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第4章 因縁編

幕間・国王

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王城。

 王都の中心に位置する王城。そこは今、暴徒が押し寄せていたが騎士団の手によって鎮圧されつつあった。暴徒の数は数百人を超えるものだったが、強大な魔法と剣の腕を持つ騎士団の手に掛かれば抑えられないものではなかった。

 その頃、王城内部では外の騒ぎを気にしつつも会議が開かれていた。会議が行われる部屋は広く、国の政を決める国の上層部が集まっていた。多くのものが集まったが、その中心になるのが、白い靴髭と金色の王冠が特徴的な国王『フレデリック・アラドス』と大臣の『アベル・シュタイナー』だ。

「……それで、おぬしの見たことは真か?」
「はい。間違いございません。あの少年は規格外の魔法を持っておりました」
「ふむ……」

 王の前で、一人の男が跪きながら報告を述べていた。この男は、数時間前に魔法協会に出向き、ローグ達と魔物の戦いを見入っていた者だった。部下たちにローグ達の追跡を任せた後、自分は見たこと全てを国王に報告しに行ったのだ。

「……たった一人の少年がそれほどの力をもつ、か。その少年があの『会話』の相手と同じ人物だというのかね?」
「おそらくは。私は遠目で見ていましたが、少年が魔物に負傷された時に発した叫び声と、彼らが魔法協会を離れた時に発した声が『会話』の相手と似ておりました。確証はありませんが同一人物だと思います」
「……さようか」

 『会話』というのは、王都中に響き渡った魔法協会トップ二人と謎の人物の会話のことだ。その内容は、魔法協会の非道な行いと王国の隠してきた魔法の秘密を暴露するものだった。そのせいで、王城と魔法協会に対して暴徒が集まるという事態が起こってしまった。この許しがたい事態を打開するためにも、『会話』の相手を特定し、この事件の首謀者として捕らえる必要があった。

 少し前の会議の内容で、打開の案として「首謀者に『会話』が嘘だと発言させる」ことが決まったが、肝心の首謀者を特定することにさえ時間と人手が足りない。何しろ、多くの兵士や騎士に暴徒の鎮圧を任せてしまっているからだ。魔法協会側に手を回す余裕もなかったが、調査が必要なために密偵を放ったのだ。

 その密偵から得た情報がこれだ。魔法協会にも暴徒が押し寄せてきて、一人の構成員がトップ二人を縛られてきた状態で暴徒の前に晒していた。途中で魔法協会から魔物が出てきて、その構成員とトップ二人が犠牲になり、その魔物を二体とも一人の少年と仲間二人が倒してしまった。そして、その少年が首謀者の可能性が高く、今も追跡中だという。

 報告を聞いた者のほとんどが頭が痛くなっていた。重要参考人の魔法協会トップ二人が死亡したのだ。ある意味、一番この件で責任を取るべき者たちが責任を取らずに死んでしまったのだ。首謀者が捕まらなかった時の保険だったために、死んでしまったのはまずかった。

 しかし、いい知らせもある。首謀者の可能性が高い少年を特定し、今も追跡中ということだ。それが事実なら、後は証拠を揃えるだけだ。その証拠も上層部の権力をもってすれば揃えることなど造作もない。国の上層部なだけに多くの繋がりがある。魔法協会、騎士団、冒険者役場、暗部、周辺他国と情報網が広いのだ。それらから得ていた情報をつなぎ合わせれば首謀者の身元がすぐに分かる。

 実際に、国王を含む王国の上層部は彼を突き止めていた。

「冒険者役場を経由して魔法協会が得た『ローグ・ナイト』、この少年の似顔絵がこれか。君が見たものと一致するかね?」
「はい! 間違いありません、この少年でした!」
「陛下。この『ローグ・ナイト』が辺境の村で魔法を無くすという大事件を引き起こした『ロー・ライト』と同一人物だという可能性を魔法協会が考えていました。あの『会話』を起こしたことを考えれば、この二名が同一人物だという可能性は高いでしょう」
「そうか。分かった」

 密偵の男と大臣の言葉で、首謀者が特定された。ここで様々な議論がされたが、その全てを聞いた国王は最終的な判断を皆に告げる。

「これより、この事件の首謀者と思われるローグ・ナイト、もしくはロー・ライトを国家転覆の容疑者と断定する! 王城の暴徒をある程度鎮圧させた後に第一騎士団にかの者の捕縛を命じる!」

 この瞬間、王国が本格的にローグ達に牙を向けたのだ。
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