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番外編
悪徳公爵⑤
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ザンタ・メイ・ミークの姉か妹かは忘れたが名前は確かサチナだったな。彼女はいじめを告発された後は孤立している。そんな彼女をまたけしかけて、今度は傷害事件でも起こしてもらおう。もっとも、以前の事件で警戒心が高くなっているだろうから、遠回しに麻薬を飲ませて思考判断能力を鈍らせてやった。その麻薬は我が国で禁止されているから見つかればただでは済まないだろう……ザンタの家がな。
いい感じに判断能力が鈍ったのを確認して、彼女がいじめを行った平民の女が幸せにしているという情報を吹き込む。嘘ではないから案の定、逆恨みで怒り狂い凶器をもって殺害計画を企ててくれた。私の目の前で。おかげで場所も分かったから、フィリップスに目撃者になってもらおうとこの時思ったのだったな。不審に思われたがフィリップスは私の言われた通りに動いてくれた。
……そのせいでフィリップスが大けがを負った時は本当にショックだったのを今でも覚えている。まさか、あんなことになるとは思ってもいなかった。まさか、フィリップスが意を挺して見ず知らずの平民の女なんかを助けるために動くなんて……。私のせいで、フィリップスは一時生死をさまよい、全治一か月以上の怪我を負った。
フィリップスの怪我は口には出せなかったが私の責任でもある。そう思った私は何としてでもサチナとミーク家に罪をなすりつけなければならないと思った。だからこそ、人を刺したことに恐怖して怯えるサチナにジンノが誤って飲んでしまったものと同じ毒物を秘密裏に送って、彼女がそれを飲んで自殺することを望んだ。麻薬で正常な判断ができないなら飲んでしまうだろうと考えたからだ。
だが、結果は私の予想を上回るものになった。サチナが傷害事件の容疑者として捕らえられたうえにミーク家を取り調べられることによって、最終的にミーク家が取り潰されたのだ。どうも麻薬と毒薬が見つかって、罪状が大きくなったのだ。毒薬も王太子が飲んでしまった者と一致したせいで周りからの信用も失い、屋敷で見つかったこともあって家の当主の陰謀とみなされて貴族の地位を剥奪ということに……。
この時は、どうしようもなく喜んだものだな……。
更には、我が家に幸運が巡ってきたのだ。平民の女を庇ったフィリップスの功績を称賛されてソノーザ家が昇格することになった。
「フィリップス、偉いぞ」
「貴方は我が家の誇りだわ」
「フィリップス兄さま、素敵です!」
家族全員がフィリップスを祝う。祝わずにはいられなかった。この私も含めて。
「フィリップス、よくやったぞ。通り魔になり下がった女から女学生を守りぬくなんて貴族の鏡じゃないか」
……この時は本当に心から、そう思った。私は人を犠牲にするばかりで、自分を犠牲にすることは大体避けている。それとは反対に己の身を顧みないフィリップスの行動はまぶしく見えたからだ。
本当に苛立たしかったよ、フィリップス。
いい感じに判断能力が鈍ったのを確認して、彼女がいじめを行った平民の女が幸せにしているという情報を吹き込む。嘘ではないから案の定、逆恨みで怒り狂い凶器をもって殺害計画を企ててくれた。私の目の前で。おかげで場所も分かったから、フィリップスに目撃者になってもらおうとこの時思ったのだったな。不審に思われたがフィリップスは私の言われた通りに動いてくれた。
……そのせいでフィリップスが大けがを負った時は本当にショックだったのを今でも覚えている。まさか、あんなことになるとは思ってもいなかった。まさか、フィリップスが意を挺して見ず知らずの平民の女なんかを助けるために動くなんて……。私のせいで、フィリップスは一時生死をさまよい、全治一か月以上の怪我を負った。
フィリップスの怪我は口には出せなかったが私の責任でもある。そう思った私は何としてでもサチナとミーク家に罪をなすりつけなければならないと思った。だからこそ、人を刺したことに恐怖して怯えるサチナにジンノが誤って飲んでしまったものと同じ毒物を秘密裏に送って、彼女がそれを飲んで自殺することを望んだ。麻薬で正常な判断ができないなら飲んでしまうだろうと考えたからだ。
だが、結果は私の予想を上回るものになった。サチナが傷害事件の容疑者として捕らえられたうえにミーク家を取り調べられることによって、最終的にミーク家が取り潰されたのだ。どうも麻薬と毒薬が見つかって、罪状が大きくなったのだ。毒薬も王太子が飲んでしまった者と一致したせいで周りからの信用も失い、屋敷で見つかったこともあって家の当主の陰謀とみなされて貴族の地位を剥奪ということに……。
この時は、どうしようもなく喜んだものだな……。
更には、我が家に幸運が巡ってきたのだ。平民の女を庇ったフィリップスの功績を称賛されてソノーザ家が昇格することになった。
「フィリップス、偉いぞ」
「貴方は我が家の誇りだわ」
「フィリップス兄さま、素敵です!」
家族全員がフィリップスを祝う。祝わずにはいられなかった。この私も含めて。
「フィリップス、よくやったぞ。通り魔になり下がった女から女学生を守りぬくなんて貴族の鏡じゃないか」
……この時は本当に心から、そう思った。私は人を犠牲にするばかりで、自分を犠牲にすることは大体避けている。それとは反対に己の身を顧みないフィリップスの行動はまぶしく見えたからだ。
本当に苛立たしかったよ、フィリップス。
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