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番外編
ザイーダ侯爵⑥
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ネオンとウルスの協力を得た私は、次にダイドに面会を求めた。ネフーミの誕生日会のもう一人の主役になってしまいそうな男。マリアの婚約者であるから、その弟である私が求めれば会うことはたやすい。
「やあ、エクスじゃないか。今日はどうしたんだ?」
朗らかな笑顔で迎えてくれるダイドは、男である私が見ても本当に美男子だ。ネフーミが横恋慕しても仕方がないと思えるほどに。
「ダイド様と大事な話をしに来たんです。とりあえず二人だけにしていただけませんか?」
「ん? ああ、分かった。皆下がってくれ」
ダイドは使用人たちを部屋から出した。四人の使用人全員が侍女だったのは気になるが、そんなことは気にしていられなかった。
二人きりになれたのをいいことに私は姉ネフーミのことで事情を伝えた。頭が悪くて我儘なくせに、姉の婚約者だと分かっていてダイドに告白して結婚したがっていることを語ったのだ。
大まかな事情を知ったダイドは、大笑いした。
「ハハハハハ! あのネフーミが俺に告白? しかも誕生日パーティーで? マジかよ、馬鹿だとは思ってたけどそこまでとは思わなかったな~。子供のころから随分なついてた気がするけど、そうか、そんな風に思われてたのか。いやぁ、俺も罪な男だな~」
……ダイドはどこか軽薄なところがある。本来ならこんな話を聞けば不快な顔をするか怒るのに笑い出すから本当に軽薄な人だ。
「笑い事ではありませんよ。正直、あまりにも馬鹿げたネフーミ姉様には辟易してるんですよ。これを機にネフーミ姉様を懲らしめてやりたいんです」
「ハハ、悪い。要するにネフーミの告白を振ってやればいいんだろ? あいつ顔と体だけはいいんだけど頭が本当に悪いし能天気すぎんだよ。婚約者がいなくてもあんな女は受け入れるはずがないし御免だね。まあ、愛人なら大歓迎だけどさ」
「そ、そうですよね。受け入れられないですよね……」
……愛人ならいいのか、とこの時は思ったが口に出すわけにはいかない。こんなことを口にする時点でちょっとイラッときたが仮にも姉マリアの婚約者だ。下手なことを言うわけにはいかない。
「それでは、ネフーミの告白を『軽い冗談』だと口にして『マリアを愛している』と言ってくださいませんか? 振られたうえに冗談だと思われて相手にされなかった、と思わせればかなり落ち込むと思うんです」
「なーるほど、『軽い冗談』を口にしただけだ、と親戚中が認識すれば極端な噂話にはならないってわけか。流石はエクス。ザイーダ家の嫡男様は頭脳明晰だな! よし! 任せておけよ! ネフーミの馬鹿さ加減にお灸をすえてやろうじゃないか!」
「はい。お願いします」
ひとまず、これで肝心のダイドも協力してくれることになった。この時の彼の言動は思うところがあったから少し心配にもなったが、誕生日パーティーではうまくやってくれた。
「やあ、エクスじゃないか。今日はどうしたんだ?」
朗らかな笑顔で迎えてくれるダイドは、男である私が見ても本当に美男子だ。ネフーミが横恋慕しても仕方がないと思えるほどに。
「ダイド様と大事な話をしに来たんです。とりあえず二人だけにしていただけませんか?」
「ん? ああ、分かった。皆下がってくれ」
ダイドは使用人たちを部屋から出した。四人の使用人全員が侍女だったのは気になるが、そんなことは気にしていられなかった。
二人きりになれたのをいいことに私は姉ネフーミのことで事情を伝えた。頭が悪くて我儘なくせに、姉の婚約者だと分かっていてダイドに告白して結婚したがっていることを語ったのだ。
大まかな事情を知ったダイドは、大笑いした。
「ハハハハハ! あのネフーミが俺に告白? しかも誕生日パーティーで? マジかよ、馬鹿だとは思ってたけどそこまでとは思わなかったな~。子供のころから随分なついてた気がするけど、そうか、そんな風に思われてたのか。いやぁ、俺も罪な男だな~」
……ダイドはどこか軽薄なところがある。本来ならこんな話を聞けば不快な顔をするか怒るのに笑い出すから本当に軽薄な人だ。
「笑い事ではありませんよ。正直、あまりにも馬鹿げたネフーミ姉様には辟易してるんですよ。これを機にネフーミ姉様を懲らしめてやりたいんです」
「ハハ、悪い。要するにネフーミの告白を振ってやればいいんだろ? あいつ顔と体だけはいいんだけど頭が本当に悪いし能天気すぎんだよ。婚約者がいなくてもあんな女は受け入れるはずがないし御免だね。まあ、愛人なら大歓迎だけどさ」
「そ、そうですよね。受け入れられないですよね……」
……愛人ならいいのか、とこの時は思ったが口に出すわけにはいかない。こんなことを口にする時点でちょっとイラッときたが仮にも姉マリアの婚約者だ。下手なことを言うわけにはいかない。
「それでは、ネフーミの告白を『軽い冗談』だと口にして『マリアを愛している』と言ってくださいませんか? 振られたうえに冗談だと思われて相手にされなかった、と思わせればかなり落ち込むと思うんです」
「なーるほど、『軽い冗談』を口にしただけだ、と親戚中が認識すれば極端な噂話にはならないってわけか。流石はエクス。ザイーダ家の嫡男様は頭脳明晰だな! よし! 任せておけよ! ネフーミの馬鹿さ加減にお灸をすえてやろうじゃないか!」
「はい。お願いします」
ひとまず、これで肝心のダイドも協力してくれることになった。この時の彼の言動は思うところがあったから少し心配にもなったが、誕生日パーティーではうまくやってくれた。
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