七人の勇者が世界を変えるまでの長い道のり 〜勇者が魔王を倒して人魔大戦を終わらせて平和をもたらす物語〜

mimiaizu

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 これで、まともに戦えるのは結界で仲間三人を守るポエイムを除けば、セイブンとヘルメイトとエアストの三人だけになった。


「くくく、まさか妾との戦いの中で負傷した仲間を見捨てずに結界で守るとはな。ここまで仲間のために行動できるとは素晴らしい心意気だ」

「うるせえ! 余裕見せやがって! 仲間を見捨てるなんざ俺にできる分けねえだろうがよ!」

「そうか? 妾が余裕に見えるか? 貴様の目は節穴のようだな。まあ、妾と違って魔眼もないしな」

「別に節穴でもねえよ。笑っていても結構傷だらけなのは分かってんだからよ!」

「ほう……」


 セイブンの言う通り魔王ターレナ・コロクはそこそこ疲労していた。彼女の魔力量は魔王軍大元帥の約二人分以上のものなのだが、流石に勇者七人を相手に魔力を使いすぎた。


(ちっ、流石に勇者と言うだけのことはあるか。そうでなければ妾がここまで時間をかけることは無いしな)

「まだだ、俺達はまだ戦える。この戦争を終わらせるためにもここでお前を倒す! そのために俺は勇者になったんだ!」

「ふっ、戦争を終わらせるか。その思いは我らも同じだ。貴様ら人類を滅ぼして魔族の未来を繋ぐのだ! カラミティストーム!」


 赤黒い闇の竜巻がセイブンに向かっていくが、セイブンは聖剣を突き出して相殺を試みる。


「聖剣ストーム!」


 聖剣から光の竜巻が放たれて、魔王の放った魔法とぶつかった。そして見事に相殺することに成功した。その事実に魔王は驚いた。


「何? 相殺できたというのか!」

「……魔王、別に俺達は、俺は魔族を滅ぼすつもりはねえぞ?」

「何?」

「俺達人類は勝つ。その先に目指すのは魔族滅亡じゃねえ。人類と魔族の共存だ!」

「っ!?」


 魔王はセイブンを凝視する。何を言い出すのか本気で気になったからだ。


「何を言い出すのだ。我らは種族の存亡をかけて戦っておるのだぞ。貴様は己の言葉の意味することを重みを分かっておるのか?」

「分かっているさ。険しい道になることくらいはな。だが、俺の理想はもう俺だけのものじゃねえ。仲間たちの、平和を望む人々の全員の理想だ! そこには人類と魔族の種族の壁もいらねえ! 俺達がそんな壁を乗り越えてやるんだ!」

「馬鹿な……我らが一体どれほどの血を流し憎しみあってきたと思っておるのだ。それなのに、今更共存などと夢物語をほざくな!」


 己の、平和を望む人々の理想を叫ぶセイブン。その叫びに呼応するかのように、ヘルメイトやエアストも会話に加わる。


「魔王、セイブンの言う通りだ! 争うって滅ぼし合うのはもうきりがない。血を流し合い憎しみあってきた過去は消えない。だが、それを乗り越えて俺達は共存できる世界を目指すんだ!」

「その通りでござる! きっと魔族の中にもそういう理想を抱く者もいるはずでござる! 魔族だって『人』なのでござろう!」

「っ、貴様ら……!」


 魔王は狼狽える。理由は勇者たちの語る理想だ。『人類と魔族の共存』など聞く者の多くが戯言とか夢物語と思う者が多いが、エアストの言う通り魔族の中にも平和を望む声も少なくはない。争って滅ぼし合うのもきりがないのも一理あるのも頷けることでもある。


(しかし、今更引けるものではない。こ奴らはそう言うことが分かっていない。であれば、妾は魔王としてその役目を果たすために戦うのみ!)

「ならば、妾は魔王として魔族の理想のために戦う! そのためにも貴様らをここで討つ! 激怒獣牙(げきどじゅうが)!」


 赤黒い獣の牙のようなオーラを纏った剣がセイブンに振るわれる。彼の後ろには結界に守られた仲間たちがいるため、セイブンは避けることはできない。だが、今戦える勇者はセイブンだけではない。


「帝国剣術『十円舞斬撃』!」

「忍法『飛剣陣・燕の如し』!」


 ヘルメイトの剣とエアストの手裏剣が魔王の攻撃を防いだ。ヘルメイトの剣が魔王の剣とぶつかり、牙のオーラをエアストの手裏剣がかき消したのだ。その事実に魔王はまたもや驚かされる。


「何だと!? 貴様らもまだこんな余力を残していたのか!」

「俺達は勇者だ! このぐらいのことはできて当然だ!」

「あまり舐めないでほしいでござる!」

「どうだ! これが俺の仲間だ! 魔王、俺達の戦いはこれからだ!」


 セイブンの言う通り、ここから少しずつ戦況が変化するのであった。
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