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第2章 奴隷編

変わり果てた少女

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「ロー……なの? 本当に……ローなの?」
「ああ、そうだよ。ローだよ。分かるかい? お…僕のことが?」

 ミーラの右目が信じられないものを見ているかのように大きく見開いた。やがて、その右目から涙が流れ始めた。

「う、う、うあああああああ! ごめんね! ごめんね! ロォォォオオオオオオオオオ!」
「うお!? ど、どうしたんだよ!?」
「嬢ちゃん!? 落ち着け! 落ち着けって!」
「ごめんね! ごめんね! うわああああああああん!」
 
 ミーラは何故かローグに、『ロー・ライト』にひたすら謝り続けている。しまいにはローグに地を這いながら抱き着こうとする始末だ。復讐の対象としてみていた彼女に抱き着かれるのは嫌だった(ついでに気味が悪かった)ローグは、後ずさり避け続けた。その様子を見たルドガーが、間に入ってミーラをなだめた。その隙にローグは小屋の外に逃げた。


 
 ミーラが落ち着くのを待ってる間に、ローグは考える。そして、この状況と今のミーラの姿を見てローグはおおよその事情を察した。

(ルドガーは魔法協会と言った……ミーラはこんな姿だ、動きも変だった……そして、魔法なしの『ロー・ライト』に謝り続けている……もしかして、魔法協会にミーラの魔法を……)
 
 考えをまとめた頃に、ミーラを連れたルドガーが小屋から出てきた。ミーラは相変わらずローブで左半身を隠している。

「おい坊主、嬢ちゃんはもう落ち着いたぜ。ほら、嬢ちゃん、落ち着いてなよ」
「は、はい。ありがとうルドガーさん。……う、ロー、ひ、久しぶり……」
「ああ、そうだな。ミーラは何か大変な目に合ったみたいだが、何があった? こんな場所で暮らしているなんて、その姿だって何を隠してるんだ?」
「そ、それは…………その…………」
「……魔法協会か」
「なっ!?」
「その様子だと魔法協会と何かあったんだな。ミーラ、つらいだろうけど詳しく話してくれないか? 話が聞きたい」
「!?…………うん……」

 魔法協会のことを口にしただけで、ミーラは反応した。ローグは自分の推測が当たっってしまったことを実感した。彼女から語られる魔法協会であったことはローグのほぼ予想通りだった。
 
「魔法協会は、最悪の場所だった……あいつらは……罪の無い人から魔法を奪ってた……」
「な、何だって!?(やっぱりか)」
「嬢ちゃん……」
「私は……それが許せなくて、出ていこうとして、……それで、捕まって、私も魔法を奪われた! う、う、うあああああああああ!」
「嬢ちゃん!」
「ミ、ミーラ!?」

 話してる最中にミーラは崩れ落ちるように膝をついた。その拍子に被っていたローブが脱げてしまった。そこでローグが見てしまったのは……。

「う!?」
(こ、これが、あのミーラなのか!? いくらなんでもこれは……!)

 左側の髪が、顔が、左手が、左足が、左半身からひどい火傷を負って、しかも痩せこけた痛々しい姿の少女だった。ローグは思い知ってしまった。復讐の対象だった少女は変わり果ててしまったことを。
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