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9.掃除!
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「あれから1年か……」
女神と少年ーーシレンと冬樹が一緒に暮らしはじめて、ちょうど一年が過ぎた。その事実に気づいたのは、シレンが家出家事をしている最中にカレンダーが目に入った時だった。思えばちょうどぴったり一年だった。
「ふん。時が過ぎるのは早いものだな。だが、思えば濃い一年であったものだ」
シレンは家事を終えて、休憩に入りながら、一年前の出来事を思い出す。
ーー1年前ーー
冬樹の祖父の家で、シレンと冬樹の共同生活が始まった直後、思わぬ問題が二人に降りかかった。
「な、何だこの家は!」
「え!?」
そう叫ぶのはシレンだった。普通、女神が怒鳴れば周囲の物体は破壊され周りの人々はそれだけで精神に悪影響を及ぼすのだが、この場ではそんなことはなかった。それもそのはず、シレンは神の力を失っているのだから傍にいる冬樹は驚くだけで済んだ。不幸中の幸いである。
「どうしたの?」
「どうしたもこうしたもないわ! どうしてこの家はこんなにゴミが散らかっておるのだ!」
シレンが言っているのは事実だ。家に入って最初に目にはいるのがゴミ袋ばかりなのだ。しかも、家のあちこちに放置されていて、そこそこ臭いが漂う。
「ごめんね。おじいちゃんが死んでからどうすればいいかわからなくて」
「だとしてもだ! これはないだろ! せめて外に捨てろ!」
「お外が汚れちゃうよ?」
「家の中が汚れるよりはましだぁぁぁ!」
そういうわけで、共同生活が始まった最初の日は、二人で仲良く(?)家の大掃除から始まった。シレンにとっても冬樹にとっても、これがかなり苦労させられた。何故なら、幼子と世間知らずの女神。二人とも掃除の仕方など分からないのだ。
とりあえず外に出しただけだが、何とかゴミを片付けられた。しかし、その時はもう夕方にまでなっていた。
「はぁ、もうこんな時間か」
「うん、大変だったね」
「全くだ。何故この私がこんなことを………」
文句を呟くシレンだったが、頭の中は自分のことではなかった。どちらかというと自分に使えていた人間たちを思い浮かべていた。
(……ゴミを片付けるだけでこれほどの重労働尾を課せられるなんて。私が、私達が人間たちに任せていたことがこんなに大変だったとは。人間も案外有能なのだな)
女神と少年ーーシレンと冬樹が一緒に暮らしはじめて、ちょうど一年が過ぎた。その事実に気づいたのは、シレンが家出家事をしている最中にカレンダーが目に入った時だった。思えばちょうどぴったり一年だった。
「ふん。時が過ぎるのは早いものだな。だが、思えば濃い一年であったものだ」
シレンは家事を終えて、休憩に入りながら、一年前の出来事を思い出す。
ーー1年前ーー
冬樹の祖父の家で、シレンと冬樹の共同生活が始まった直後、思わぬ問題が二人に降りかかった。
「な、何だこの家は!」
「え!?」
そう叫ぶのはシレンだった。普通、女神が怒鳴れば周囲の物体は破壊され周りの人々はそれだけで精神に悪影響を及ぼすのだが、この場ではそんなことはなかった。それもそのはず、シレンは神の力を失っているのだから傍にいる冬樹は驚くだけで済んだ。不幸中の幸いである。
「どうしたの?」
「どうしたもこうしたもないわ! どうしてこの家はこんなにゴミが散らかっておるのだ!」
シレンが言っているのは事実だ。家に入って最初に目にはいるのがゴミ袋ばかりなのだ。しかも、家のあちこちに放置されていて、そこそこ臭いが漂う。
「ごめんね。おじいちゃんが死んでからどうすればいいかわからなくて」
「だとしてもだ! これはないだろ! せめて外に捨てろ!」
「お外が汚れちゃうよ?」
「家の中が汚れるよりはましだぁぁぁ!」
そういうわけで、共同生活が始まった最初の日は、二人で仲良く(?)家の大掃除から始まった。シレンにとっても冬樹にとっても、これがかなり苦労させられた。何故なら、幼子と世間知らずの女神。二人とも掃除の仕方など分からないのだ。
とりあえず外に出しただけだが、何とかゴミを片付けられた。しかし、その時はもう夕方にまでなっていた。
「はぁ、もうこんな時間か」
「うん、大変だったね」
「全くだ。何故この私がこんなことを………」
文句を呟くシレンだったが、頭の中は自分のことではなかった。どちらかというと自分に使えていた人間たちを思い浮かべていた。
(……ゴミを片付けるだけでこれほどの重労働尾を課せられるなんて。私が、私達が人間たちに任せていたことがこんなに大変だったとは。人間も案外有能なのだな)
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