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第3章 組織編
暴走の原因
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会長室。
暴走する防衛魔術を潜り抜けたトーレンとメルガーは、会長室にたどり着いた。会長室には他の幹部がいた。髭面の男と眼鏡をかけた女だった。
「会長! トーレン殿! ご無事でしたか!」
「よくぞご無事で! 安心しました!」
「おお! アンリルさん! パルサさん!」
「君らも無事だったか!」
魔法協会の幹部である『アルフレド・アンリル』と『ミエカ・パルサ』が、トーレンとメルガーと合流した。メルガーはすぐに状況を聞き出す。
「防衛魔術が暴走しているようだが状況はどうなっている? 少し前に流れてきた魔力と関係があるのだろうが、どう対処しているかも話してくれ」
「はい。あの魔力が流れてきた後すぐに警報ベルが鳴ったのですが、それと同時に防衛魔術が発動したのです。それも、魔力が流れた範囲に比例して」
「魔力が流れた範囲に比例して、だと?」
「その通りです、会長。おそらく、流れてきた魔力は、この前のように探りを入れるためではなく、魔法協会のあらゆる魔術を暴走させるためのものでと思われます」
アンリルとパルサの説明をによれば、防衛魔術の暴走は流れてきた魔力の影響が原因だったというものだ。その推測を聞いたトーレンとメルガーは……。
「そ、そんな……。我々の魔術を都合よく暴走させるなんて……」
「そうとしか思えんだろ」
「会長……!」
「「……………………」」
「トーレン、あれを見ろ」
「あ、あれは監視魔術の水晶……!?」
トーレンは会長室の全ての水晶玉を見てみたが、何も映っていなかった。いつもなら常時、内部の映像を映す水晶玉が透明なままなのだ。
「防衛魔術だけでなく、監視魔術も使い物にならん。警報ベルが鳴り続けているのもそのせいだろう。つまり、魔法協会に設置されている全ての魔術が役に立たないものに変えられたのだ」
「そんな……そんな……」
トーレンは絶句してしまったが、メルガーは落ち着いた様子で状況を整理できた。メルガーはここに来るまでに見た状況からある程度推測していたからだ。メルガーの言葉にアンリルは疑問を口にする。
「全てのということは地下でも影響があったということですか? 実験に支障が出たとか?」
「実験に支障が出たどころか収容施設のロックが全て解除されてしまったよ。実験体の脱走だ」
「そんな馬鹿な! そんなことを許したら……!」
「安心しろ。地下は全て封鎖した」
「そ、そうですか………………え?」
メルガーの告げた言葉に今度はパルサが口を出した。
「地下を封鎖ですって!? 会長がここにいるということは、地下にはまだ多くの構成員が残されているではありませんか!? 彼らを見殺しにするおつもりですか!?」
「それはやむを得んことだ。魔法協会の外に出すよりはましだと判断したのだよ。たとえ、犠牲者を出すことになってもな」
「会長……それは……」
今度はパルサが絶句してしまった。アンリルも同じ気持ちでいるようだ。だが、反論することはできない。彼ら、幹部にとっては、会長であるメルガーの言葉は絶対だ。何より、メルガーの言っていることは、立場上、彼らには正論にも聞こえなくはないのだ。メルガーは幹部たちに指示を出す。
「原因がある程度分かったなら対処しようがある。まず、ここで魔法協会の全ての魔術を強制的に停止させる。そしてすぐに、生存者を集めて、敵の捜索と内部の立て直しの二手に分かれて行動を開始する。今度はこちらから反撃だ!」
彼らは、会長室から出て全ての魔術を管理する『魔術管理室』に向かった。
暴走する防衛魔術を潜り抜けたトーレンとメルガーは、会長室にたどり着いた。会長室には他の幹部がいた。髭面の男と眼鏡をかけた女だった。
「会長! トーレン殿! ご無事でしたか!」
「よくぞご無事で! 安心しました!」
「おお! アンリルさん! パルサさん!」
「君らも無事だったか!」
魔法協会の幹部である『アルフレド・アンリル』と『ミエカ・パルサ』が、トーレンとメルガーと合流した。メルガーはすぐに状況を聞き出す。
「防衛魔術が暴走しているようだが状況はどうなっている? 少し前に流れてきた魔力と関係があるのだろうが、どう対処しているかも話してくれ」
「はい。あの魔力が流れてきた後すぐに警報ベルが鳴ったのですが、それと同時に防衛魔術が発動したのです。それも、魔力が流れた範囲に比例して」
「魔力が流れた範囲に比例して、だと?」
「その通りです、会長。おそらく、流れてきた魔力は、この前のように探りを入れるためではなく、魔法協会のあらゆる魔術を暴走させるためのものでと思われます」
アンリルとパルサの説明をによれば、防衛魔術の暴走は流れてきた魔力の影響が原因だったというものだ。その推測を聞いたトーレンとメルガーは……。
「そ、そんな……。我々の魔術を都合よく暴走させるなんて……」
「そうとしか思えんだろ」
「会長……!」
「「……………………」」
「トーレン、あれを見ろ」
「あ、あれは監視魔術の水晶……!?」
トーレンは会長室の全ての水晶玉を見てみたが、何も映っていなかった。いつもなら常時、内部の映像を映す水晶玉が透明なままなのだ。
「防衛魔術だけでなく、監視魔術も使い物にならん。警報ベルが鳴り続けているのもそのせいだろう。つまり、魔法協会に設置されている全ての魔術が役に立たないものに変えられたのだ」
「そんな……そんな……」
トーレンは絶句してしまったが、メルガーは落ち着いた様子で状況を整理できた。メルガーはここに来るまでに見た状況からある程度推測していたからだ。メルガーの言葉にアンリルは疑問を口にする。
「全てのということは地下でも影響があったということですか? 実験に支障が出たとか?」
「実験に支障が出たどころか収容施設のロックが全て解除されてしまったよ。実験体の脱走だ」
「そんな馬鹿な! そんなことを許したら……!」
「安心しろ。地下は全て封鎖した」
「そ、そうですか………………え?」
メルガーの告げた言葉に今度はパルサが口を出した。
「地下を封鎖ですって!? 会長がここにいるということは、地下にはまだ多くの構成員が残されているではありませんか!? 彼らを見殺しにするおつもりですか!?」
「それはやむを得んことだ。魔法協会の外に出すよりはましだと判断したのだよ。たとえ、犠牲者を出すことになってもな」
「会長……それは……」
今度はパルサが絶句してしまった。アンリルも同じ気持ちでいるようだ。だが、反論することはできない。彼ら、幹部にとっては、会長であるメルガーの言葉は絶対だ。何より、メルガーの言っていることは、立場上、彼らには正論にも聞こえなくはないのだ。メルガーは幹部たちに指示を出す。
「原因がある程度分かったなら対処しようがある。まず、ここで魔法協会の全ての魔術を強制的に停止させる。そしてすぐに、生存者を集めて、敵の捜索と内部の立て直しの二手に分かれて行動を開始する。今度はこちらから反撃だ!」
彼らは、会長室から出て全ての魔術を管理する『魔術管理室』に向かった。
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