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序章 出会い編

第22話 襲われる!?/襲う!

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 俺達は十分話し合った後、早速外に出て……いくことはなかった。というのも、実は最後の部屋には左右にも部屋があったんだ。それに気づいていた俺達は、両方とも調べてみた。そこはダンジョンに似つかわしくないような部屋だった。

 右の部屋には、ベッドやソファーがあり、床は整った石造りでできていて、奥のほうにクローゼットや本棚があった。人が住んでいた跡があったのだ……汚いけどな。ていうか古臭い。

 左の部屋には、なんと温泉が湧いていた! しかも、あったかくて使える! こんなものがあるなんて感動しちまった! ……タオルと思しき汚い布が飾られていなけらばな。古いせいか、地味に見えるし。

 何故こんなものがあるんだろうと疑問に思った俺達は、右の部屋の本棚を調べてみた。そこで分かったのは、ここで初代魔王とその仲間たちが暮らしていたということだ。戦ってる間に使っていた隠れ家をダンジョンの最後の部屋にしたそうだ。……流用ってやつだな。

 更にこんなことも分かった! それは世界各地に隠された初代魔王のダンジョンの位置だった! どうやって探そうかと思っていたが、ここで場所だけは分かった! やったぜ! ……と言いたいところだが、一つだけ面倒なところにあるんだよな。複雑な気分になった。

 他にも、過去の世界の魔法や技術についての書物もあって、俺たち二人は大興奮しっぱなしだった! まあ、何か難しい内容もあったけどな。それに、ミエダによると超禁術シリーズの原点に繋がってるっていうし。もしかして、ヤバいもんまで見ちゃったかもしんない。……まあ! もう仕方によな! この知識は俺たちにとっても利用価値はあるしな、あはははは!

 だいぶ調べつくして終わった後、疲れをいやすためにもう寝ようということになった。ちょうど大きいベッドやソファーもあることだし、それに温泉もあるんだ、休むのにうってつけの設備がここにある、使わない手はない! ということで!

「「初代魔王様、使わせていただきます!」」



※…………


「ふい~、いいお湯だ~」

 なんていうか久しぶりな気がするな。……いや、こんなに癒された気分は初めてか? 俺って温泉に入ったのって初めてじゃないけど、ここまでいい気分になったことは無かったな。

「…………」

 初めて温泉に入ったのって、10代前の頃にメイドや執事と一緒に行った時以来かな。思えばその時から両親との関係は希薄だったんだな。

 ……ちっ、嫌なこと思い出しちまったぜ。でも今は、ミエダがいる。これから外で共に冒険に行く『相棒』がいつも隣に……

「ゼクトー、湯加減はどおー?」
「ん? おお、ちょうどいいぞー。てか、最高だぞー」
「そう、良かった。それじゃあ、私も今から入るわねー」
「おう! 分かっ……え?」

 あれ? 今、なんて言った? 「私も今から」? え? え?

ガタンッ

 ……扉が閉まった音が聞こえたけど……冗談……かな?

「本当に湯加減はよさそうね!」
「っ!?」

 すぐ後ろで声が聞こえた! まじか、マジなのか!? いくらなんでもそれは!? 俺は意を決して振り向いた! そして、その先にいたのは……一糸纏わぬミエダの姿があった。

「きっ、きぃいいやぁあああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 おおおおおお、女の! 女の子の! 美少女の裸がああああああ!! 
 すすすすすす、すぐ後ろにいいいいいい!!

「もう! どうしてそんな悲鳴を上げるのよ! 驚きすぎでしょ?」
「ミミミミミミ、ミエダっ!? お、おまっ、なんで!?」
「一緒に入りたいんだけど?」
「だっ、だけど、何で、はっ、裸!? タオルは!?」
「汚いタオルなんて拭くのは仕方ないけど体に巻きたくないんだけど?」
「ええー!?」

 恥じらいは無いのか!? 過去の世界の人だから!? 魔族の文化か!? 俺の目の前で、美少女の裸があるなんて!? ど、どう反応すれば……!?

「そう照れることないでしょ。こういうのはこれから慣れていかないと大変でしょ」
「ミ、ミエダ!? それで……」
「ついでに寝るときも一緒のベッドよ。異論は認めません。私達はコンビ、パートナーなんでしょ『アニキ』」
「っ!」

 ミエダが温泉にゆっくり入ってきた! そして、俺のすぐ隣に……ってあれ? ベッドも一緒!? 確かにコンビって言ったけど、そこでも一緒になるのか? そんなことになったら理性が保てそうにないんですけど! 俺が! いや、ミエダもか?

「ねえゼクト」
「はい!」
「もっと私を見てよ」
「はい!?」
「私はゼクトのものなんだからさぁ」
「は、は、は……?」

 ミエダが湯船から立ち上がり、俺のすぐ正面に来た。その姿は、色気があるっていうか、艶妖艶っていうか……神秘的にすら見えた。あまりにも美しくて見惚れてしまう。美少女の裸を始めて見てしまったせいか? ……もう何て表現すればいいんだろうかもう分かんないや。俺も勇者の子どもとして、ヨミ、ブレン、家のメイド、それにお袋と、たくさんの美少女や美女を見てきたけど、ミエダはそんな人たちとは全く別の美しさを誇る気がする。そんな人が俺の目の前で、上から下まで……。

「ゼクト……もう我慢できない!」
「ミ、ミエ……!」

 ミエダが俺に抱き着いてきた! しかも裸で! うおお、柔らかいし温かい! 人のぬくもりを直で感じる! こ、こんな日がこようとは! マズイ! このままだと理性が保てない!

 ミエダの体温だけじゃない。口から洩れる吐息が肌に掛かる。もしかして、今俺、襲われてる!? ああ、勝機が保てそうにない! 温泉の熱もあってか頭がクラクラする。そして、ミエダの唇が俺の唇に合わされる。あれ? 俺、キスされたの?

 頭の中で何かが外れる音がした。



※…………

 この後、俺は『おとこ』になった。
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