95 / 252
第3章 組織編
線引き
しおりを挟む
「何故だ……何故なんだ!? 何故、貴様のような子供がそんなことを知ってるんだ!? こんなことは書類にも記していないはずなのに!?」
「一体、どうやって知った!? 何をどうすればお前のようなイカれたガキに知られるんだ!?」
トーレンとメルガーはローグに向かって叫ぶ。二人はすっかり冷静さを失っていた。そんな二人に対してローグが答えたのは……。
「どうやって知ったかだと? 強いて言うなら自分で推測して導き出した、かな?」
「「はあ!?」」
……嘘ではないのだが、誰も納得するはずがない。
「ふざけるな! 馬鹿にしやがって!」
「田舎で暮らしていたのに、自力で魔法の秘密を暴けるはずがないだろ! ましてや、国の秘密など論外だ!」
トーレンとメルガーは怒って怒声を上げる。ローグの計画通りに。
「それもそうか。だが、あんたたちに知る権利はあるのか?」
「「ああ!?」」
「俺が言ったことはこの国の国民のほとんどが知らないんだろう。それなのにあんたたちだけが知ってるのは不公平と思わないのか?」
「「っ!」」
ローグの言葉は二人にとっては理不尽なものだった。あくまでもこの二人には。
「何を馬鹿なことを言うんだ! 私達は国のために働いているだけなんだ! そのためには魔法に関するあらゆる情報を知る義務があるんだ! そこらの一般人とは違う!」
「その通りだ。お前は我々が多くの人を犠牲にしていることが気に入らないようだが、それが最終的に国の利益につながっていることは分かるはず。ここで我々を始末したとしても何も変わることは無い。この国が我々を、魔法協会を求めているのだからな」
「……まるで絶対権力者のセリフだな」
ローグは冷めた目で二人を見るが、気にされはしなかった。
「当たり前だ! 私達は選ばれた存在、私達こそがこの国の要なんだ! 研究のために人を犠牲にすることを許された絶対的な存在なんだ!」
「絶対権力者とは、確かに我々のことを指すかもしれんな。騎士団はともかく、国王陛下を含む国の上層部は我々の味方。たいていの要求は呑んでくれる。そういう意味では影の権力者ともいえるのだろう。そんな我らを敵に回したらどうなる? この国に一生追われる身になることになるぞ、分かっているのか?」
「…………」
トーレンは偉そうになり、メルガーは落ち着きを取り戻して挑発するような口調に変わった。ローグと話しているうちに自分たちの後ろ盾を思い出して余裕を取り戻したようだ。それでも、ローグの冷めた気持ちは変わらない。
「呆れたな」
「はあっ!?」
「……何?」
「発展には犠牲がつきもの……それは理解できるが、露骨に、目に見える形で、必要性もない犠牲まで出すのは愚かしいことだ。魔法の研究者ならもっと線引きすべきだ」
線引き。それはローグの前世でも悩んだものだった。ローグの前世の『ナイトウ・ログ』は死ぬまで悩み苦悩し続けたのだ。だが、ローグの目の前にいるこの二人は……。
「な、何を……」
「線引きだと?」
「本当に犠牲が必要なのか、何を犠牲にすべきか、何のためにするべきか、どう責任を持つべきか、あんたたちはそういう線引きができていない。かなりあいまいだ。そんなだから、目的があれば何をしてもいい、許される、かばってもらえる、そんな考えが出来上がるんだ。実際、今日まで無事だったんだからな」
ろくな線引きをしない研究者などローグにとっては軽蔑するしかない。研究者として失格なのだ。目の前の二人は決して理解しないだろう。
「ちっ、何を言うかと思えば……」
「線引きなどして何にな……」
「まあ、あんたたちにはそういうことを理解してもらおうとは思わない。話してみて罪悪感を一切感じられなかったからな。俺が言いたいことも、あんたたちに喋ってもらいたいことも全部言葉にしてもらったしな」
カチッ
「「……?」」
((なんだ、さっきの音は?))
ローグはポケットから突っ込んでいた手を戻した。その手には何かが握られていた。
「一体、どうやって知った!? 何をどうすればお前のようなイカれたガキに知られるんだ!?」
トーレンとメルガーはローグに向かって叫ぶ。二人はすっかり冷静さを失っていた。そんな二人に対してローグが答えたのは……。
「どうやって知ったかだと? 強いて言うなら自分で推測して導き出した、かな?」
「「はあ!?」」
……嘘ではないのだが、誰も納得するはずがない。
「ふざけるな! 馬鹿にしやがって!」
「田舎で暮らしていたのに、自力で魔法の秘密を暴けるはずがないだろ! ましてや、国の秘密など論外だ!」
トーレンとメルガーは怒って怒声を上げる。ローグの計画通りに。
「それもそうか。だが、あんたたちに知る権利はあるのか?」
「「ああ!?」」
「俺が言ったことはこの国の国民のほとんどが知らないんだろう。それなのにあんたたちだけが知ってるのは不公平と思わないのか?」
「「っ!」」
ローグの言葉は二人にとっては理不尽なものだった。あくまでもこの二人には。
「何を馬鹿なことを言うんだ! 私達は国のために働いているだけなんだ! そのためには魔法に関するあらゆる情報を知る義務があるんだ! そこらの一般人とは違う!」
「その通りだ。お前は我々が多くの人を犠牲にしていることが気に入らないようだが、それが最終的に国の利益につながっていることは分かるはず。ここで我々を始末したとしても何も変わることは無い。この国が我々を、魔法協会を求めているのだからな」
「……まるで絶対権力者のセリフだな」
ローグは冷めた目で二人を見るが、気にされはしなかった。
「当たり前だ! 私達は選ばれた存在、私達こそがこの国の要なんだ! 研究のために人を犠牲にすることを許された絶対的な存在なんだ!」
「絶対権力者とは、確かに我々のことを指すかもしれんな。騎士団はともかく、国王陛下を含む国の上層部は我々の味方。たいていの要求は呑んでくれる。そういう意味では影の権力者ともいえるのだろう。そんな我らを敵に回したらどうなる? この国に一生追われる身になることになるぞ、分かっているのか?」
「…………」
トーレンは偉そうになり、メルガーは落ち着きを取り戻して挑発するような口調に変わった。ローグと話しているうちに自分たちの後ろ盾を思い出して余裕を取り戻したようだ。それでも、ローグの冷めた気持ちは変わらない。
「呆れたな」
「はあっ!?」
「……何?」
「発展には犠牲がつきもの……それは理解できるが、露骨に、目に見える形で、必要性もない犠牲まで出すのは愚かしいことだ。魔法の研究者ならもっと線引きすべきだ」
線引き。それはローグの前世でも悩んだものだった。ローグの前世の『ナイトウ・ログ』は死ぬまで悩み苦悩し続けたのだ。だが、ローグの目の前にいるこの二人は……。
「な、何を……」
「線引きだと?」
「本当に犠牲が必要なのか、何を犠牲にすべきか、何のためにするべきか、どう責任を持つべきか、あんたたちはそういう線引きができていない。かなりあいまいだ。そんなだから、目的があれば何をしてもいい、許される、かばってもらえる、そんな考えが出来上がるんだ。実際、今日まで無事だったんだからな」
ろくな線引きをしない研究者などローグにとっては軽蔑するしかない。研究者として失格なのだ。目の前の二人は決して理解しないだろう。
「ちっ、何を言うかと思えば……」
「線引きなどして何にな……」
「まあ、あんたたちにはそういうことを理解してもらおうとは思わない。話してみて罪悪感を一切感じられなかったからな。俺が言いたいことも、あんたたちに喋ってもらいたいことも全部言葉にしてもらったしな」
カチッ
「「……?」」
((なんだ、さっきの音は?))
ローグはポケットから突っ込んでいた手を戻した。その手には何かが握られていた。
0
お気に入りに追加
56
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
亡霊剣士の肉体強奪リベンジ!~倒した敵の身体を乗っ取って、最強へと到る物語。
円城寺正市
ファンタジー
勇者が行方不明になって数年。
魔物が勢力圏を拡大し、滅亡の危機に瀕する国、ソルブルグ王国。
洞窟の中で目覚めた主人公は、自分が亡霊になっていることに気が付いた。
身動きもとれず、記憶も無い。
ある日、身動きできない彼の前に、ゴブリンの群れに追いかけられてエルフの少女が転がり込んできた。
亡霊を見つけたエルフの少女ミーシャは、死体に乗り移る方法を教え、身体を得た彼は、圧倒的な剣技を披露して、ゴブリンの群れを撃退した。
そして、「旅の目的は言えない」というミーシャに同行することになった亡霊は、次々に倒した敵の身体に乗り換えながら、復讐すべき相手へと辿り着く。
※この作品は「小説家になろう」からの転載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる