ!
レオンの炎の玉を放つのに対し、ローグは赤紫色の雷の槍を放った。『理不尽の雷』は『火球弾』を全て消し去ってしまった。それを見たレオンは次の手段を見せる。
「『魔法付与・剣』!」
ボオッ!
「何!? 付与だと!?」
レオンは剣を抜くと、その剣の刀身から炎が噴き出てきたのだ。ローグの感じる限りでは相当な魔力が発せられた。更に『魔法付与』という言葉にローグは驚いていた。
(魔法付与……それは過去の世界でも相当難しいと言われた技術だった。専用の魔道具を使わずに人の手で行うなど……)
考えてる暇はローグになかった。レオンは剣を使って迫ってきた『理不尽の雷』を直前で切りつけた。そして、
ビリビリビリビリッバシュン……
『理不尽の雷』は真っ二つにされ、二つに分かれて消え去ってしまった。あっという間の出来事だった。
「ふう。危なかった……」
「ば、馬鹿な……」
「今度はこっちの番だ!」
驚くローグに対し、今度はレオン自身が剣を構えて迫ってきた。このままローグに切りかかるつもりだ。一瞬、呆けかけたローグは新たな魔法を発動する。
「【外道魔法・傲慢】『超える模倣』!」
ローグはメルガー戦でも使用した『チェーンソー』を模した武器を形成し、レオンの剣に対抗した。互いに魔法の力を持った武器を交えた。
ガッキィィィィーン!
二人の武器が拮抗した。その状況にローグは唇を噛みそうになった。本来ならば、相手の武器を削ってしまうはずなのだが、炎を吹き出す剣は全くそんなことにはならなかった。それどころか、こちらが少しでも気を抜けば押されてしまいかねない、そんな気がしてならなかった。
「驚いたよ、僕の魔法付与された剣でも焼けきれないなんてさ! 魔法でできた武器だからかな?」
「焼けきるか……本当に魔法付与された武器みたいだな」
魔法付与。それは特定の物に魔法の効果を与えて使役し続ける技術のことだ。過去の世界では人の手による手段は難しく、専用の魔道具を頼ってきた。魔術とは似て非なるが、魔術に比べて強い力を発揮するが扱いにくい技術だ。
(この時代で、魔法付与された武器を見ることになるとは。しかも、人の手でだと? レオンにここまでの才能があったとは……)
今見た限りだが、どう見てもレオンがその場で剣に【炎魔法】を付与したようにしか見えなかった。剣を抜く前は、剣自体に魔力が感じられなかったから。今、剣から感じられる熱がそれを証明している。
「ローグが出してる『それ』は何? 見たこともない武器に見えるけど、ローグのオリジナルかい?」
「はっ! お前の知らない世界の武器だ、よっと!」
「おっと!」
ローグはレオンが疑問を投げかけた隙をついて、レオンの体ごと剣を弾いた。お互い一歩引く程度にしかならなかったが、あのままだとローグが押されていた。レオンのほうが身体能力が高いのだ。不利になる力勝負に持ち込まれるわけにはいかない。
「ふぅ、魔法付与何て、どこで教わった?」
「知りたいかい?」
「いや、聞く必要もないな。お前の所属からして、騎士団の上司か魔法協会の繋がりだろう。違うか?」
「正解だね、つまらないな。でも、さっきのはすごいよ。実を言うとあっさり勝負がつくと思ってたのに、あんな力を手にしてたなんてね」
「今頃、怖気づいたか?」
「ハズレ。逆だね。むしろワクワクしてきたよ。魔物や盗賊相手じゃ張り合いが無かったからねえ。ずっとこういう戦いを待ち望んでいたんだよ!」
「……レオン?」
ローグはレオンに不気味なものを感じた。今のレオンはこんな時でも、無垢な子供のように笑っていたのだ。
「こんな戦いを望んでいた、だと?」
ローグはレオンに問いかけてみた。戦いを望んでいたという願望、そんなことを初めて知ったからだ。詳しく聞き出せば攻略のきっかけになるかもしれない。
「そうだよ、あの村にいた頃は皆が僕より弱かった。力を試しても試してやる価値がある奴はどこにもいなかった。大人たちに魔法をぶつけたら悪ガキ扱いされちゃうしね」
「ほう。それでも、猫かぶりしなきゃよかったな」
「ケリーたちを見てれば分かるだろ? 子供の時はいい子でいたほうが都合がよかったのさ」
「……だろうな」
ローグは少し意外に思っている。レオンの本性が善人ではないことは明らかだったが、自分からそれを白状する時が来るとは思わなかったからだ。
「騎士団にスカウトされた時は素直に嬉しかったよ。やっと思う存分力を振るえる場所に行けるんだって、戦っていられるんだってね」
「そうか。だが、さっきの発言だと期待外れみたいだな」
「そうだね、半分くらいはそんな感じかな。確かに戦い続けられはするんだけど、いつも魔物や犯罪者の盗伐ってとこだね。そんな奴らじゃ張り合いが無かったんだよ」
「仲間や上司と手合わせしてもダメか?」
「騎士団にも強い人はいるけど、僕と同じこと考える人がいなくてダメなんだ。考え方が違う人や国のことしか考えない人、それと変態だったりでね。相手してくれないし相手をしたくもないんだ」
「…………」
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