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第3章 組織編

第三段階

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数分前。

 バルムド達の騒動が聞こえてきたローグ達は次の作戦を開始した。

「次は『彼ら』の番だ。ルドガーさん、しっかり先導してやってくれよ?」
「ルドガーさん、気を付けてくださいね」
「分かっているさ。任せとけ」

 ローグは魔封書を手に持って魔力を流す。そして、ルドガーに向けて手をかざすと……。

「【移動魔法】『指定転移』!」

パアッ! スッ……

 ルドガーが一瞬光って、その場から消えた。

「ルドガーさんが消えた!」
「違う、バルムド達に案内させた隠し通路に行ってもらったんだ」
「そ、そうよね。何言ってんだろ私!」
 
 魔封書による【移動魔法】『指定転移』は、特定した対象を指定した場所に瞬間移動させる魔法だ。ローグはこの魔法を使って、ルドガーを対象にして隠し通路に移動させたのだ。

 隠し通路とは、魔法協会と外をつなぐ秘密の地下通路のことだ。本来なら魔法協会の一部の者しか知らないはずだが、ローグ達はバルムド達(操ってる)からこの通路の存在を知った。ローグ達は魔法協会を襲撃する前に、この隠し通路にある魔道具を設置しておいた。それは、ローグが【移動魔法】をヒントに作った『転移装置』だ(前世ですでに作ってる)。転移装置は一つの本体と複数の端末に分かれていて、本体を起動させると端末を持った者たちをその場に瞬間移動させる仕組みになっている。ルドガーを隠し通路に送ったのは、その転移装置を起動させるためだ。

「上手くいくかな……」
「俺が作った魔道具が信じられないか?」
「そんなことないわ。私が心配してるのは、あの人たちのことよ」
「『彼ら』のことか……」
「うん……」
 
 『彼ら』とは、ルドガーが集めた協力者、つまり『共犯者』たちのことだ。彼らのほとんどが外町の者たちで、ルドガー以上に魔法協会に恨みを持つ者がほとんどだ。魔法を奪われた者もいる。ルドガーに集めさせたのは、大人のほうが適任であり下町に詳しいこともあるから任せたのだ。

 案の定、共犯者になってくれるものは十数人ほど集まった。ローグは協力と引き換えに魔法を与えることで、計画への協力を約束させた。彼らの中には魔法を失った者もいたため、喜んで協力することを誓った。そして、彼らは普通の魔法持ちのグループと、二つの魔法持つグループに分かれた。

 ただし、ローグは単純に魔法を与えるだけではなかった。魔法を与える手段は、魔封書に入っている魔法を取り出して与えればいいだけだが、その際、工夫を加えていた。ローグの【外道魔法】を一緒にかけていたのだ。【外道魔法・強欲】『強くない心』。心の奥底にある思いを増幅する魔法だ。ローグはこの魔法で、彼らの心の中にある魔法協会に対する怒りと憎しみを増幅するように仕組んだ。

 そこまでしたのは、計画への協力を絶対にするためであり、計画が外部に漏れないようにするためだ。下町に住む人間は貧乏どころか、まともな暮らしができない。魔法なしという理由で王都どころか普通の町でも邪険に扱われるのだ。しかし、魔法が手に入れば、生活後大きく変えることができる。つまり、魔法だけもらって逃げ出す可能性があるのだ。それどころか裏切る可能性もある。その予防のために、協力者たは「魔法協会への復讐」という目的が一番でなければならないのだ。

(もっとも、そこまでする必要なかったかもな。どうやら全員が魔法協会を恨んでたみたいだし。それに、あの目だ。『ロー・ライト』の頃の俺と同じだったな……)
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