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番外編

悪役令嬢の妹⑦

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どうやら医者の女は、元は伯爵家の三女だったが好んで医学を学ぶうちに医者を目指して今に至るらしい。つまり、医者になるために貴族の家を出たというのだ。私は信じられなかった。

「な、なんで? 貴族の立場を捨てて医者になるなんて……」

そんなことを口に出すと、医者は笑って答えた。

「私は貴族の生き方が向かなくて、人を助けられる仕事がしたいと思ったのですよ。家族も反対しませんでした」

「は?」

家族も反対しないって、どういうこと? 貴族の立場をどうしてそんなに軽んじられるの?

「ワカナさん、どうしてって顔ですね」

それはそうでしょ。理解できないんだもの。

「選民意識の高い貴族の家で育ったようなワカナさんでは今は分からないでしょうね。貴族だろうと平民だろうと様々な生き方があるということです」

「様々な、生き方……?」

「貴族の家に生まれたからといって貴族でいられ続けるとは限らない。実際、ワカナさんは貴族籍から外れて今にいるのでしょう?」

「……!」

……そうだった。私のソノーザ家は取り潰されてしまったんだ。私も貴族籍を失った身の上。もう貴族じゃないと言われても仕方がないんだ。だから今に至るんだ。

「……そうだったわね。私はもう、貴族じゃ、ない……」

今更、思い知ったわ。私の家は多くの罪を背負っていたせいで裁かれてなくなった。その家の令嬢である私も貴族じゃなくなって当然なんだ。今になって気付くなんて、私はもう……。

「何なのよ……」

「ワカナさん……」

「もう何なのよ! 何で私がそんなことにならなきゃならないの!? 一体何がいけなかったのよ!? 何が悪かったのよ!? 何が間違っていたのよ!? 誰が悪いのよ!? どうして私が、私が……!」

どうして私がこんな目に。そう思うと喚かずにはいられない。もうやけくそだ!

頭の中がぐちゃぐちゃになる感覚に襲われる私。そんなときに先生が手を握って語りかけてきた。

「ワカナさん。確かに貴女の身の回りは短期間で大きく変化したと私も思います。貴女のいたソノーザ家は許されぬ罪を犯して裁かれました。ソノーザ家のことは貴方一人の責任ではありません。ですが、貴女がここに居るのは貴女自身にも責任があることなのです」

「私の、責任……?」

どういうこと? わけわかんない……。

「今のワカナさんではよく分からないかもしれませんが、これからそれが分かるように今の生活にもっと前向きになってみましょう。ワカナさんが今の生活を心から受け入れて、周りにも目を向けていけば世界が変わると思うんですよ」

世界が変わる?

「補足すると、今までの自分を見つめ直し反省できるように今を真面目に生きればいいってことですよ」

「……それで、何が変わるの?」

「ワカナさん自身です」

この時の先生と医者の言葉は難しく感じてよく分からなかったけど、不思議で心に残ってしまった。
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