上 下
125 / 252
第4章 因縁編

最悪の再会

しおりを挟む
 ローグとミーラが小屋に向かう途中の時、ミーラがあることに気付いた。

「ローグ、大変! 私達の後を誰かが追いかけてる!」
「何!? 数は!?」
「馬の気配の除けば一人だけ!」
「そうか、くそっ!」

 ローグは舌打ちするが、同時に疑問が浮かんだ。

(追いかけてきたのが一人だけ? どういうことだ、俺達に気付いたならあと一人か二人よこしてきたほうがいいはずなのに? 本当に騎士団のものか?)

「敵は本当に一人か!?」
「うん! 間違いないよ!」
「…………」

 今更ミーラがローグを裏切ることは考えられない。ならば、追ってきている人物は他の騎士に黙ってローグ達を追いかけてきた可能性があるが、そんなことをする意味があるはずがない。仮にあるとすれば、騎士団に関係のない者か、ローグではなくミーラの顔を知っている者ということになる。後者に該当する人物のほうはローグに心当たりがあった。

(もし、『あいつ』なら……あり得るのか? いや、あの頃の俺にしたようなことを考えれば、あるいは……最悪なことには変わりないか)

「ミーラ、このまま小屋で迎え撃つぞ」
「ええ!? いいの、そんなことしてて!?」
「やむを得ん。一人が相手なら俺が万全じゃなくてもなんとかできるかもしれない。そのまま敵の位置を把握し続けてくれ!」
「そ、そうなんだ。分かったわ!」

(……さて、『あいつ』が来るかな?)

 ローグは、騎士団から逃げ切ることを望みながらも、追ってくる敵との戦闘を望むというどこか矛盾したことを願っていた。



ミーラの小屋。

 ある程度(その場しのぎ)の準備を整えたローグとミーラは、敵が来るのを待っていた。追ってきた数は相変わらず一人だけのようだ。やがて、その追ってきた敵が小屋の前に現れた。その姿を見た二人は驚いた。

「へえ。こんなところに小屋があるなんてね。住んでるやつの気が知れないや」

『あ、あいつは……!』
『やっぱりな、追ってきたのはあいつだったか』
『『レオン・ビリー!』』

 ローグの予想は的中していた。二人を追ってきたのは幼馴染みにして復讐の対象者レオン・ビリーだったのだ。この男の性格からすれば、今のローグはともかくミーラの姿を見れば一人で追いかけても不思議ではない。ミーラのことを魔法なしと思っていればだ。

「さ~て二人とも、どこに隠れてるんだろうね……」

 レオンは手から魔法でできた炎の玉を出現させる。そして、それを小屋のほうに……

「この辺かな? 【炎魔法】『火球弾』」

クルッ

 ……ではなく、

『『え?』』

ボンッ! ボンッ! 

 90度右にクルリと回って、茂みに隠れているローグとミーラに向けて放った。笑顔で2発。

『ええ!?』
『何!?』

(正確にこっちに撃ってきやがった!? 馬鹿な!?)

「ひいっ!」
「【外道魔法怠惰】『拒絶の壁』!」

バリンッ! バリンッ! 

 放たれた火の玉は正確に二人の顔に直撃する前に、ローグの魔法によって跳ね返された。火の玉はそのままレオンの元に戻っていった。今度はレオンに直撃すると思われたが、レオンは驚きの行動に出た。腰の剣を抜いたのだ。

「はあっ!」

バンッ バンッ 

「「!?」」

 レオンは剣を使って火の玉の軌道をずらしたのだ。そのおかげで無傷で済んでいた。ローグは改めてレオンの才能を見せつけられてしまった。

(なんて奴だ! さっきの火球は結構な威力があっただろうに……)

 ローグとミーラの姿を確認したレオンは笑顔で笑いかけてきた。

「久しぶりだね。ミーラ、ロー。いや違うかな? ローグというんだっけ?」

 その笑顔は無邪気な子供のようだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!

桜井正宗
ファンタジー
 辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。  そんな努力もついに報われる日が。  ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。  日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。  仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。 ※HOTランキング1位ありがとうございます! ※ファンタジー7位ありがとうございます!

召喚アラサー女~ 自由に生きています!

マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。 牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子 信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。 初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった *** 異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!

ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。 なのに突然のパーティークビ宣言!! 確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。 補助魔法師だ。 俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。 足手まといだから今日でパーティーはクビ?? そんな理由認められない!!! 俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな?? 分かってるのか? 俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!! ファンタジー初心者です。 温かい目で見てください(*'▽'*) 一万文字以下の短編の予定です!

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...