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211.テールVSクァズ/決着

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テールとクァズが対峙する。最初に動いたのはクァズだった。

「ぎゃはははっははは! 死ねえ!」

クァズは懐からナイフを取り出して、テールに向けて突き出した。それに対してテールは武器を持つことはなかった。

「ふん……」

「なっ!?」

テールは片手でクァズのナイフを持っている方の手の手首を掴み、そのまま握り潰した。


片手で、手首を握り、潰したのだ。バキバキという音がその証拠だ。


「うぎゃああああああああああっ!?」

本来ならありえない方向に曲がるクァズの手。ナイフなど掴んでいられるはずもなく、落としてしまう。それでもクァズは狂気を目に宿したままテールに敵意を向け続ける。握られていない方の手でテールの顔面に向けて拳を振り上げようとしたのだ。

そんなクァズの拳をテールはもう片方の手で受け止めた。掴む形で。

「まだだ……」

「あっ!?」

「こんなものではない!」

テールは掴み取ったテールの拳を、そのまま握る。強く強く握る。

「ぐあああああああああああっ!?」

バキバキゴキゴキという音が聞こえるのは、クァズの拳がテールに潰されたからだ。つまり、クァズの両手はこれで使い物にならなくなったということだ。

「こ、殺して、やるうううううううううう!!」

それなのに、クァズは怒りが更に膨れ上がり、テールに向ける殺意も収まることもなかった。大の大人ですら耐え難い激痛を受けても収まらぬクァズの狂気。もっとも、テールにとっては気にすることもなかった。

「こんなものではない。俺の怒りはこんなものではないぞ、クァズ・ジューンズ!」

「ドゥあっ!?」

テールは両手で掴んでいたクァズの両手を離すと、クァズの腹に強烈な拳を喰らわした。

「俺の怒りは収まりはしない!」

「あうっ!?」

更に、間髪入れずもう一撃クァズの腹に喰らわす。

「アキエーサを苦しめ、」

「ぶぅっ!?」

今度は胸に拳を叩き込んだ。

「怖がらせた報い!」

そして、やはりもう一撃を胸に叩き込む。

「貴様が死ぬまで贖えっ!」

「るぁっ!?」

クァズの顔面にもテールの拳が放たれて、一撃でクァズの顔面が崩壊した。だが、そこで終わりではない。むしろこからが本当の始まりだった。

「だあああああああああああああああああっ!!」

「うぎゃぐあどぅあうぶぅるぁがあああああああああああああああっ!?」

テールの怒りの蹂躙の始まりだった。拳の嵐がクァズの全身に襲いかかる。バキバキゴキゴキメキメキという打撃音か骨が折れる音か分からない音がその場に響く。クァズの悲鳴とともに。

「うりゃあああああああああああああああっ!!」

「おあああああああああああああああああっ!?」

もはや顔を見ても誰か分からないくらいにクァズの顔は変形し、体格すらおかしく見え始めた頃合いで、テールは一旦殴り続けるのを止めた。ただ、これで十分と思ったわけではない。

「だあっ!」

「ほあっ……!」

クァズの体が吹っ飛んだ。挙げ句には、全身が壁にめり込んでしまった。そこまでのことになったのは、テールによって勢いよく蹴り飛ばされたからだ。

「……これでもう動くことすらできまい」

「…………」

クァズの意識はすでになかった。下手をすれば死んでいるのかもしれないし、生きていたとしても一生不自由な体になっている可能性が高い。それくらいクァズの全身は痛々しいものになっていた。

「意識がないのならばこれ以上は無意味だ。もし目覚めたのならば自分の過去を猛省するのだな。そして悟るがいい。処刑台こそが貴様のゴールなんだとな」

決着をつけたテールは踵を返し、クァズの前から立ち去った。そして、真剣な顔でアキエーサのもとに戻っていった。テールには、まだやるべきことがある。貴族として、男として、アキエーサの婚約者として。
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