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第0章 豹変編

魔術で魔法を奪う

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 村から出たローは、村を見渡せる山の上までやって来た。

「ここまで来ればいいか。俺までにかかるわけにはいかないからな」

 ローの言う魔術とは、魔法を科学的に解明する過程で発明された、魔法に使う魔力を応用した技術のことだ。魔術は魔法に比べて地味なものの方が多いが、多様性なら圧倒的に勝っているため、過去の時代では日常生活にまで溶け込んだほどだ。中には魔法を上回る大魔術も存在する。ローがこれから行う魔術はその大魔術で、大規模で大掛かりなものだ。なにしろ、村全体が対象となるのだから。

「さて、昨日の夜のうちに準備したんだけどうまくいくかな?」
 
 カバンから取り出した分厚い本を持ちながらローはつぶやく。
 ローは、復讐する前日の夜に村の四方に向かい、魔術を発動するのに必要な台座を作っていた。万が一、村人に発見されないように、なるべく人目につかない場所に作成したのだ。ローは本を開き魔力を通し始めた。この本もまた、魔術に使用するのだ。中身が白紙のこの本が。

「……迷宮から持ってきたけど問題なさそうだな。よし、魔術発動だ」

キイイイイイイイイイイイイイイイン!

 本に魔力を通すと光りだした。それと同時に、四方に用意した台座も、空に向かって強く光りだした。そして、四方の台座をつなぐような光の線が形成された。村を囲う柵のように。

「さあ、ここからが本番だ。うまくいってくれよな!」

 今度は、光の線に囲まれた村全体が光りだした。ローの持つ本にも変化が生じた。見開きから、文字が浮かび上がってきたのだ。

「これでいい。このまま続けていけば、あの村から魔法が無くなる!」
 
 ローが発動した魔術は、対象となった者たちから魔法を奪う魔術だ。過去の時代では、最悪の禁術として認定され、使用方法もごく一部のものしか知らないほどだった。そのごく一部に『ナイトウ・ログ』がいたため、ローは使うことができるのだ(そもそも『ナイトウ・ログ』がこの魔術の開発にたずさわっていたのだが)。
 奪われた魔法はローの持つ本に吸収される。つまり、文字が浮かび上がらなくなった時が、魔術が終わり、復讐の達成になるのだ。ローの魔力が足りていればの話だが。

「……くっ! 思ったより村人は結構いたみたいだな! ……それでも、今の俺の魔力なら! 多分、全員いけるはず!」

 ローグの魔術は、10分ほど続いた。その結果は……。
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