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番外編

悪徳公爵⑦

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私の婚約を家族に伝えると、当然のように皆喜んだものだ。相手が爵位が上の相手ということもあって、驚きも大きかったのだ。

「やったぞ! 遂に俺の結婚相手が決まった!」

「本当か、ベーリュ! でかしたぞ!」

「良かったわね、ベーリュ! 偉いわ!」

「ベーリュ兄さま、おめでとうございます!」

「……おめでとう、兄さん」

両親は大喜び、イゴナは尊敬の眼差し、フィリップスは控えめに祝ってくれた。この中で私が気をよくしたのはフィリップスの態度だ。

よそよそしい感じからして私の婚約も何か裏があると感じ取ったのだろうな。それでいい。それでいいのだ。それくらいの洞察力があったほうが貴族として正解なのだ。無能な両親やイゴナと違って安心できる。

ただ、私よりもできる男であれば私個人にとっては脅威になりかねないがな。できれば、私の取り巻きのルーカス・ウィン・コキアのようにいて欲しかった。コキア家は祖父の代から我がソノーザ家に従っていた家だ。ルーカスも私のために随分と働いてくれたものだ。ソノーザ家が成り上がると比例してコキア家も少しだが成り上がったから関係は良好だったといえる。……私の代で潰してしまうまではな。

それなのに、フィリップスは私の、ソノーザ家の元から離れていった。妹の、イゴナの婚約が確定した時にだ。正確にはその日から一か月くらいたった後かな? あの時は皆驚かされたものだ。地位も名誉も学業すらも捨ててしまったのだからな。

家族みんながフィリップスを失ったことを嘆いていたが私は怒り心頭だった。

「くそ! 何を考えているんだ、あいつは! 我が家の面汚しめが!」

無能な家族のことは好きではなかったが、私のように思慮深いフィリップスのことは嫌いではなかったのだ。だからこそ私は心の内に秘めた本音をあいつにだけは打ち明かしてきたのだ。私が起こしてきた事件の真相すらも。それなのに、私から逃げ出したというのか……?




ふざけるな!




居なくなったフィリップスに対する怒りは消えない。その怒りから目をそらすために私はますます出世欲に駆り立てられるようになる。その過程で多くの事件を起こし、そのたびに罪を背負う。



そして、気が付けば死刑台にまであと数歩だ。
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