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番外編
ザイーダ侯爵⑪
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ネフーミの結婚式には、両親と私が出席した。私たち三人は祝いの言葉を述べたが、ネフーミは笑っていない目で笑って感謝の言葉を返した。その言葉に感謝の気持ちがあるとは思えないくらいに。
この時には、マリアとダイドは来なかった。ダイドの家がトラブルを起こしたために二人がこなかったらしいと聞いた時は、ネフーミの結婚式に出たくなくて嘘をついたと思っていたが、実際にトラブルで出なかったから驚いたものだ。
……ダイドの両親の痴情のもつれが原因で向こうの家が大騒ぎ。確かに結婚式に出る余裕などなかっただろうな。
ただ、ネフーミの方はマリアとダイドが自分を避けたのだと思ったらしく、二人に関する会話を避けたりはぐらかすようになった。まあ、暴れたり癇癪を起さなくなったからましになったとも言えるか。
そんなネフーミや私達を見てもベーリュ・ヴァン・ソノーザは特に気にしないで結婚式を笑顔で過ごしていた。私達の雰囲気からネフーミのことを思っているわけではないと理解しているくせに笑顔でいられるんだからすごい。出世にしか興味ないから私達のことはどうでもいいのかもしれないな。本当にそういう男だったのだ。
◇
「……それからは、ネフーミとは滅多に合わなくなったのだったな。正式に絶縁したわけではないというのに」
思えば、あの結婚式が私達を分け隔てたきっかけになったのかもしれない。十年以上前に両親が行方不明になって死亡扱いになってしまったが、その両親の死もネフーミが公爵家となったソノーザ家の力で暗殺したと耳にした時は「やっぱり」という言葉が口にんでそうになったしな。あの時から私の中でネフーミは家族の枠から除外されていたのだ。
「私も冷酷な男だな。両親と姉が死んだというのに、もう過去のこととしか受け取れないとは」
両親と二人の姉はもういない。両親の死後、マリアもまたいなくなった。彼女が嫁いだターナル家が没落してダイドと共に貴族の世界を去ったのだ。そんな彼女のことも探そうとしない私は本当に冷酷だ。たとえザイーダ家の当主としてメンツを守るためだとしてもだ。
「……もしかしたら、元凶は私なのかもしれないな」
もし、もしもだ。子供の頃の私がネフーミを追い詰めようと画策しなければ、両親も二人の姉も死なずに済んだのかもしれない。もっと、私自身が家族と向き合っていれば……そう思ってしまう自分がいるのだ。
「本当に、私は何をすべきだったのかな」
そんな風に考えながら死んだ家族に思いをはせる。
そんな時だった。
「旦那様。王家から書簡が届きました」
「王家から? 私宛にですか?」
王家から書簡が届いたらしく、私は何事かと思ってそれを読んでみる。もしや、マリアのことで何か、と思ったが全く予想しなかった内容だった。それでいて決して小さな問題でもないないようだ。思わず初夏案を手から落としてしまうほどに。
「……修道院に送られたワカナが、妊娠?」
この時には、マリアとダイドは来なかった。ダイドの家がトラブルを起こしたために二人がこなかったらしいと聞いた時は、ネフーミの結婚式に出たくなくて嘘をついたと思っていたが、実際にトラブルで出なかったから驚いたものだ。
……ダイドの両親の痴情のもつれが原因で向こうの家が大騒ぎ。確かに結婚式に出る余裕などなかっただろうな。
ただ、ネフーミの方はマリアとダイドが自分を避けたのだと思ったらしく、二人に関する会話を避けたりはぐらかすようになった。まあ、暴れたり癇癪を起さなくなったからましになったとも言えるか。
そんなネフーミや私達を見てもベーリュ・ヴァン・ソノーザは特に気にしないで結婚式を笑顔で過ごしていた。私達の雰囲気からネフーミのことを思っているわけではないと理解しているくせに笑顔でいられるんだからすごい。出世にしか興味ないから私達のことはどうでもいいのかもしれないな。本当にそういう男だったのだ。
◇
「……それからは、ネフーミとは滅多に合わなくなったのだったな。正式に絶縁したわけではないというのに」
思えば、あの結婚式が私達を分け隔てたきっかけになったのかもしれない。十年以上前に両親が行方不明になって死亡扱いになってしまったが、その両親の死もネフーミが公爵家となったソノーザ家の力で暗殺したと耳にした時は「やっぱり」という言葉が口にんでそうになったしな。あの時から私の中でネフーミは家族の枠から除外されていたのだ。
「私も冷酷な男だな。両親と姉が死んだというのに、もう過去のこととしか受け取れないとは」
両親と二人の姉はもういない。両親の死後、マリアもまたいなくなった。彼女が嫁いだターナル家が没落してダイドと共に貴族の世界を去ったのだ。そんな彼女のことも探そうとしない私は本当に冷酷だ。たとえザイーダ家の当主としてメンツを守るためだとしてもだ。
「……もしかしたら、元凶は私なのかもしれないな」
もし、もしもだ。子供の頃の私がネフーミを追い詰めようと画策しなければ、両親も二人の姉も死なずに済んだのかもしれない。もっと、私自身が家族と向き合っていれば……そう思ってしまう自分がいるのだ。
「本当に、私は何をすべきだったのかな」
そんな風に考えながら死んだ家族に思いをはせる。
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「旦那様。王家から書簡が届きました」
「王家から? 私宛にですか?」
王家から書簡が届いたらしく、私は何事かと思ってそれを読んでみる。もしや、マリアのことで何か、と思ったが全く予想しなかった内容だった。それでいて決して小さな問題でもないないようだ。思わず初夏案を手から落としてしまうほどに。
「……修道院に送られたワカナが、妊娠?」
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