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番外編
公爵夫人⑦
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弟に自室に連れられた私は、部屋の真ん中で佇んだまま、悔しさと悲しさと怒りが頭の中を支配していた。
「どうして私じゃダメなのよ……私は一番美しくて愛されているでしょ……何でお姉さまなのよ……」
自問自答もしたが納得できない。ただ、弟の言った言葉が頭に残っている。『二人の絆は脆くない』とか『マリア姉様だけしか見ていない』とか、私にとって耐え難い言葉でもあるが考えてみれば少し納得する。私もあの二人を見てきただけに。
「……それじゃあ、ダイド様は私を見てなかったの? 優しくしてくれたのは、お姉さまのついでだったってことなの? ダイド様にとっての一番はお姉さまだったというの? ……だったら、私は何だったのよ!」
考えた末に『ダイド様は私のことを蔑ろにしてきたんだ』と思った。そんなのは裏切りだ、絶対に許せない。だからこそ私は怒り狂って暴れまわった。机や意椅子を蹴り飛ばし、花瓶や窓を割り、本棚の本をぶちまけ、怒りを叫び続けた。
「ムキー! ふっざけんじゃないわよ! 私のことを何だと思ってんのよ! 馬鹿にしないで! 女神のごとき美しさを誇るこの私よりもお姉さまを選ぶなんて頭おかしいでしょ! ムッキー!」
ダイド様に対する愛が憎しみに変わったのだ。私の思いは踏みにじられた、弄ばれたんだと思って激しく憎んだのだ。その怒りを部屋の中で暴れることで発散してしまったのだ。自分の部屋を自分で破壊しつくす私。他の誰かが見れば私の姿は化け物のように見えるだろう。
………実際に見られていたから大変だった。実の家族に。
「ネフーミ! もうやめろ!」
「ネフーミ! お願いだからもうやめて!」
「ネフーミ姉様! もういい加減にしろよ!」
それは実の両親と弟だった。
「…………え?」
三人の声を聞いて私は我に返った。正気を取り戻した私が見たものは、さんざん破壊しつくされて荒れ果てた私の部屋と悲しそうな目で私を見る両親と弟だった。
「……な、え? これは、わ、私、なにをやって……」
更に着ていた服もボロボロになっていた。この日は誕生日会のために用意されたドレスを着ていたが、もうドレスと思えないほど破れ切っていた。自分の部屋も貴族令嬢の部屋には見えないくらい酷いありさまだ。
「これ、私が、やったの……」
呆然として呟くと父と母がゆっくり近づいてくる。そして、二人して静かな怒りをぶつけてきた。
「ネフーミよ。お前がここまで馬鹿だったとは思ってもいなかった。部屋で暴れまわることもそうだが、それ以上に誕生日パーティーで姉から婚約者を奪おうとするとはな。それも実の姉が見ている前でとは……。幸い、ダイド君もマリアもただの冗談だと思てくれているからよかったが、場合によっては酷い醜聞のネタ話になるところだったんだぞ? いや、もうなっている。何てことしてくれたんだ……!」
「そ、そんな……何よそれ……」
私はたじろいだ。いつもと雰囲気の違う両親に気圧されたのだ。
「どうして私じゃダメなのよ……私は一番美しくて愛されているでしょ……何でお姉さまなのよ……」
自問自答もしたが納得できない。ただ、弟の言った言葉が頭に残っている。『二人の絆は脆くない』とか『マリア姉様だけしか見ていない』とか、私にとって耐え難い言葉でもあるが考えてみれば少し納得する。私もあの二人を見てきただけに。
「……それじゃあ、ダイド様は私を見てなかったの? 優しくしてくれたのは、お姉さまのついでだったってことなの? ダイド様にとっての一番はお姉さまだったというの? ……だったら、私は何だったのよ!」
考えた末に『ダイド様は私のことを蔑ろにしてきたんだ』と思った。そんなのは裏切りだ、絶対に許せない。だからこそ私は怒り狂って暴れまわった。机や意椅子を蹴り飛ばし、花瓶や窓を割り、本棚の本をぶちまけ、怒りを叫び続けた。
「ムキー! ふっざけんじゃないわよ! 私のことを何だと思ってんのよ! 馬鹿にしないで! 女神のごとき美しさを誇るこの私よりもお姉さまを選ぶなんて頭おかしいでしょ! ムッキー!」
ダイド様に対する愛が憎しみに変わったのだ。私の思いは踏みにじられた、弄ばれたんだと思って激しく憎んだのだ。その怒りを部屋の中で暴れることで発散してしまったのだ。自分の部屋を自分で破壊しつくす私。他の誰かが見れば私の姿は化け物のように見えるだろう。
………実際に見られていたから大変だった。実の家族に。
「ネフーミ! もうやめろ!」
「ネフーミ! お願いだからもうやめて!」
「ネフーミ姉様! もういい加減にしろよ!」
それは実の両親と弟だった。
「…………え?」
三人の声を聞いて私は我に返った。正気を取り戻した私が見たものは、さんざん破壊しつくされて荒れ果てた私の部屋と悲しそうな目で私を見る両親と弟だった。
「……な、え? これは、わ、私、なにをやって……」
更に着ていた服もボロボロになっていた。この日は誕生日会のために用意されたドレスを着ていたが、もうドレスと思えないほど破れ切っていた。自分の部屋も貴族令嬢の部屋には見えないくらい酷いありさまだ。
「これ、私が、やったの……」
呆然として呟くと父と母がゆっくり近づいてくる。そして、二人して静かな怒りをぶつけてきた。
「ネフーミよ。お前がここまで馬鹿だったとは思ってもいなかった。部屋で暴れまわることもそうだが、それ以上に誕生日パーティーで姉から婚約者を奪おうとするとはな。それも実の姉が見ている前でとは……。幸い、ダイド君もマリアもただの冗談だと思てくれているからよかったが、場合によっては酷い醜聞のネタ話になるところだったんだぞ? いや、もうなっている。何てことしてくれたんだ……!」
「そ、そんな……何よそれ……」
私はたじろいだ。いつもと雰囲気の違う両親に気圧されたのだ。
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