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番外編

公爵夫人③

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私の旧姓はザイーダ。結婚する前はネフーミ・ヴァン・ザイーダ侯爵令嬢だった。ザイーダ侯爵家は上級貴族で領地は少し寂しい感じだったが裕福な暮らしができていた。

ザイーダ家にいた頃の私の家族構成は、私と両親と姉と弟の五人家族。私は非常に美人だったおかげで両親に愛されて育ち、姉は私に劣るけどそこそこの美人だが両親は姉よりも私を優先してくれた。弟はザイーダ家を継ぐため厳しく育てられてきたことはよく覚えている。姉妹格差とまではいかないけど、私は姉や弟よりも愛されていたことは間違いなかった。

姉の婚約者が『彼』でなければ、それは変わらなかっただろう。





父が言った。姉のマリア・ヴァン・ザイーダの結婚が確定した、と。その相手は私もよく知っていた。

「マリア。お前の婚約者のダイド・イー・ターナル侯爵令息との結婚が決まった。卒業と同時にお前たちは正式な夫婦になる。幼馴染の彼と良好な夫婦になって幸せになるんだぞ」

「はい、お父様」

ダイド・イー・ターナル侯爵令息。私達姉妹とは幼馴染で、銀髪碧眼の美形で優しくて穏やかな性格の人だった。親同士のよしみで、姉とは幼い頃から婚約が決まっていたため姉とは仲がいい。当然、私も優しくて仲良くしていた。私も姉と同じように彼のことが好きだったから。

だからこそ、こんなふうに思っていた。

「どうして私じゃなくてお姉さまが彼の婚約者なの? 私のほうがいいに決まっているわ」

私の方が姉より美しく両親に愛されている。だから私の方が適任なはず。そう思って父に婚約者を私に変えるように願い出た。そうすれば父も喜んで変えてくれるはず。そう思っていた。それなのに予想外の言葉が返ってきた。

「それはできない話だ。あの二人の婚約はお前が産まれる前から決まっていたことでもある。それを今更取り消すことにはできないし、そんなことをすれば二人が可哀そうだ。お前の気持ちだけを優先することはできないよ」

この時、私はショックだった。私を甘やかしてくれるはずの父が私のお願いを無視したのだ。その後も何度も願い出ても父は首を縦に振ることは無かった。挙句には、こんなことまで……。

「はあ……。お前がここまで我儘が過ぎるとは思ってもいなかった。あまりにも可愛くて甘やかしてしまったがそれがいけなかったのだな。私の責任だ。これからはもう少し厳しくしなくてはな」

その時の父の顔は心底がっかりしたと見て分かるものだった。後になって私に幻滅したと思ったのだと理解した。父に何を言ってもダメなのだと悟った私は母に話を持ち掛けることにした。
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