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53.日記〇×年〇〇月29日
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ーフィリップスの日記よりー
〇×年〇〇月29日
遂に私と妹のイゴナがウィンドウ学園に入学する準備が整った。学園の制服も昨日仕立てあがったばかりだ。兄さんと色違いになるのは良かった。お下がりをもらうのは気恥ずかしいし、色までお揃いだと何か気が引けるから、年度別に制服の色を変える仕組みはありがたかった。
「明日から私達も学生ですね!」
「ああ。楽しい生活ができるといいね」
「はい!」
可憐なイゴナの笑顔は私の心の支えだ。両親は頼りないし、兄さんは苦手だからな。兄さんと言えば最近、おかしな感じがする。いや、怖くなったというべきかな。数か月前に「心を入れ替える」と言っていたのに、以前にもまして出世にこだわるようになった気がする。家族に八つ当たりするようなことは無くなったけど、これは私の気のせいじゃないと思う。
だけど、兄さんに直接問い質そうという気はしなかった。これは私が兄さんに苦手意識を持っているというだけじゃない。兄さんは王太子殿下の取り巻きだ。今のまま問題もなければソノーザ家の出世に繋がる可能性は否定できない。私が兄さんに何か余計なことを言ってそれがもとで台無しになりましたじゃ話にならない。
でも、気にはなっていた。だから、学園生活の方だけ聞いてみた。これぐらいなら問題ないだろう。
「兄さん、最近はどう?」
「ん? ああ、王太子殿下の取り巻きは大変だよ。いつも緊張するけど顔に出せないし、周りはに嫉妬されるし、立場が上の先輩にもこき使われるしよ。やることが多いかな」
「そうなんだ。大変なんだね」
やはり王太子殿下の取り巻きは相当苦労するらしい。兄さんが変わった気がするのはそのせいだろうか?
「お前たちももうすぐ入学する。その時には俺の力になってもらうぞ。我がソノーザ家のためにもな」
「分かってるよ。私も家が大きくなることは望んでいるからね」
「ははは、嬉しいぞ。入学式の時、生徒会の人たちが挨拶してくれるからしっかり見ておけよ」
「? 分かった。生徒会だね」
生徒会か。確か王太子殿下も今年はいるんだっけ? それがどうしたんだろう?
〇×年〇〇月29日
遂に私と妹のイゴナがウィンドウ学園に入学する準備が整った。学園の制服も昨日仕立てあがったばかりだ。兄さんと色違いになるのは良かった。お下がりをもらうのは気恥ずかしいし、色までお揃いだと何か気が引けるから、年度別に制服の色を変える仕組みはありがたかった。
「明日から私達も学生ですね!」
「ああ。楽しい生活ができるといいね」
「はい!」
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だけど、兄さんに直接問い質そうという気はしなかった。これは私が兄さんに苦手意識を持っているというだけじゃない。兄さんは王太子殿下の取り巻きだ。今のまま問題もなければソノーザ家の出世に繋がる可能性は否定できない。私が兄さんに何か余計なことを言ってそれがもとで台無しになりましたじゃ話にならない。
でも、気にはなっていた。だから、学園生活の方だけ聞いてみた。これぐらいなら問題ないだろう。
「兄さん、最近はどう?」
「ん? ああ、王太子殿下の取り巻きは大変だよ。いつも緊張するけど顔に出せないし、周りはに嫉妬されるし、立場が上の先輩にもこき使われるしよ。やることが多いかな」
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やはり王太子殿下の取り巻きは相当苦労するらしい。兄さんが変わった気がするのはそのせいだろうか?
「お前たちももうすぐ入学する。その時には俺の力になってもらうぞ。我がソノーザ家のためにもな」
「分かってるよ。私も家が大きくなることは望んでいるからね」
「ははは、嬉しいぞ。入学式の時、生徒会の人たちが挨拶してくれるからしっかり見ておけよ」
「? 分かった。生徒会だね」
生徒会か。確か王太子殿下も今年はいるんだっけ? それがどうしたんだろう?
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