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20.教えてやる?
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「……公爵、失礼を承知で言わせてもらうが覚悟はいいか……! 」
「で、殿下……」
ベーリュはたじろぐ。何故なら、目の前の王太子が見るからに怒りが爆発しているのだ。
「ふざけるな! 公爵家は一体どうなってるんだ! 姉が地味で妹が可愛かったから愛情が偏った? 美醜がどうだろうと子供というのは同じくらい愛情を注いで育てるものだろうが! それができなくて妹の方が馬鹿になったんだろうが! サエナリアはあんなに優秀になったというのに!」
「た、確かにサエナリアは非常に優秀な娘になりました……。長女なりに、頑張ったんだと、思います」
「しかも公爵! 貴方は妻に任せっきりで育児にほとんど何もしてこなかっただと? それでも父親か! よく頑張ったんだと思うなどと言えるな! 見ていなかったくせに!」
「か、返す言葉もございません……」
カーズは鬼の形相でベーリュに怒りをぶつける。顔を真っ赤にして憤怒するカーズを初めて見るベーリュは恐怖に震えあがる。普段、感情的にならない者が怒る時が一番怖いという逸話があるが、今なら納得してしまう状況だ。
「つ、妻がこんなに極端な育児をするとは思わず……」
「黙れ、愚か者の外道が! 全てが夫人だけのせいではなかろう! 父親である公爵がしっかり見ていれば変わっていたはずだ、サエナリアもその妹も! 違うか!?」
ベーリュは言い返せない。心情的にも状況的にも。自業自得だと自分でも思っているのだ。
「はい……(反論できない)」
「くっ、彼女の家族がこんな愚か者どもだったなんて。ソノーザ公爵は父親でありながら知らないだろうから私が教えてやる! サエナリアはとても素晴らしい女性だった。家庭ではそんなことになっていたというに、学園では一言もそんなことを口にしてこなかった。理不尽を強いられ続けていたというのに、学園ではいつも清楚で礼儀正しく貴族令嬢の鏡であり続けていたんだ!」
「……さようですか(聞いていた通りだな)」
「それだけじゃない! 学園ではマリナのことでよからぬ噂が流されてしまったが、本当はマリナと友達になってくれるような優しい女性であり続け……………………。」
「?」
そこまで口にしかけて、カーズは途中で口を開けたまま語るのを止めた。サエナリアのことを語る中、自分が彼女を勘違いで罵倒したことを思い出したのだ。
「…………あ」
マリナのことを思ってのことだったとはいえ、吐き捨てるように言った言葉が頭に響く。
『二度と私の前に現れるな!』
「~~~~~~っ!」
カーズは歯を食いしばり、拳を強く握る。彼の頭の中はサエナリアに対する罪悪感と後悔の念でいっぱいだった。思い人だった男爵令嬢マリナのことは頭の片隅に追いやるほどに。
「で、殿下……」
ベーリュはたじろぐ。何故なら、目の前の王太子が見るからに怒りが爆発しているのだ。
「ふざけるな! 公爵家は一体どうなってるんだ! 姉が地味で妹が可愛かったから愛情が偏った? 美醜がどうだろうと子供というのは同じくらい愛情を注いで育てるものだろうが! それができなくて妹の方が馬鹿になったんだろうが! サエナリアはあんなに優秀になったというのに!」
「た、確かにサエナリアは非常に優秀な娘になりました……。長女なりに、頑張ったんだと、思います」
「しかも公爵! 貴方は妻に任せっきりで育児にほとんど何もしてこなかっただと? それでも父親か! よく頑張ったんだと思うなどと言えるな! 見ていなかったくせに!」
「か、返す言葉もございません……」
カーズは鬼の形相でベーリュに怒りをぶつける。顔を真っ赤にして憤怒するカーズを初めて見るベーリュは恐怖に震えあがる。普段、感情的にならない者が怒る時が一番怖いという逸話があるが、今なら納得してしまう状況だ。
「つ、妻がこんなに極端な育児をするとは思わず……」
「黙れ、愚か者の外道が! 全てが夫人だけのせいではなかろう! 父親である公爵がしっかり見ていれば変わっていたはずだ、サエナリアもその妹も! 違うか!?」
ベーリュは言い返せない。心情的にも状況的にも。自業自得だと自分でも思っているのだ。
「はい……(反論できない)」
「くっ、彼女の家族がこんな愚か者どもだったなんて。ソノーザ公爵は父親でありながら知らないだろうから私が教えてやる! サエナリアはとても素晴らしい女性だった。家庭ではそんなことになっていたというに、学園では一言もそんなことを口にしてこなかった。理不尽を強いられ続けていたというのに、学園ではいつも清楚で礼儀正しく貴族令嬢の鏡であり続けていたんだ!」
「……さようですか(聞いていた通りだな)」
「それだけじゃない! 学園ではマリナのことでよからぬ噂が流されてしまったが、本当はマリナと友達になってくれるような優しい女性であり続け……………………。」
「?」
そこまで口にしかけて、カーズは途中で口を開けたまま語るのを止めた。サエナリアのことを語る中、自分が彼女を勘違いで罵倒したことを思い出したのだ。
「…………あ」
マリナのことを思ってのことだったとはいえ、吐き捨てるように言った言葉が頭に響く。
『二度と私の前に現れるな!』
「~~~~~~っ!」
カーズは歯を食いしばり、拳を強く握る。彼の頭の中はサエナリアに対する罪悪感と後悔の念でいっぱいだった。思い人だった男爵令嬢マリナのことは頭の片隅に追いやるほどに。
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