ローグ・ナイト ~復讐者の研究記録~

mimiaizu

文字の大きさ
上 下
58 / 252
第2章 奴隷編

戦いの火ぶた

しおりを挟む
 ローグの言葉を聞いたルドガーは何かを察したようだ。嫌な予感がした。

「ぼ、坊主、お前……どうして、ここに来た……」
「魔法で探知したら、ミーラの反応がここにあったからだ」
「ロー……」

 ルドガーは天を仰いでしまった。無理もないだろう。どうやってミーラの居場所を見つけ出したのか詳しく聞かなかったことが悔やまれるのだ。ミーラも同じ気持ちだ。彼女の頭は真っ白になった。一方、「魔法で探知」と言ったローグの言葉に仮面の男たちは少し驚いた。

「ほう、防御と探知もできる魔法か……どんな魔法か知らないが、小僧、貴様には我々とともに来てもらおう。他の二人はいらないがな」 
「それじゃ、女とおっさんは死ね!」
「何だと!? 俺はともかく嬢ちゃんは関係ないだろ!」
「その女はすでに我々のことをある程度知ってしまった。魔法なしでない限り殺すしかない。外町で暮らしているなら魔法なしだろうがな」
「魔法なしなら生きてる価値ねえだろ? 殺すほうが救いだろ! ははははは!」
「なっ……てめえら……!」 
「……う、うう、……!」
(これが魔法協会か……こういう組織か……)

 魔法協会の追手、バルムドとハイドの言葉にルドガーは怒り、ミーラは恐怖とそれ以上に悔しさを感じた。一方、そのやり取りを見たローグは虚しさを感じていた。末端とはいえ魔法協会の者は命を粗末にしようとしている、必要のない犠牲を出そうとしている、裏切り者が出るほどに。ローグはそれが気に食わない。

「魔法協会の追手よ、ちょっといいか?」
「ああ?」
「何か質問か、我々と来るのが嫌だといっても来てもらうぞ?」
「そうじゃない。お前らはそこまで命を粗末にするのか? 魔法なしはそこまで価値が認められないのか?」
「は? 何言ってんだお前?」
「質問の意味が分からん。魔法の発展に比べれば命の価値など無視すべきだ。魔法なしは殺す価値すら怪しい。それくらい分かるだろ?」
「…………………………………………………………………………そうか」
「「…………」」

 ローグの中で魔法協会に対する評価が決まった瞬間だった。まともな線引きがされていないことは魔法の研究機関として危うい。良好な関係にはなれそうにない。最も、ローグの獲物を横取りした時点で第一印象は最悪だったのだが。

「お前らが俺に興味を持つのは当然だ。俺のほうは気に食わないがな、魔法協会は」
「ああ? 拒否するってのか?」
「ふん、やはりそうか。そっちから探っておきながらこんなところに逃げ込むようだからな。ならば、無理やり連れて行くだけだ、覚悟しろよ」
「くっ、坊主……!」
「ロー……!」

 バルムドとハイドが敵意をむき出した。ルドガーはミーラを守るように前に出た。そしてローグは、体全体から赤紫色の光を放ち始めた。

「「「「!」」」」
「悪いが覚悟するのはお前らのほうだ。お前らを倒して俺のほうから乗り込んでやるよ、魔法協会をつぶすためにな!」

 ローが敵意をむき出した。戦いの火ぶたが切って落とされたのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おっさんの異世界建国記

なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。

なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。 しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。 探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。 だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。 ――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。 Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。 Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。 それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。 失意の内に意識を失った一馬の脳裏に ――チュートリアルが完了しました。 と、いうシステムメッセージが流れる。 それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...